PSO2の自キャラが出てくるほのぼの日常系SS2-「九十九堂冷泉分胤の到来」
このSSはファンタシースターオンライン2×ニンジャスレイヤー×シノビガミです。それぞれSEGA様,ダイハードテイルズ様、冒険企画局様が権利を持っています。
俺は九十九堂冷泉分胤(ツクモドウ/レイセン/フェンタネ)。ツクモドウと呼んでほしい。斜歯忍軍(ハスバニングン)に所属する中忍だ。つまり体の一部を機械化している。よろしくな。
ある日、上司からのふざけた任務をこなし、帰宅し、飯を食ったりゲームしたりして寝たことまでは覚えている。だが、目が覚めると。
「ここは……どこだ……?」
なにやら金属質な部屋であった。
天井はバカでかい一枚の輝く金属でできており、スピーカーがぶら下がっている。壁も白く、時折光の筋が流れる。窓からは星空が見える。夜だろうか。床はカーペットが敷かれており、ベッドの前にはガラスのテーブル。テーブルの上にはブロックミールと紙パックの飲料が置かれている。
遅れて脳内端末が起動する。すぐさま「エラーだよ。本部との通信ができません(x_x)」というメッセージが渡された。
「弱ったな……」ネットワークが遮断されている。少なくともハスバの施設でないことはわかった。色々可能性を考えてみる。他の流派は……関係なさそうだ。鞍馬、ハグレモノ、オニの連中はそもそもこんな上質な部屋に住まない。オトギやヒラサカならあり得なくはないが、前者ならば戯れと称してこの部屋をトラップルームにしているはずだし、後者ならば捕虜にそこそこ整った料理を出すはずだ(実際俺はヒラサカ施設での拷問で片目を失ったので、確実だ)。
では誰が。完全に部外者だとすると、六大流派に干渉する命知らずだということにほかならない。
考えていると、腹の虫が鳴る。「チュウイ。エネルギー残存40%(-x-)」と脳内端末も知らせてくれていることだし、ひとまず食事を取ることにするか……。
◆◆◆◆
端的に言うと、食事一つとっても相当手が込んでいた。大体のブロックミールの栄養素は炭水化物に偏重しているが、置いてあったものを右腕の簡易検査機にかけたところ、恐らくこれと水さえあれば人は生きていけるような、最適な栄養バランスという結果が出た。「ディメイト」と書かれた紙パック飲料も同様に検査機にかけたが、これはエナジードリンクに近かった。
さて、食事は取れた。では次に何をすれば良いだろうか。相手が情報を目的としていれば、拷問吏が程なくやってくるだろう。
ならば、窓から逃げるべきか。窓の正面に立ち、腰を落として正拳突きの構えを取る。しかし、すぐに諦めた。なぜなら「ケイコク! ケイコク! 走査光の反射から、窓の奥は真空と推定(!-!)」と、脳内端末が告げたからだ。つまり、外は宇宙だ。
途方に暮れていると、背後の壁が急にスライドし、奥から人が現れた。
彼は俺を見るなり、足を肩幅に広げ、手を合わせて挨拶した。「ドーモ、ツクモドウ=サン。ニンジャスレイヤーです」
「ええと……? ど、どうも。ニンジャスレイヤーさん? ツクモドウです」「イヤーッ!」
返答直後。風圧。飲み干した飲料パックがことりと倒れる。
一瞬遅れて状況を認識する。ニンジャスレイヤーを名乗る赤黒の忍者のチョップが、俺の首の1センチ手前で静止していた。
「……俺は、歓迎されていないみたいだね?」「……いや、すまぬ。手違いだ。私はニンジャを殺す者で、オヌシのことをニンジャだと思っていたが、どうもオヌシにニンジャソウルの反応がない。故に状況判断した」彼は構えを解いた。
「もしオヌシがリアルニンジャであったとしても、市民を虐げるタイプでもなかろう」「それはどうも」ニンジャソウルってなんだ。そもそもニンジャスレイヤー本人が忍者装束を着ているが、それでいいのか。聞きたいことは山ほどあったが、目下一番の疑問を聞くことにした。
「それで、ここはどこなのか教えてもらってもいいか?」
「……ここは、星間文明オラクルの戦闘部隊『アークス』の第四留置室だ」
ついてくるが良い。彼はそう言って、留置室から俺を連れ出した。
◆◆◆◆
道中の会話での彼の言う話は荒唐無稽であったが、歩きながら脳内端末に集積したデータと照合するに、恐らく真実だろうという結論に達した。
オラクルはいくつもの地球と繋がっており、俺やニンジャスレイヤーさんはそれぞれ別の地球から到来したとのことである。もっとも、あちらは本人ではなく、「幻創種」というフィクションの具現化のような存在らしいが。俺の世界の話をしたところ、「なんと、オヌシの地球にはリアルニンジャを養成するメガコーポが複数社あるのか!」と驚いていた。こちらの地球では忍者は職業だが、あちらの世界でニンジャといえば種族のことらしい。会話は弾んだ。なんとなく【友情】の感情を抱いた。
目的地――049番ラボの手前で、彼とは別れた。10秒ほど待っていると、ドアはひとりでに開いた。消毒霧の間を抜けた向こうには、ロングノーズマスクを付けた研究者が居た。彼女は「スキップ博士」と名乗った。生憎助手は出かけていてね、と、闇を煮詰めたようなビーカーコーヒーを渡してくれた。
彼女はさっそく本題を切り出す。
「同行者から話は聞いていると思うが、君はどうにかしてこのバースに迷い込んできた」
一拍置く。
「まあ、例がないわけじゃない。頑張れば元の世界に戻れる。頑張るのは君じゃなくてバースの研究者だがね。いずれにせよ、暫く掛かる。君の世界の住人が強力なビーコンを立てていれば数ヶ月、そうでなければ最低でも一年は覚悟しておくことだ」
「年単位か……。それまで、ここで何かできることはあるか? 何もしないのも心苦しい」
「ウチ(アークス)としてはデータさえ取れるなら言うことはないが……。そうだね、暇ならフォトン適合手術を受けて、それから惑星調査でもするのはどうだい?」
惑星調査。未来感あふれる響きである。
「……面白そうだ。乗らせていただくよ」
「好奇心の強い男は好きだよ。じゃあ、シップ内の探検でもしていてくれ。手術までの一週間、君を退屈させることはないはずさ」
こうして、九十九堂冷泉分胤はオラクルに到来した。
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