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Day 15. 正義も悪もない、ただの事実

今日は気候変動(climate change)の勉強をした。ふだん物知り顔をしているトピックについて学び直すと、多くの発見が得られるものだ。

そもそも「気候」とはなんだろうか。「天気」との違いは?ずばり、こんな定義だそうだ。

天気:短期的な気象状態。今日の天気予報、みたいな。
気候:長期間にわたる気象パターン。1年〜数十年スパンのものを言う。

最近日本の夏は暑い。今年は最高気温記録更新の暑さ!とか言ってるけど、残念ながらあれは天気レベルの話ではなくて、気候レベルの話なのである。

エセ科学だったらいいのにな〜

最近騒がれている気候変動問題っていうのは嘘っぱちだという人が、まだそこそこの数いる。しかもそういう人はけっこう声が大きい。人間は楽な方に流れていく生き物なので、なんかそれらしく言われるとそう信じたくなる。ね、嘘だったらいいのにね。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)や世界の主要な科学機関は、25年以上にわたり何万件もの調査研究を検討してきた。3つの主な結論はこうだ。

(1) 気候変動は現実であり、現在起こっている
(2) 気候変動は主に化石燃料の燃焼や森林の伐採などの人間活動によって引き起こされている
(3) 気候変動は加速し、海の上昇、海洋の酸性化、種の絶滅、さらには今世紀後半には特に猛烈で長引く熱波を含む異常気象などの有害な影響をもたらすと予測されている

まったくシビアな話である。ただ、これが科学の「限りなく真実らしい」セオリーであることは、前提として理解しておいた方がいいんじゃないかな。気候変動は信じる信じないの次元というより、この事実をもとにどう生きるかを考えた方がよっぽど現実的な話だと思うし、今やそうせざるを得ない状況になってきている。

そもそも温室効果ってなに?

温室効果(green house effect)は、地球の平均気温、ひいては気候を決定する上で重要な役割を果たしている自然現象だ。 温室効果は、地球が吸収した太陽エネルギーの一部が赤外線放射(熱)として大気中に放射されることで発生する。この放射が大気中のいくつかの温室効果ガスの分子と相互作用して運動エネルギーを増加させ、下層大気と地表を暖める。「温室効果ガスの分子」って言われるとよくわからないけど、つまりは二酸化炭素とかメタンガスのことだ。

ちなみに水蒸(H2O)も、主要な温室効果ガスの一つだ。水蒸気くんは、二酸化炭素ちゃんとタッグを組むとたちが悪い。というのも、二酸化炭素によって大気が温められると、大気は水蒸気をより多く保持できるようになって、より温室効果が増幅されてしまうからだ。ただ、水蒸気は人為的活動によってというより自然のサイクルで生まれるものなので、コントロールすべきは二酸化炭素とかの方になる。

じわじわ、からの急展開

気候変動には転換点(tipping point)という概念がある。この図がわかりやすい。

(出典: "Living in the Environment")

つまり、ある点を超えると急激に事態が悪化するという考え方だ。転換点になりうる事項はこんなラインナップだ。

■ 大気中の炭素量が450ppmを超える
■ 北極の夏の全ての海氷が溶ける
■ グリーンランド氷床が壊れる / 溶ける
■ 海洋の酸性化、植物プランクトンの個体数の崩壊、海洋のCO2吸収能力の急激な低下
■ 北極の永久凍土の融解と北極の海底からのメタン大量放出
■ 西南極の大部分の氷床の壊れる / 溶ける
■ アマゾンの熱帯雨林の急激な縮小・崩壊

ちなみに各項目、すべて黄色信号がともっている。
温暖化とか環境問題とかいうものなんてさ、60年くらい前から問題にになってたよ。そりゃあ深刻化してるわ!って、まったく胸張って言えることじゃないけど。
わたしがデリケートな子どもだったら、このリストが怖くて夜眠れていないだろう。グレタさんの心境って、そういうものだと思うんだよね。

メタンガスの時限爆弾

メタンガス(CH4)は二酸化炭素の25倍の温室効果がある。25倍って、なかなかにすさまじい。メタンガスは米の栽培や家畜の飼育時に発生している。牛のげっぷからメタンガスが出るというと笑われたりするけど、農業におけるメタンガスの排出が世界の温室効果ガスの約8%を占めているという事実がある。牛肉はじめ家畜の環境負荷は本当に大きい。

さて、このメタンガスが爆発的に増加してしまうかもしれないという誰も聞きたくない話がある。これは「永久凍土(permafrost)」が鍵を握っている。永久凍土とは、その名の通りずっと凍っている土のことだ。北半球のアラスカ、カナダ、シベリアなどで、露出した土地の約25%の下にある土壌に存在している。 永久凍土の下には大量の有機物、すなわちたくさんのメタンと二酸化炭素予備軍が埋まっている。

現在進行中の気候変動は、この永久凍土をかなりの量融解させると予測されていて、すでにアラスカとシベリアの一部で溶け始めているという。って、永久に凍ってるんじゃないんかい。きっと永久凍土自身もびっくりしているだろう。
空気があったまって凍土が溶けると、その下にある大量の有機物が腐敗しメタンガスとCO2が発生してしまう。その量は500億トンと言われている。億トンてなんやねん。気が遠くなる。

(出典: "Living in the Environment")

ドラえもん、あれ出して、 CO2吸ってくれるやつ!

地球工学(geoengineering)は、人工的に地球を冷却したり二酸化炭素を大気から除去したりして、地球温暖化対策を目指す学問領域だ。大気があったまっているなら、太陽光を跳ね返せばいい!二酸化炭素が出ちゃうなら、吸えばいい!という理論である。なんか怪しい香りがするが、じっさいのところ、現実レベルに落とし込むのに難儀している発展途上の工学である。

地球工学についてお兄さんがわかりやすく説明してくれるこの動画では、さらっとこんなことを言っている。

「地球工学がどのように効果的であるかはまだわかっていない。ただ、気候変動と戦うための方向性はいくつか出ている。気候変動による生態系および経済的なインパクトを減らす最も確実な方法は、温室効果ガスの排出量を減らすことです。」

ヘイ、けっきょく温室効果ガスを減らそうって話かい。
みんな薄々気づいている通り、現実世界にドラえもんはいないようだ。

気候変動対策は人権を守るため

今年の初め、ある訴訟が話題になった。

オランダの最高裁判所が政府に対して温室効果ガスの排出量を1990年比で25%削減するよう命じる判決を下したというものだ。
政府が十分な気候変動対策を講じないことで「国民の人権を危険にさらしている」という主張が判決で受け入れられ、国の政府に対して気候変動に対する即時行動を求める厳しい判決として注目された。この判決が模範となり世界に広がっていく、というのは楽観的な考えだろうか。

最近カミュの『ペスト』を読んだ。そして思うのは、パンデミックの前から、わたしたちは「ペスト」と生きているということだ。
「ペスト」には気候変動問題、人権問題、ないしは個人の葛藤を当てはめても良い。ペストと一緒に生きていくことは、正義とか悪とか、ドラマティックな何かを要求するわけではない。一方で、先の見えない陰鬱な雲に覆われることをただ許すことでもない。

大事なのは自分の本分を粛々と、でも着実にこなしていくこと。課題に取り組んでいくには、本質的には大きなストーリーもかっこいい筋書きもいらない。そういう地味なことが、果たしてもっとも難しいものだ。




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