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藤井風『帰ろう』MVの赤い風船に想いを寄せて

藤井風さんのファーストアルバム「Help Ever Hurt Never」に収録されている重要曲『帰ろう』のミュージックビデオが9月4日23:00に公開された。
監督は日本を代表する映像アーティストの児玉裕一監督。

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4月、アルバムを発表する直前のライブ配信によるリスニングパーティーで、風さんはこの曲についてこう語っていた。

この曲を発表するまでは死ねない。
死ぬためにどう生きるか、人生の帰り道に重ね合わせ自問自答した楽曲。

日本語の歌詞で楽曲を作るきっかけとなった、とても大切な曲とのことだった。

風さんの存在を知って以降、何度この曲を聴いたかわからない。メロディーの美しさもさることながら、歌詞が描いている世界感にただただ震えた。

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8月14日、この曲のミュージックビデオを9月4日に公開するとの発表があり、ティーザー第1弾がリリースされ、さらに公開週の月曜日8月31日には、ティーザー第2弾も公開。

どちらも、ミックストラックの中から弦楽器のトラックだけを使ってバックに流している。それだけでもこんなに美しかったのかと改めて気がつかされた。いろんな人の人生を描くのかな、風さんが運んでいるのは何だろう、岡山ナンバーの車、5時を刺す時計。。 いろんなエッセンスが見え隠れして、否が応でも期待に胸が膨らむけど、真っさらな気持ちで受け止めた方がいいだろうな、と逸る気持ちをなだめて過ごした1週間。

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そして迎えた9月4日。10分前に予定通り行われた風さんによるライブ配信で、児玉監督とこの曲についてものすごく深いところまで語り合ってこの作品が完成したと伝えてくれた。そして。。。

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一番最初に観たとき、言語化できない何かが胸に迫った。でもその正体が分からなかった。突き止めたいと思った。
公開されてから2日経つけど、何度も何度も見返してる。

この美しい映像が伝えようとしてくれているものの解釈は、個人個人に委ねられているし、どれが正解でも不正解でもない。それを踏まえて、これから私が書くことは、あくまでも今の私が受け取った、このミュージックビデオからのメッセージです。

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いろんな人が、人生という一本道を歩いている。恋人同士で手を繋ぐ人。仲のよさそうなご夫婦。ずっと仕事の電話を手放せない人。大きな荷物を抱えた人。怪我をしている人。ちょっと曰くありげな風貌の人。そして、赤い風船を持った子どもとその子と手を繋いで歩く女子高生。このビデオの中の風さんは、そんなみんなの側にいて、一緒にいろんな荷物を持ちながら見守っている、天使とか守護霊といったスピリチュアルな存在のように感じた。

道に書かれた矢印を通過すると、風さんが抱えていた荷物が全部落とされてる。みんなの物欲からの離脱。きっとあそこから先は死を迎えたあとの世界。でもそれ以外は変わらない。みんな同じように歩いている。繋がっているものを断ち切ることはしない。持っているものはそのまま持っていく。私たちはこのままでいい。風さんもそのまま付かず離れず見守る。

先を行く白い車から老人が降りてきて、何とも満足げな表情で風さんに挨拶するように帽子を掲げる。手をあげて微笑みながらそれに応える風さん。老人はそのまま一人で車で行ってしまう。一人で。

ふと、子どもが手に持っていた赤い風船を離す。これは持っていない方がいいのかな とでも感じたように。

その瞬間、たくさんの赤い風船が湧き上がり、空に吸い込まれていく。するとみんなの表情が満たされたものに変わる。繋いでいた手を離し、持っていた荷物や寄りかかっていた松葉杖を手放す。みんな一人で歩いていく。何も持たない。一人で。

それを微笑んで見送る風さん。もう風さんが一緒にいなくても大丈夫だから。

あのたくさんの赤い風船がみんなの中から解き放たれた時、あそこにいる人たちは、自分自身が自分自身でいるだけで満たされていることに気づけた。手を繋いでいなくても、荷物を持っていないくても、自分のままで十分幸せなんだということに。恐らく悟りの域に達して、生まれる前にいた場所へ帰っていったんだ。

その後、さっきの子どもの手に、赤い風船につながっている紐をまた渡してあげる手が。あれはきっと風さんの手。これから生きていく君はまだ手放す必要はない。それも神様からの贈り物、持っていていいんだよというメッセージがそこにすごく感じられた。

そして一番最後、一人佇む女子高生。

「ああこれからどう生きていこう」

あの楽曲の最後の歌詞を体現している存在なのかな。表情が先ほどの人たちとは違う。きっと自問自答している。

でもそれでいいんだと思う。そこから先、自分がどう生きていくかは本当にその人次第。いろんなことに喜び、笑い、悲しみ、苦しみ、自分の生きる目標を見つけたり、周りの人と関係を育んだり、時に絶望したり、誰かを羨んだり、何かに感動したり、、、。この世に生を受けている間、私たちはいろんなことを経験することを許されていて、ただ、誰にでも最後に訪れる死を迎えた時、結局何も持っていなくても満たされて旅立つのだから、今、この生きている時間を、より心が豊かになれるように、周りに優しさを与えられるように、そんな風に生きていけたら。。。

とにかく観れば観るほど心が暖かくなって、少し経つとまた見返してる自分になっている。生きていくことに対してこんなにもポジティブに寄り添ってくれている曲だったんだなと改めて感じられて、この作品を届けてくれた全ての人にありがとうを言いたいです。

この歌の持つ世界観を、こんなにも自然に美しくビジュアライズした児玉監督、本当に素晴らしいの一言です。ありがとうございました。

そして先ほど、藤井風さんによる恒例の曲解説Vlogが公開された。

「この曲が日本語の歌詞で降りて来た時、…」

という字幕の部分を英語では、

When God gave me this song with Japanese lyrics,....

と言っていた。何という謙虚な表現。。。

風さん、神様は誰にでもこういう曲を降ろしてはくれないと思うよ。
風さんだから、風さんを選んで、この曲を私たちに聞かせようとしてくれたんだと思うのです。

風さん、この曲を作ってくれて本当にありがとうございます。
いつか全てを手放して旅立つ日まで、私も折に触れて立ち止まりながら、考えながら、もがきながら、与えられる人になれるよう、大切に生きていこうと思います。

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