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「しししし4」巻頭言

*この文章は「しししし4」に掲載されたものです。

「しししし4」をお送りする。

今号は、本屋として新型コロナの影響をもろにうけたため、発行自体をどうするか考えざるをえない状況でのスタートだった。始動は遅れ、編集部会議を立ち上げスタート宣言をするも、何度も中断することとなった。まあ、疫病を理由にしたが結局は編集責任者のわたしの優柔不断のためだ。

前号は、「好き勝手に作る」を掲げて詰め込めるだけ詰め込んだ。今回もその思いを引き継いで作ろうと最初の企画会議が行われるまでは考えていた。しかし、編集部で話し合いを進めていくうちに、事情は変わっていった。文芸誌を作り続けるためには、採算をしっかり考えないといけない、特に4号を出すのであれば、今までが助走期間だとすれば、飛び立たなければいけない号だ、と誰かが言った。(多分)

難しい計算と話し合いを繰り返す中で、今号はボリュームを抑える、ミニマムな形で進めようと決めた。けれども、動き出して、実際に書き手の人たちと会話をし、取材を始めると、やりたい企画、やらなければいけないコーナーがたくさんあった。

今号もとてもバラエティーに富んだ雑誌になった。これでも、泣く泣く落とした企画や声をかけられなかった書き手たちがいる。やり切らなかった分、次号は確実に出るだろう。

今号は優柔不断がテーマと言える。これは毎号のテーマであり、わたしの人生のテーマでもある。結果として、終了時にスタートした時と同じ場所に立っていたとしても、それが悩み考え一度どこかへ移動した上でなら、それで良いのではないかと思う。「しししし」はそういう雑誌なのだ。

さて、内容についても少し紹介しよう。
今号の特集は中原中也である。
特集作家の選び方を変えた。今までは、編集部で推したい作家を選び、より多くの人へその作家・作品を受け取ってもらいたいという思いだった。
ところが、中原中也について、まったく知らない。でも、とても気になる作家だった。
作品、作家の人生は有名だが、いまいちよくわからない。
そういった作家について、色々な人に聞いてみたいと思った。
今回の特集を通して、結局わかったようなわからないような気持ちだ。でも、中也の作品をもう一度しっかり読もうという気持ちにはなった。きっとこれから読む読者の皆さんもそうなるはずだ。それでいいのである。

特集以外では、創作が昨年よりさらに充実した。
「しししし」だからこそ生まれた作品ばかりだと自負する。
随筆・読み物も新しい取り組みを始め、雑誌だけでは終わらない展開がありそうだ。
もはや定番となっている本屋日録もある。地域に根ざした本屋、新しい形の本屋、コロナ禍に新しくうまれた本屋、などの日々が書き込まれている。
対談企画「短編小説の愉楽」は、これからの小説を考える上でとても大事なことが書かれている。企画者の弁にも熱がこもっている。

今回も、楽しみながら作った。
一緒に楽しんでもらえたら、これほど嬉しいことはない。

二〇二一年十一月吉日 双子のライオン堂にて 竹田信弥


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