AIは作曲家の仕事を奪うのか?
イラストのAI生成サービスが炎上しておりました。このサービスは自分の書いたキャライラストを複数アップするとその特徴をAIが分析して、その絵柄の新たなイラストを生成するというものです。
このようなサービスが現れるとイラストの仕事を奪われると反発が出てきます。
では、音楽はどうでしょう?
音楽もAI作曲サービスやAI技術を活用したアプリが数多く出ています。ですが、今の所それで仕事が減ったという空気感はありません。実際のところ、AIで作曲の仕事は奪われるでしょうか?
結論を言ってしまえば、AIで作曲家の仕事が奪われることはほとんどないと私は推測しています。
まず、コンテンツのAI生成に期待されていることはコスト削減でしょう。その点で言えば、すでにロイヤリティフリーの素材があります。ローコストでものづくりがしたい人や組織はすでにそれらを活用していますので、そもそもAI関係なしにコストがかかる作曲家には依頼しないのです。
次にクオリティ。これはプロでも千差万別ですが、AIでプロの及第点レベルの楽曲クオリティを出すのはもう少し先でしょう。だったらロイヤリティーフリーの音楽を使ったほうがマシです。
そしてここから重要なポイント「修正」です。
音楽の依頼にはどういう曲を作って欲しいという要望がたくさんあります。
請負の作曲家はクライアントの要望を汲み取り制作していくのですが、クライアントの音楽についての知識量は様々で、オクターブの意味を理解していない人から、音大卒で私より腕のいい人も居ます。そんなクライアントの伝えたいことを推測・翻訳しながら考えて作ります。
一発OKということはまずないです。ラフをクライアントに聴いていただいて、そこから修正を加えていきます。
この「修正」がAIにとって一番難しいことだと思います。現状のAIでの生成は参考データを入力して、あとは完成品が出力されるだけです。中の工程はどうなっているかは外の人間にはわかりません。
ちなみに、修正で希望でクライアントから言われるワードは「メロを1.5db上げて」みたいな細かな指示から「サビもっとバーンと盛り上げて!」みたいな抽象的なものまでさまざまです。
この「サビバーン」を果たして人間はAIにうまく伝えられるでしょうか?
そしてもうひとつの重要な点「統一感」です。
ゲームやアニメではたくさんの曲を作りますが、ひとつの作品の中でたくさんの曲が違和感なく聴けるのは、専門のスタッフがうまく調整しているからです。
ゲームの曲の依頼で、曲ごとにイメージに近い参考となる曲を複数いただくことがあります。あくまでクライアントのイメージなので、時代もジャンルもテンポも拍子もバラバラです。その参考曲からクライアントが欲しているエッセンスを読み取り、作曲家は制作していくのです。ゲームの場合大体は数曲から数十曲と数がありますから、参考曲の質感がバラバラであっても作る楽曲群は全体のイメージとして統一感を保つ必要があります。
1曲作るだけならイメージに沿う曲がAIにもできるかもしれません。しかし、作品としての統一感を考えた複数の作曲は現状AIには無理でしょう。
というわけで、しばらくの間作曲家はAIに仕事を奪われるということは無いでしょう。私が作曲家なので音楽中心に書きましたが、イラストレーターもだいたい同じようなものだと推測します。
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