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ヘラクレイトスとパルメニデス

高校公民科の授業について、教員向けに記事を書いています。古代ギリシアの単元で、あまり注目されていない事項を紹介します。

古代ギリシアの自然哲学

タレスやピュタゴラスを取り上げて、すぐにソクラテスに進む前に、ヘラクレイトスとパルメニデスについて授業で取り上げてほしい。

一見すると真逆で背反する主張が、両方とも正しくなった。右に行くのが正しいか、それとも左か。最終的に結論を出すとどちらかに決まりそうだ。ヘラクレイトスとパルメニデスの場合はそうはならなかった。

ヘラクレイトスは言う。世界は変化する。
パルメニデスは言う。世界は変化しない。
2人の主張は真逆だ。対立する。

変化しないものがある。
変化しないものは1つではなく、複数ある。
変化しないものが複数あると、組み合わせができる。
組み合わせは1つではなく、複数ある。
組み合わせは変化しないものではなく、変化するものだ。
世界は変化しないものでできているが、変化しないもの同士の組み合わせはいろいろある。
変化しないものは、結合したり分離したりする。

世界は変化しないものでできている。
1つ1つは変化しない。だけど、変化しないものは、ほかの変化しないものとくっつくことがある。離れることもある。
くっついたり、離れたり、世界は変化する。

古代ギリシアの哲学者たちは、世界の始まりの 素を探していた。何か変化しない1つのものを探していた。しかし、エンペドクレスが気づいた。
もしかしたら1つじゃないかもしれない。世界を構成する素を1つではなく、4つと考えてみた。
4つなら、組み合わせがいろいろできる。世界にいろいろなものがあるのは、組み合わせがいろいろあるからだ。

やがて、デモクリトスの原子論にたどり着く。世界は原子と原子が存在する場(空間)でできている。

世界は変化するし、変化しない。
原子の組み合わせは変化するが、原子自体は変化しない。
ヘラクレイトスの言っていたことも、パルメニデスの言っていたことも、原子論の一部分になった。

哲学者の探究が整合して進化したと捉えられる。
鮮やかさを感じませんか?


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