御堂筋とイルミネーションと横顔

御堂筋イルミネーションが見たい、と最後のワガママを言った。昨年は見れなかったけど、一昨年も、その前の年も一緒に見た、あのキラキラ光る思いの詰まった御堂筋を。
大阪難波駅の長いエスカレーターを上がって地上に出て、紫色に染まった御堂筋をふたりで眺めた。「向こうに行ったら心斎橋だね」「せっかくだから歩こうか」手を繋いで、ゆっくりと歩き出す。時々写真を撮ってみるけれど、スマートフォンのレンズを通して見る世界は、裸眼とは全然違って見える。やっぱり写真家は偉大だ、と感心する。スマートフォンに収められた写真よりも生で見る景色の方が何倍も綺麗で、しっかりと心に焼き付けておく。
心斎橋は、さくら色。大丸はこの大通り側から見ると結構ちゃんとした建物なんだ、と改めてまじまじと見たからこその新たな発見をふたりでする。新しくできたパルコを眺めながら、数年だけでもこんなに街が変わるんだね、なんて言ってみたりもする。「心斎橋についたけど、どうする?」「もう少し歩いたら本町だから、そこまで行こうか」また、ふたりで歩き出す。リモワの店舗を見つけ、スーツケースを一緒に眺めた日を思い出す。あの時は、一緒にまた旅行できることを疑っていなかった。そんなことを考えたら、繋いでいる温かい左手にぎゅっと力が入ってしまった。どうしたの、とでも言いたげな顔に、なんでもないよ、とおどけて笑い、繋いだままの手を子どものようにぶんぶんと振ってみた。歩こう、歩こう、わたしは、元気。
本町に近づくにつれ、イルミネーションが青色に変わっていく。この幸せな散歩は、もう次の駅でおしまいだと、わかっていた。ふたりで歩く道はもうすぐ終わりがくると、繋いだ手が離れる日は遠くないと、心のどこかで気づいていた。この御堂筋が、ふたりで歩くキラキラと光る道が、永遠に続いたらいいのに。そう思いながら、イルミネーションに照らされた大好きな横顔を見上げたこと、きっと一生忘れない。

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