見出し画像

大手メディア企業の生成AI活用事例

(最終更新: 2023年10月7日)
生成AIは、既に半数近くのメディアが何かしらの形で業務に取り入れています。まだ活用していないメディアでも、54%は今後導入を進めていくと回答しており、様々なユースケースが誕生することが予想されます。

Digiday

本記事では、国内外のデジタルメディアによる生成AIの活用事例を纏めています。

活用方法の分類と、本記事で取り上げるメディア

メディア企業における生成AI活用の方法は様々ですが、ここでは4つの分類に基づいて事例を紹介していきます。

Liquid Studio

縦軸は、メディアが扱うコンテンツの種類です。文章を中心とした「テキスト系コンテンツ」と、音声や動画などマルチメディアで構成される「非テキスト系コンテンツ」で分けています。横軸は、生成AIがもたらすメリットの種類です。大きく分けると、既存業務の一部を生成AIが代替する「業務効率化」と、これまで実現できなかった新しい体験を生成AIで創出する「新体験創出」で分けています。

このように整理すると、現時点で最も導入事例が多いのは左上の「テキスト系コンテンツの業務効率化」となっています。次に、左下の「非テキスト系コンテンツの業務効率化」と右上の「テキスト系コンテンツの新体験創出」がきます。事例としてほとんど出てきていないのは、右下の「非テキスト系コンテンツの新体験創出」です。

本記事では、この分類に基づいて国内外のメディア企業が実践している生成AIの活用事例を紹介していきます。



テキスト x 効率化

Buzzfeed

Image: Buzzfeed

Buzzfeedは生成AIの導入にかなり前向きで、他社に先駆けて様々な実験を行っています。2022年12月に、CEOや編集担当の副社長、創業編集者、技術部門の代表などを含む12名のタスクフォースを結成し、AI活用のダイレクションを行っています(Digiday)。2023年3月には、AI生成コンテンツを「研究開発段階から当社のコアビジネスに」移行させる予定と発表しました(Digiday)。

実際に、旅行先の観光スポットを紹介する旅行記事の制作にもAIを活用し、44本の記事をパブリッシュしています。これらの記事は、AIがたたき台を作成し人間が編集作業を行っています。注目すべきは、編集スタッフではなく営業などビジネス系のスタッフがクレジットされているされている点です。同社は、これを「編集の専門家でなくても良い記事が生み出せるのか」を検証する実験と位置づけています。具体的には、編集部以外のスタッフに「過小評価されているお気に入りの旅行先について何を書けばいいか」という社内アンケートを送り、その回答を同社のAIソフトウェアに入力して得た結果を公開したそうです(The Verge)。このAI生成記事のパフォーマンスは不明ですが、Buzzfeedは決算報告会で「コンテンツ管理システムとAIツールの統合により、より多くの記者がこのツールにアクセスしてAI生成コンテンツを生成できるようになった」と説明しています(Digiday)。

Image: Buzzfeed

CNET

CNET

CNETは、生成AIを一番最初に記事制作に活用しパブリッシュしたメディアです。2022年11月には、CNET Moneyの編集チームが「複利とは何か」「銀行口座無しで小切手を現金化する方法」などの基礎的なトピックについて、社内の独自AIを使用した記事を77本公開しました。
ワークフローとしては、編集者がまずストーリーのアウトラインを作成し、その後AIが作成した原稿をチェックしました。
結果、複利計算の間違いや社名の不備、曖昧すぎる表現など基礎的な誤りが発見され、最終的に通常通り人間の編集者が注釈・訂正した後に公開されました。また、他社コンテンツの予期せぬ盗用問題も発生しました。これを防ぐために、CNETはAIツールが使用したコンテンツが他社の著作物を盗用していないかチェックする方法を追加開発中しています。
また、AIを使って制作・編集された記事には必ず「CNET Money」というクレジットをいれることで、読者にAIの存在を伝えるということもガイドラインに定めました。
23年1月時点で、CNETはAIツールの使用を一時停止しています(CNET)。

The Arena Group

The Arena Group

スポーツに特化したメディア企業であるThe Arena Groupは、コンテンツ生成AIツール企業であるJasperと、デジタルコンテンツのパブリッシュプロセスを効率化するSaaSを提供するNotaの2社と提携し、AIを積極的にワークフローへ取り入れています。
例えば、AIを活用することでトレンドのトピックと関連するアーカイブコンテンツを迅速に特定し、記事を効率的に作成しました。ワークフローの効率を通常の10倍以上に高めながら、AIを使用して制作された記事は強力なオーディエンスエンゲージメント(ページビューやリファラル数、シェア数など)と収益パフォーマンスを示しました(The Arena Group)。

ところが、同社にも、AIが自動生成した記事を人間が事実確認や編集をする体制が必要なようです。フィットネスに関する社内の独自コンテンツを学習させたカスタムチャットボットを使用して、フィットネスブランドから関連する写真をキュレーションしたりテキストを自動生成・編集した記事を、MensJournal.comのメンズフィットネスセクションで公開しました。その一つが「What All Men Should Know About Low Testosterone」という記事ですが、これには少なくても18の不正確な情報と虚偽が発見されています(Daily Beast)。

Mensjournal.com

23年3月に実施された決算説明会では、AI導入の成果が報告されています(The Arena Group)。

  • AIによるトレンドトピックの特定やアーカイブコンテンツのキュレーションにより、パイロットプロジェクトにおける記事の制作時間が80-90%削減された。

  • RPAツールを提供するJiffy.aiを広告オペレーションのワークフローに導入したことで、正確性と効率性が2倍以上になった

Ingenio

Astrology.com

Ingenioは、星占いなどスピリチュアル系のメディアであるAstrology.comなどを傘下に抱える企業です。Ingenioは2021年末から生成AI技術をコンテンツ制作に活用し始め、GPT-3をCMSに統合しています。生成AIを使用することで、Astrology.comでは約1000本の記事を、SunSigns.comでは有名人の出生図とホロスコープに関する記事を約1万本公開してきました。編集者が見出しの修正やファクトチェックなどはしているものの、SunSigns.comで公開した記事の90%はAIが生成しているそうです。品質をキープしたまま制作効率をあげることに成功しており、従来1本の記事の作成にかかっていたとの同じコストで1000本の記事を作成できているとのこと(Digiday)。

Boring Report

Boring Report

「生成AIが作成した文章は平坦で退屈なので、実際にパブリッシュする前に人間による校正が必須」という考え方はかなり一般的になってきました。しかし、今年の3月に誕生したキュレーションメディアであるBoring Reportはその真逆のアプローチをとっています。
広告ビジネスに支えられている現在のメディアは、記事へのクリック数を稼ぐために度々センセーショナルで誇大なタイトルをつけることがあります。これが理由でメディアが批判されることも多いですが、Boring Reportは生成AIを使用することで、意図的に「記事の内容に即した」タイトルを作成しています。例えば、オリジナルでは「エイリアンの侵略が迫っている」というタイトルになっている記事を、Boring Report上では「地球外生命体の可能性と地球への影響の可能性を専門家が議論」に変更しています(Yahoo)。

Instagramの共同創業者が立ち上げたArtifactというキュレーションメディアも同様の方法で生成AIを活用しています。現在は、ユーザーが誇大なタイトルとしてマーキングした記事のタイトルを生成AIで修正していますが、将来的にはAIが検知から修正まで自動で対応する計画もあるそうです(The Verge)。

The Messenger

The Messenger

The Messengerは、2023年5月に立ち上げられたデジタルニュースメディア企業です。正確でバランスの取れた非党派的なニュースを提供することを使命としています。

同社も、Boring ReportやArtifactと同様、タイトルのクリックベイト検出に生成AIを活用しています。AI企業であるSeekrの技術を活用し、記者へ政治的傾向や信頼性を反映したスコアを提供します。Seekrはセマンティック分析技術を使用し、与えられた文章内の感情や情動を識別することで事実と意見を区別します。このツールの使用は義務ではありませんが、オプトインするとスコアは読者にも公開されるそうです(NiemanLab)。

ただし、Seekrの精度には疑問の声が上がっています。実際にSeekrがThe Messengerの記事につけたスコアを見ると、ほとんど全てが「低」または「非常に低」と返しています(X)。

X - Joshua Benton

例えば、「Foo Fighters Announce First Major Headline Tour Since the Death of Taylor Hawkins」という見出しの記事も、主観性の過剰な提供を理由として信頼性が「低」とスコアリングされています。しかし、本文には信頼できる引用元のリンクが貼られており、人間が判断する限りでは見出しも事実を述べているように思えます(Futurism)。

クリックベイトは社会的にも問題視されていますが、AIによる解決にはまだ技術力の向上が必要そうです。

Local News Now

USのバージニア州に拠点を置くローカルメディアであるLocal News Nowは、ARLnowというウェブメディアのニュースレターに生成AIを活用しています。ARLnowは毎朝ニュースレターを配信していますが、そこに含まれる記事の要約は全てGPT-4を使って自動生成しています。さらに、Zapier、Airtableなどのサービスを組み合わせることで、配信まで人間の手を介さず自動化しているそうです。現時点ではARLnowのニュースレターの購読者は100人程度ですが、1,000人を超えたら人間による校正・編集をプロセスに追加するとのこと。
ローカルメディアが制作するコンテンツは、そのエリアに関わる人からの需要が確実に一定ありますが、必ずしも量が多くありません。そのため非常に少ない記者や編集者で回さないといけない場合が多いですが、生成AIを使うことで少ない人数でもローカルな需要を十分に満たせるコンテンツを生成できるようになるかもしれません。
同社はニュースレターのテキスト作成以外にも生成AIを広く活用しようとしています。例えば、2分間のニュースの要約をARLyという名前のAIが音声で作成・収録し、ニュースレター上で配信しています。それ以外にも、新しく公開された記事の誤字や記載ミスを探したり、記事をポジティブ、ニュートラル、ネガティブに分類してソーシャルメディアで活用したり、チャットボットを使ってスポンサー記事作成をサポートしたりする実験も行っています(Nieman Lab)。

Aftonbladet

Aftenbladet

スウェーデン最大の日刊紙であるAftonbladetは、記事の要約作成に生成AIを活用しています。
この要約は"Snabbversions"(英語ではQuick Version)と呼ばれ、自社CMSに組み込まれたOpenAIのGPTを使用して作成されています。記事へアクセスした段階では要約は畳まれており、表示するかどうかはユーザーが選択することができます。

Aftonbladet

同社によると、読者はは要約のない記事よりも要約のある記事の方を長く読んでおり、若い読者の40%近くが要約を利用しているとのこと。要約を掲載する前に人間の編集者が必ず内容を確認していますが、それを含めても1記事あたり30秒以下で完了するそうです。

同社はかなり生成AIに積極的で、「非テキスト x 新体験創出」で取り上げているラップニュースのような事例だけでなく、約200名いるニュースルームの社員に定期的にワークショップや研修を実施しているそうです(Press Gazette)。

Verdens Gang

Verdens Gang

ノルウェーでシェア1位のタブロイド紙であるVerdens Gang(VG)も、Aftenbladetと同様、記事の要約作成に生成AIを活用しています。
同社は、OpenAIのGPT-3を使って8つの要約を作成し、人間の編集者がそこから最も良いものを選択、編集し掲載しています。表示するかどうかは読者が選ぶことができます。

VG

要約導入後の読者調査の結果、74%は「要約は記事の導入となり、記事を読みたいと思わせるものだった」と回答し、わずか12%が「要約により、記事全体を読む必要がなくなった」と答えたそうです。要約により記事全体の読了率が高まるというのは、Aftonbladetと同様の傾向と示しています。実際、VGでは要約記事を読んだ読者ほど、記事での滞在時間が伸びることがわかっています。

VG

8月時点で、全読者の19%が要約を利用し、15歳から24歳の読者における利用率は27%とのこと。若い読者ほど要約を好むという点も、Aftonbladetと同様です(INMA)。

Reuters

Reuters

ロイターは、生成AIのブーム以前から業務にAIを積極的に取り入れています。例えば、2018年に発表したLynx Insightsという内製AIツールはトレンドや異常値を検出して記者に記事のネタを提供しています。
もちろん生成AIにも積極的に取り組んでおり、同社のニュースルームでは現場レベルで生成AIを日々試行錯誤しながら実験しているそうです。例えば、非エンジニア社員がChatGPTでプログラミングコードを生成し、経済データに関するレポート作成業務を効率化しているとのこと。データジャーナリズムのような領域で参考になる事例といえます(Reuters)。

Business Desk

Business Desk

ニュージーランドの経済系ニュースサイトであるBusiness Deskは、同国証券取引所の発表情報を要約し記事化するためにChatGPTを活用しています。 記事の作成時間は1本あたり30分から30秒へ削減されたそうです。

BusinessDesk

ローンチ時には2700件の記事を生成し、スタートダッシュに大きく役立ちました。同社GMへのインタビューでは、AI活用時のポイントがいくつか述べられています。

  • 「ビジネス記者として記事を書く」」ガーディアン風にまとめる」など、要約以上のことを指示するとハルシネーションが起きる

  • また、最後にフルストップがないプロンプトを書くとハルシネーションが起きる。

  • 編集者が自らプロンプトを試行錯誤し学んでいる

今後は、記事の見出し生成にトライするなど徐々に活用範囲を広げていくそうです。また、特定の情報に対し以前発表した内容と照らし合わせるファクトチェック機能にも可能性を感じていると言います(INMA)。

Le Monde

Le Monde

Le Mondeは、フランスの新聞社です。同社は紙媒体だけでなくデジタルメディアも積極的に展開しており、記事の英語翻訳に生成AIを活用しています。1日40本の記事を翻訳することで英語版を展開し、マーケットの拡大に取り組んでいます。記事の品質を担保するために、5名の編集者が翻訳の選択と検証を行なっているそうです。2022年の4月以降、13000以上の翻訳記事を公開しています(INMA)。

INMA

Gizmode

Gizmode

Gizmodeは、10カ国以上で運営しているテクノロジーメディアサイトです。日本語版サイトも存在します。

同社は8月29日にスペイン語サイトのオペレーションを止め、今後は英語記事をAIでスペイン語に自動翻訳し掲載することを発表しました。これまでスペイン語サイトで働いていた少数の従業員は解雇され、今後は完全自動化サイトとして運営されていくようです。

Le MondeやGizmodeに見られるように、記事翻訳は生成AIの主要なユースケースの一つになります。単純な業務効率化を超え、マーケットを拡大し直接的な収益向上に繋げることもできます。この2社以外の事例として、イギリスの番組制作会社であるITNも多言語翻訳で生成AIを活用しています(Press Gazette)。世界陸上のニュースを8ヶ国語に翻訳して配信するなど、テキストコンテンツだけでなく映像領域でも多言語翻訳ツールとして活用できる事例と言えるでしょう。

非テキスト x 効率化

Buzzfeed

Image: Buzzfeed

Buzzfeedは、記事制作以外にも生成AIの様々なユースケースを試行錯誤しています。
例えば、2023年2月にクイズセクションである「Infinity Quizzes」の一部で、AIが搭載されたインタラクティブコンテンツが6つ掲載されました。これはユーザーがいくつかの設問に特定の情報を入力することで、テーマに沿ったストーリーが自動生成されるというものです。入力された情報に応じてAIが都度生成するため、一つとして同じ文章にはなりません。また、クイズの問題は人間のクイズ作家が作成しているそうです(Gadget Gate)。

Buzzfeed

その後3月には、「Under the influencer」というインタラクティブミニゲームをリリースしました。これは、ユーザーが仮想インフルエンサーとして活躍できるかを判定するシミュレーションゲームで、Clout QueenというAIチャットボットにテキストを入力することでゲームが進行します。このゲームにも、人間の編集者や技術者が大枠のストーリーやAIのパーソナリティを設定しています。

Buzzfeed

これ以外にも、記事の企画段階でブレストをサポートするために使ったり、視聴者のためのコンテンツパーソナライズにも使用されています(Insider)。

ANGHAMI

Anghami

ANGHAMIは、中東・北アフリカで音楽ストリーミングサービスを提供しています。Spotifyと同じようにPodcastにも力を入れていますが、5月に生成AIが自動作成する史上初の日刊ニュースポッドキャストである「Anghami AI Newsroom」を開始しました(Music Business Worldwide)。そのポッドキャストでは、GPTをベースとするAIが毎朝前日のニュースから音声を自動生成し配信しています。Anghami AI Newsroomはこちらから聴くことができます。

Planet Money

Planet Money

USで900以上のラジオ局ネットワークを展開する非営利組織であるNPRが運営するポッドキャスト「Planet Money」は、6月3日に公開されたエピソード「AI Podcast 3.0: Dial M for Mechanization」の脚本を生成AIを使って作成しました。本エピソードはAIに関する3部構成のラストをかざっており、パート1と2ではAIに実際のリサーチやインタビューの記録を与えて脚本を書く方法を学習させました。
Planet Moneyは、これまでに配信したポッドキャストのエピソードとNPRの記事を学習させた独自AIチャットボット「Planet Money Bot」もリリースしています。かなり機能は限られていますが、番組全体で生成AIの検証活動を行なっている数少ない音声メディアと言えるでしょう。

Aaj Tak

Aaj Tak

Aaj Takは、ニューデリーを拠点とするメディアコングロマリット企業「リビング メディア グループ」が提供するテレビニュースチャンネルです。

同社は、"Sana"と呼ばれるAIアバターのアナウンサーを導入しました。Sanaは、ニュース、天気予報、金融やスポーツの最新情報を休憩せずにリアルタイムで伝えてくれます。インドには公用語が22個存在しますが、Sanaはそれを上回る75ヶ国語にリアルタイム対応しており、ほぼ全ての国民がストレスなくニュースを取得することができます。

Sana

現状、Sanaは与えられたニュースを人間らしく読み上げることに徹していますが、今後は人間によるパネリストのファシリテートを実施するためにトレーニングを受けているそうです。

なお、AIアナウンサーはインド以外にも様々な国で実用化されています。

Media Corp - CNA

cna

シンガポール政府が所有するメディアグループの MediaCorp が運営するニュースチャンネルであるCNAは、テレビニュースから動画クリップをトリミングする作業にAIを活用しています。AIがプレゼンターやレポーターの声を認識し、ナレーションが入っていない箇所を自動で除去します。80%以上の精度を誇り、放映後数分でCMSやYoutubeチャンネルにアップロードできるそうです。

CNA

同社はテレビとデジタルを分断されたメディアとして扱わず、デジタルを最終地点とする一体のニュース媒体として捉えています。その考え方をベースとすると、本ソリューションは非常に大きな業務的価値を持ちます。ただし、同社は精度に関して「完璧を求めすぎないこと」が重要だと述べています。80%や85%までは実現可能だが、それ以上の精度向上は「ほとんど不可能」と述べています(INMA)。

Sky News

Sky News

Sky News は、イギリスのメディア企業「スカイ」が運営する24時間放送のニュースチャンネルです。ロンドンに本部を置き、イギリス国内のニュースだけでなく、世界のニュースも扱っています。

同社は、ニュースの生中継において視聴者からの質問のグルーピングに生成AIを活用しています。グループ化することによって、リアルタイムに視聴者の関心事項を把握することができます。

それ以外に、文字起こしや画像、見出しの生成にも生成AIを活用しています。ただし、ニュースコンテンツの要約をさせるとハルシネーションが起きることがあるため、そこまでは踏み込めていないとのこと(

)。

テキスト x 新体験創出

Ingenio

Veda

記事制作で積極的に生成AI活用しているIngenioのAstrology.comですが、独自のAIチャットボットも展開しています。Vedaはユーザー毎にカスタマイズされたスピリチュアルガイドとして位置付けられており、「人間関係、キャリア、お金、健康の問題について、ユーザーが占星術、タロット、数秘術のレンズを通して考える」手段として提供されています。回答はAIが生成したテキストのみで、Astrology.comのコンテンツへのリンクは表示されません。現在は完全無料で使用できますが、有料サブスクリプションプランやネイティブ広告によるマネタイズも模索しているそうです(Digiday)。Vedaはスピリチュアルに関するクエリ以外にも、旅行や経済に関する質問などより一般的なクエリにも対応しています。

Tasty

Tasty

TastyはBuzzfeedが展開する料理メディアで、レシピなどを提供しています。Tastyが提供しているチャットボット「Botatouille」は、Tastyアプリから完全無料で利用することができ、料理のアイデア出しやレシピ検索、1週間の食事の計画、冷蔵庫の食材に基づくレシピの考案など料理に関する様々なクエリに対応することができます。回答には、AIが生成したテキストとTastyのレシピページなどへのリンクが表示されます。

Botatouille

Botatouilleは、Tastyの社内機械学習システムとGPTを組み合わせ、Tasty編集部のナレッジと膨大なコンテンツをベースに開発されているそうです(Tasty)。

Skift

Skift

旅行ビジネスに関するコンテンツを提供するSkiftは、旅行に関連する情報を提供する独自チャットボットである「Ask Skift」を提供しています。無料プランでは毎月3回までクエリを投げることができ、有料プランだと無制限に使用することができます。回答には、AIが生成したテキストとSkiftの関連記事へのリンクが表示されます。Skiftは、Ask Skiftを有料ユーザーのリテンションツールとして位置付けており、サイトの訪問数や滞在時間が増えることを狙っています。

Ask Skift

Skiftは、過去11年間にわたり蓄積してきた記事、リサーチレポート、トレンドレポート、スキフトミーティングといった専門コンテンツ、そして米国の上場旅行企業の年次・四半期財務報告書を含むアーカイブの全てをAsk Skiftに学習させています。OpenAIのGPT-3.5をベースに構築されており、今後も継続的に学習データを増やし回答の精度を高めたり、レポートの即時作成、調査レポートの要約、決算説明会の問い合わせ、イベントビデオのトランスクリプトなど様々な機能を追加していく予定です(Skift)。

スポニチ

スポニチ

生成AIは海外企業でより先進的に活用されていますが、日本での事例も増え始めています。例えば、スポーツニッポン新聞社が発行しているスポニチは「AI野球コンシェル」という野球情報の提供に特化したチャットボットのBETA版を公開しています。AI野球コンシェルは質問項目がいくつかプリセットされている他、部分的に自然言語によるクエリも受け付けています。ただし、野球に関するトピックでかつスポニチ上に関連情報が存在する場合のみ回答することができます。GPT3.5-Turboをベースに、スポニチアネックスの野球記事を学習させ構築されているそうです。

AI野球コンシェル

Leaf

M KYOTO

リーフ・パブリケーションズが展開するLeafは、京都に関する情報を提供するM KYOTOというバーティカルウェブメディアを提供しています。M KYOTOはLINE上に「Kyoto Chat Guide」というGPTベースのチャットボットを公開しており、1日あたり5トークまで無料で利用することができます。回答には、AIが生成したテキストとM KYOTO上にある京都の観光情報を掲載した記事へのリンクを回答してくれます。現時点では直近2年間のLeafのコンテンツを学習させていますが、今後は過去27年の取材で蓄積した情報も学習させてサービスを拡充していく予定とのことです(Leafkyoto)。

四季報AI

東洋経済新報社

四季報AIは、OpenAIのChatGPTを活用したAIチャットボットサービスです。四季報オンラインに掲載されている記事やデータを主な参考元として、株式投資や銘柄研究に役立つ情報を対話形式で引き出すことができます。

四季報AI

現在は、招待ユーザーを対象とした「ベータ版」の公開で、申し込みは8月に終了しています。同社HPによると、以下のようなプロンプトに対して満足度の高い回答が出力されているそうです。

  • インバウンド関連の有望株を教えてください

  • バフェットさんが買いそうな日本株はどこ?

  • 味の素の競合他社はどこですか?

  • 日経平均株価

  • 米国債券が売られると何故株価は下がる?

Axel Springer

Axel Springer

Axel Springerは、ドイツ最大のメディアコングロマリット企業です。180以上の新聞・雑誌を発行しています。同社が運営している、ヨーロッパで最大の販売部数を誇る日刊紙"BILD"と"WELT"は、ChatGPTのプラグインを提供しています。

BILD / WELT

ChatGPTの有料ユーザーであれば、自然言語で両メディアのニュースにアクセスすることができます。ChatGPT上で動作するため、ニュースを取得した後に内容を要約したり、他の情報と組み合わせて二次加工することもできます。

非テキスト x 新体験創出

Aftonbladet

スウェーデン最大の日刊紙であるAftonbladetは、新聞離れが加速する若者層を惹きつけるための生成AIを活用しています。若い世代のためのニュース体験を再設計しようとするフォーカスグループから生まれたアイデアは、「ニュースを要約したラップ音楽を作る」というものでした。Aftonbladetは実際にAIを使ってニュースのラップ音楽を生成し、1000人のターゲットユーザーへテストを行いました。歌詞は少しぎこちなくファストフード店で流れるジングルのようなラップですが、ニュースの内容自体は伝わります。ちなみに最も人気があったのは、ビヨンセのルネッサンス・ワールド・ツアーに関するラップだったそうです(Insider)。

Buzzfeed

Image: Buzzfeed

同社は、画像生成AIであるMidjourneyをフル活用した記事を公開しています。映画「バービー」の大ヒットに合わせ、バービーのドリームハウスがアメリカの各州でどのように違いそうかというイメージをMidjourneyで生成し掲載しています。本記事はTikTokとInstagram Reelsでバズり、100万ビューを超えているそうです。

Liquid Studioについて

Liquid Studioは、Media&Entertainment業界に特化したコンサルティングスタジオです。Generative AIなど、最先端デジタルテクノロジーに関するリサーチや計画立案、実行支援に強みを持ちます。メンバーには、ビジネスコンサルタントだけでなくAIエンジニアも在籍しており、ビジネスとテクノロジーの両面からお客様のビジネス変革をサポート致します。
HP: https://www.liquidstudio.biz/
公式Twitter: https://twitter.com/_liquidstudio_

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?