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王さまのお誕生日

去る4月27日はキングス・デー(koningsdag)、オランダの国王の誕生日でした。この日は国民の休日となっていて、国はお祭り騒ぎ。家々にはオランダ国旗が掲げられ、街はオランダのナショナル・カラーのオレンジのものを身に着けた人たちで溢れます。

オランダの政治・文化は世俗的でリベラル・先進的な国という印象があります。なのに、旧来的な権威の象徴である国王の誕生日は国民全体でお祝いするという、ふしぎなギャップ。まあ、心から国王の生誕を祝っている人はほんの一握りで、ほとんどの人がお祭りを楽しむことに夢中になっているような気もします。

さて、今年のキングス・デーはわたしにとって初めての経験でした。コロナ禍で一昨年、昨年と中止になっていたのです。去年は天気がよかったので、1.5mの距離を保ちながら公園でピクニックをしたのを覚えています。それもそれで楽しかったな。

キングス・デーのお祭りは当日の前の晩から始まります。キングス・ナイトといって、前夜祭みたいな感じです。26日のお昼過ぎから、街はお祭りの準備を始める人々でだんだん活気づいてきます。この2日間は、誰でも営業許可なしに蚤の市を開いてよいのです。要らなくなったものや、料理、お酒まで、大体なんでも売ってオッケー。数日前から場所取りのためにテープを貼ったり張り紙をしたり、なんて光景が見られます。

六時ごろには、ユトレヒトの中心エリアではそこらに露店が出され、街はたくさんの人で賑わっていました。売っているものは、子どものおもちゃ、洋服、キッチン雑貨、電子機器から、音楽の演奏、フェイスペイントまでさまざま。子どもがお店を開いてお小づかいを稼ぐというのも、この日ならではの光景。

わたしも、素敵な夏用のブラウスとオランダ語のエッセイ本を買いました。お店の人との会話も楽しくて(ほんとに、すぐそこの家に住んでいる人たち)、すっかりお祭り気分なわたしがいました。

キングス・ナイトの夜は、お祭りの最高潮。待ちの中心は飲み歩いてパーティする人たちであふれかえる、らしいです。らしい、というのも、私は目撃しておらず、早々とお家に帰ってしまったので。でも、翌日の道の散らかり具合からして、かなりフィーバーしたみたいです。ガラス瓶、缶、たばこ、お菓子の袋などがそこらに散乱していました。

キングス・デー当日も、もちろん街は賑わっていました。街の中心に住む友だちが、家の前でタコスを売るというので食べに行きました。メキシコ人監修のタコスは、本格的でとってもおいしかった!ちなみに、タコスとビールは飛ぶように売れて、友だちは半日でかなり稼いだそうです。いい商売だぜ。タコスを食べたあとは、しばらく露店を見て回って、芝生でちょっぴりピクニックをして、早々と家路に着きました。お祭りは夜の23時まで続くそうですが、わたしは体力がもたんかったです。

このお祭のおもしろいところは、すべてがアンダー・コントロールでありつつも、カオティックな非日常を楽しめるところです。管理下にあるというのは、警察がそこらにいて交通整備や監視をしたり、臨時トイレや掃除員は用意したりしているということ。カオティックというのは、自由な蚤の市、飲み歩きや(ポイ捨て)は容認されていて、人々が入り乱れてお祭り騒ぎしているところ。この二つがうまい具合に共存しているのは、興味深いなあ。

リベラルだけど愛国的。組織的だけどカオティック。知れば知るほど、オランダ、ふしぎな国。

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