認知症と尊厳と
2017年 4月のとある日
22時頃に、父から事故を起こしたと連絡が入った
父はその日、車で6時間かけて故郷に帰省していた
幸い、自損事故で身体はほぼ無傷とのこと…
翌日の早朝、慌てて飛行機で駆けつけた
そこには、いつもとは違う父がいた
あれ?こんなにぼーっとしてた?
会話がチグハグだな…
元々、おっとりしてた父だから、今まで違和感に気づけなかった
ただ急に猫背が酷くなったな〜と会うたびに気にはなっていた
いつも住んでる場所ではない所で、事故を起こしたという、アクシデント
父は、思考が回らなくなっていた…
病気だと確信するのと同時に悲しみが襲ってきた
父をレンタカーの助手席に乗せ、警察署やJAF、病院など、前日お世話になった所をまわる
父が何もわかってないのだ
事故をおこした車がどこにあるのかもわからない
持ってきてたボストンバッグも行方不明
小さな田舎町を走り回る私を見て、「忙しそうだね』と隣で微笑む
辛くてたまらなかった 父はまだ67歳だ
父の年齢を知った車屋さんは
「俺と同い年なのに、こんなに背中曲がって、ぼーっとして…しっかりしなさい!!」と父に言う
私は助けてもらった立場なのに、思わず睨みつけてしまった
全てが悔しかった
こんなに優しい大好きな父が、なんでこんなことに…悔しくて悲しかった
父は『レビー小体型認知症』だった
アルツハイマーと違って、パーキンソンの症状が強く出る
全身の筋肉が硬くなり、動きにくくなってくる
行動しようとすると、脳の信号と体の信号がかみあわなくなって動き方がわからない
平均余命3〜7年…悔しかった
その後、心を鬼にして車をとりあげた
車が欲しい、運転したいという父にダメと言い続けた
筋肉が緩んでヨダレを垂れ流してしまうので、いつもタオルを沢山持っていた
父本人は気にしていたが、異様な目で見てくる周りの人を睨みつけて追い払った
素麺の食べ方がわからないので、先にわざと目の前でゆっくり食べ方を見せた
食事が上手くいかなくて、ボロボロこぼしていくのを無言で気づかれないように拾っていた
父の尊厳を守りたかった
いつまでも頼れる父であるということを守りたかった
その後、4年間自宅療養したのち、コロナワクチン接種後に高熱が出て、誤嚥性肺炎になった
71歳で旅立った
悲しくてたまらなかったが、なぜか火葬後の父の姿を見た時に「お疲れ様でした」と、尊敬の念で胸がいっぱいになった
最後まで尊敬するかっこいい父の姿だった
注意 上記の写真はあくまでも昼寝中の姿です
いつも色んな所でいつの間にか寝てました 笑
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