見出し画像

公共の授業で使えるアクティブ課題

高校教員向けの授業実践、授業中に生徒に取り組ませる課題やワークのアイデアを紹介します。

公民科の授業では、生徒たちに何か考えさせる課題が求められる。授業前に教員は、いくつかの方法を検討する。

グループワークか、個人ワークか、ペアワークか

グループで話し合わせる課題を与えるのが、いちばん良いとは限らない。教員は自分の考えを言うことを求めるが、クラスメイトにどう思われるかを気にして、生徒は躊躇したり、警戒する。簡単に発言は活発にならない。ペアワークも同じ問題がある。
また、班で生徒が話し合うには、当たり前だが班を作らなければならない。限られた授業時間で、班分けや席移動・机レイアウトの変更を指示しなければならない。効率よく指示したり、素早く行動できるように慣らす必要がある。

40人授業でやりやすいのは、個人ワーク

最も取り組ませやすいのは、ワークシートに書かせることだ。発問を示し指名して口頭で答えさせようとすると、あてられた生徒はすぐ、「わかりません」と言う。原因は、考える時間を与えずに即答を求めているからだ。あてられた自分だけ答えなければならないというのも、不公平だ。クラス全員の前で自分の考えを言うのは、度胸や勇気がいる。紙を配って、時間を与えて全員に書かせればいい。書くだけだったら、たくさん書く生徒もいる。

発表を嫌がる生徒

机間巡視をして、しっかり書いている生徒をチェックして、指名してみる。書いたことを発表するように言うと、「まだ書けてません」と言って発表してくれないことはよくある。生徒は基本的に自分の考えを発表したくない。

方法1 先生が発表する
紙に書かせて回収し、先生がラジオ番組のように名前を伏せて紹介すれば、生徒の考えを共有できる。このとき教員は、生徒の考えを否定したり、否定的なコメントを添えてはいけない。つまり、ディスってはいけない。せっかく書いた意見をみんなの前で公開処刑すれば、次から書かなくなる。不正解として扱えば、生徒は正解を探そうとしてしまう。率直な自分の考えを書かせるために、気をつけたい。
生徒は先生に選ばれて、いい意見だとか、着眼点がいいとか、おもしろいことに気づいたとか、言われるとうれしい。選ばれたことがうれしくなるようにフォローして取りあげることが大事だ。名前は伏せられていても、書いた本人は自分の意見だとわかるので、みんなの前で褒められた気分になる。

方法2 他の生徒が発表する
先生による発表は簡単だが、やはり生徒に発表させたい。生徒は自分の考えを発表したくないけど、他の生徒の考えなら、ためらわずに発表できる。紙に自分の考えを書かせて回収し、シャッフルして全員に配る。生徒は手元に他の生徒の考えが書かれた紙が来る。教員は生徒を指名して、手元にある他の生徒の考えを発表させる。この方法なら、生徒はしっかり発表してくれる。自分の意見ではないから気が楽だ。どう思われてもいい。
発表を聞いて内容がみんなにウケたり、感心されると書いた本人はうれしいはずだ。名前は伏せて発表させればいい。もちろん発表している生徒は誰の意見であるかがわかるが、問題はない。
この方法で重要なことは、はじめに自分の考えを書かせるときに、教員が言うべき一言がある。

「誰に見られてもいいように書きなさい。」

この一言が欠かせない。他の人に読まれて、発表されてもいいように書くはずだ。発表されて困ることは書かない。この一言を言い忘れると、生徒は案外、発表されたくない自分の考えや知られたくないことを書いてくる。とりあえず思いついたから書いただけだ。吟味して書かない。
この方法を応用すれば、シャッフルして再配布した後、書かれている意見を読んでコメントを書かせることもできる。コメントを書かせるときに、名前を書かなくてもよいと指示することもできる。無責任なコメントを書く生徒もいるが、活動としては活発になる。誰に見られてもいいように書けという指示は、優れている。

グループワークをテンポよく効率的に進める方法については、別の記事で書くことにします。

方法3 自分で発表する
方法1と2で、発表に慣らしてから方法3をやってほしい。生徒は基本的に自分の考えを発表することを嫌がる。自分で発表したくない。だから工夫が必要だ。一番抵抗があるのは、前に出てきて教卓の前で一人で発表することだ。40人授業では時間の制約もあるので、前での発表はあまりしないが、前で発表させたいなら、自信を持って発表できるように、個人指導が必要だ。
自席で立って発表する。前に出て発表させるより抵抗がないように思えるが、教員は発表順や発表人数に気をつけたい。時間を与えて全員に書かせたことを一部の生徒だけに発表させるのはよくない。できれば全員に発表の機会があった方がいい。理想を言うのは簡単だけど、実際は全員の発表時間はなかなか用意できない。課題が4つあれば、10人ずつ発表させて、最終的には全員が発表する。日程を複数回に分けて発表させるなど、トータルで全員が発表するように計画すべきだ。結局、指名された一部の生徒だけが発表するのであれば、指名された生徒がアンラッキーだったということになる。

短いフレーズや短文を発表さる

自分の考えを発表させるというと、長文を書かせることや作文をイメージするが、授業時間の制約と全員に発表させる公平性を考えると、長いスピーチをさせるのは、現実的ではない。いろいろな単元があるので、いつでもできるコンパクトなワークの方が使い勝手がいい。短いフレーズの自分の考えを、順番に10人程度指名して発表させるのがお手軽だ。発表させるワークをつくるなら、短い文で答えられる発問を用意すればいい。

重複を認める

暗黙の要求かもしれないが、生徒を指名して順番に発表させると、生徒は重複する答えを避けようとする。いろいろな考えを集められて、授業展開に役立つ場合もあるが、時間を与えて自分の考えを書かせた後、発表させる場合は、内容の重複を許容する必要がある。教員は許容するつもりでも、生徒は前に発表した生徒と似たような内容だと、発表を躊躇してしまう。教員は積極的に、「書いた通り言えばいい、同じでも構わない。」と伝えなければ、重複を許容したことにはならない。同じ内容の発表が続くと、2番目の発表が1番目よりも価値が下がる印象になる。このことにも教員側の対策が必要だ。

同じではなく、共通

同じだね、と言うのではなく、共通点が見つかったと生徒に伝えてほしい。みんなに発表を求めたが、重複する内容で意味がなかった。ということではなく、みんなが発表して、共通点が見つかった、共通点があることがわかった。発表させたことで得られた成果を、教員は見つけてフィードバックしてほしい。

自分が思いつかないこと
自分では気づけないこと

生徒が発表するワークをする意義は、自身では気づけないことを見つけられる点にある。発表を聞いて、自分の考えにない要素や視点を見つけたら、メモするように促したい。ワークシートには、メモスペースも設けておけばいい。短い文でテンポよく10〜20人が発表する形式で、ある程度の解答が集められれば、気づきも多くなる。授業時間には、常に制約があるが、工夫して発表させる機会は設けるべきだ。
一人しゃべりのワンマンショーを得意げにする公民科の授業スタイルを貫く先生が、まだまだ多い。知識の優位で立場を守り、一線を画すのは先生の都合だ。教室に生徒が集い学びあう機会をプロデュースできなければ、オンライン授業や教育番組、ドキュメンタリー番組に劣る授業しかできない。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?