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「いずれ全てが機械化される」は本当か?

 「父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。」という本を読んでいる。今回は第6章の話をする。

 「仕事は全て機械化され、人は機械に仕事を奪われてしまう」というよくある説が載ってたので、いい機会だと思って反論してみた。

 第6章は「恐るべき機械の呪い」という題である。機械化が進むと以下のようになると筆者は主張している。

①機械化が進み、生産コストが減る

②コストが減ったので人員の削減が起こり、人間に賃金が渡らないので経済全体に回る金が減る

③景気が悪くなったので資本家が借金を返せなくなる

④イカロスの翼のように経済は墜落、Bad End……

そのため筆者は過度な機械化は人間の人間らしさを失わせるとし、機械からの支配から逃れるために、「機械を共同保有することで、機械が生み出す富をすべての人に分配したほうがいい」と提案している。

しかしここで2つ疑問を抱いた。1つ目は「企業の機械化が進むのは機械のせいなのか?」ということ。2つ目は「機械による富をすべての人に分配する仕組み、要するに政府では?」ということである。


 1つ目について。機械を作るのは人間である、ということを思い出さなくてはならない。工場が動く仕組みを考案し、原材料を運び、労働力(機械の労働力や人間の労働力)を管理するのは人間である。企業の機械化が進むのは経営者が合理的な判断として導入したためであり、決して鉄それ自体が人間に何かをしているわけではない。人間が人間に作用しているだけである。

 そもそも論として、人間は機械より安い。「いずれすべてが機械化され、人間は不要になるだろう」というよくある論は、鉄が有限であることを無視している。鉄を得るのも、それを加工して機械にするのも、経年劣化を経た機械をスクラップにするのも、すべて人間である。世界に78億人いる人間の安さに鉄が追いつくことはまずないだろう。


 2つ目について。筆者は機械に社会が支配されることの恐怖から、「機械を共同保有してその富を分配しよう」と言っているが、先に述べたとおり、機械が人の雇用を脅かしているのではなく、人間が人間に作用しているだけである。よって機械を支配しても意味がない。やるべきは企業からの税金徴収とその再分配で、それが政府の仕事というものである。人々から文句言われない税金の取り立てと再分配の仕組み作りむずいんじゃ~という愚痴ならわかるが、矛先を機械に向けるのは違うだろうと思った。


すごいものが急速に勢力を伸ばすのを見るのは怖い。それはわかる。でも怖いから管理しようとか支配しようとかじゃなくて、共生していきたいな~と思った。人間でも、人間じゃなくても。

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