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「思い入れ」は創作にとって枷になる

マンガ『SPY×FAMILY』の作者が「キャラへの思い入れ0」とインタビュー記事で話したことが話題となっています。

ファンにとってはそれが好きなキャラクターをないがしろにされたような気分になるかもしれません。しかしながら、創作するものとして言わせていただければ自分の作品やキャラに強い思い入れは持たないほうがいいです。特にそれがプロ、またはプロ志望ならなおさらです。

アマチュアの方で上達の遅い方の特徴に「作品への思い入れが強すぎる」というのがあります。
このタイプの人は「この作品は最高」「このキャラ最高」という思いが強すぎて客観的に作品を見ることができません。そのため、大したこと無いアイディアに固執したりひとりよがりな作品になるだけでなく、完成させるまでの時間も異常にかかったり、または永遠に完成しないということになったりします。

アマチュアであれば別に完成しなくたって問題ないのです。その制作過程自体が楽しみなのですから、思い入れの強いキャラたちを永遠に描き続けて最高の時間を過ごすのは、趣味として至福の時間でしょう。

しかしプロ、プロ志望ならばそうはいきません。その作品を楽しむのは自分ではなくお客です。お客が楽しめる作品を作らなくてはなりません。
しかし、お客が楽しめる作品を作るというのはとても難しいです。ましては、自分は全く面白いと思わないけど、こういう作品ならお客に受けるだろうと思って作れる人は天才としか言いようがありません。
少なくとも私にはそういう作り方は無理です。私の場合ですと、まずは私自身の中にあるデータベースからこういう感じの曲が良いなと思いついたらそれをどういうシチュエーションで、どういうイメージでお客に伝わるかを想定しながらカスタマイズしていきます。大抵の作家はそんな感じじゃないかと思います。

自分の好みじゃない作品を作ってヒットを出す。また逆に、強い思い入れをもって作った作品がヒットする。この2つはそれぞれ別のタイプの天才なのです。

ひとつ注意しておきたいのが「思い入れがない」というのは「こだわりがない」「適当に作っている」という意味ではないということです。良い作品にするべく努力する「こだわり」は持ってて当然です。

「思い入れ」と「こだわり」は近いもので、作品を面白くしようとする「こだわり」も度が過ぎると「思い入れ」となりだんだん何が面白いのかわからなくなってきます。

思い入れを持たないようにする一番の方法は、たくさん作ることです。作っている最中はどうしても思い入れはあります。「これは今までで一番の最高傑作だ!」なんて想うわけです。
でも、それが完成したあとはすぐに次の作品を作ることをおすすめします。そうすると前作の最高傑作と思った作品は「案外そうでもなかったな笑」となることがほとんどです。
それは、ひとつの作品を完成させるとレベルが上がっているので当然のことなのです。そうやって過去作品への過剰な思い入れを手放すことが出来ます。

数を作らない人は、その最高傑作を作ったあとに時間が空けば空くほど、最高傑作が自分の中で神格化され次を作ることができなくなります。

なので、もし「自分の作品にあんまり思い入れがないのは才能が無いのかな?」なんて思ってる人いたら、それは逆です。どんどん作ってレベルを上げていきましょう。

そんな感じで、作った当時は「それほどでもないかなぁ」と思ってた作品が10年後ぐらいに見返すと「結構いい作品じゃないか」と思えるようになったらそれはとても良い形での「思い入れ」であり一番理想です。

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