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舞台『モンスター・コールズ』初見感想

 2023年10月30日、他でもない我らが佐藤勝利さんのお誕生日に発表された舞台『モンスター・コールズ』、2024年2月10日の初日から遅れること数日、ついにわたしの初日を迎え無事観劇を済ませて参りました。

 舞台『モンスター・コールズ』日本公演は、イギリス公演が2019年のローレンス・オリヴィエ賞(イギリスで最も権威があるとされている演劇賞のひとつ)の受賞を受け、その翌年2020年に予定されていたこと、感染症の世界的流行でそれが叶わず、4年越しの幕開けとなったことが、事前のニュースやパンフレットで印象的に語られていました。
 舞台が上演されるということが当たり前ではないこと、初日の幕が上がることが奇跡のような出来事であること、それぞれ強く実感するニュースがここ数日舞台ファン界隈を賑わせていましたが、どうかその奇跡が長く続くようにと願わずにはいられません。わたしの観劇体験が最高に幸せなものになったことについて、関係者の皆様に感謝の気持ちでいっぱいです。

 久しぶりにnote書くので真面目になっちゃった。以下、舞台めっちゃ楽しかったよ~!! という内容です。

0. 観劇前あれこれ 

 原作ありの舞台のとき、事前に予習して行くか否か、毎回悩みますよね。わたしは今回複数観劇することが決まっていたので、原作小説も映画も観ずに臨みましたが、どっちがいいんだろうなぁ~! まだ本を読んでいない状態でこれを書いているので自分の中でも答えが出ていない問題なんですけど、予習していないからといって話が分からないとかはありませんでした。その点はご安心ください!

 座席間の幅は広めなのにとても舞台が近いです。わたしは7列目だったんですがそれでも「わぁ!」ってなりました。双眼鏡がなくても(佐藤さんの目が大きいこともあって)目の動きが分かるレベルです。まあ防振持って行ったんですけど。使ったんですけど。防振構えると睫毛の本数すら数えられそうな世界が待っています。すごいぞ!

 地味に困ったのはグッズ販売とカフェについて。パルコ劇場が初めてだったので勝手が分からず、かなりまごまごしてしまったので、誰かの役に立てたらという淡い期待を込めて諸々書き記しておきます。

◆パルコ劇場のグッズ販売とカフェと手紙について

 グッズ(『モンスター・コールズ』のグッズ、パルコ劇場グッズともに)開場後・会場内ホワイエでの販売です。早めに行ってもがっつり閉まっているので何も出来ません!(早めに行った)(近くに何でもあるので早めに行って何も出来なくてもどうにでもなります)
 お会計は現金、クレジットカード、QRコード決済、電子マネー対応と素晴らしく最高オブ最高でしたが、列によって利用可能な決済方法が異なっていたりしたので(クレジット・電子マネー対応の機械が2台しかないけど会計は3列みたいな)複数の決済方法を準備しておくと便利かな~と思います。

 カフェは現金とタッチ決済のみ(Suicaと恐らくクレジットのタッチ決済もOK)です。テーブルというか台が少なめなので、ちょっこりやグッズと写真撮影がしたい人は時間に余裕を持っていた方がいいかもしれません。まあでも椅子がないせいか客回転がヤバ早なうえ、みんな仲間ですし場所はすぐ譲っていただけます。大変ありがたい。わたしはお酒が飲めないのでノンアルのマジックアワーを頼みましたがさっぱりしてて美味しかったです。

 佐藤勝利さん宛の手紙のみ、専用の受付BOXがあります。直接手紙が出せる!! 是非! 書いて!! 持っていきましょう!!!!

以下ネタバレを含みます。

1. 前半パート(約1時間10分)

 舞台にはロープと椅子のみで、所謂セットらしいセットはありません。開演時間になるとキャストの皆様が舞台上に登場し、かっこいい音楽(本当にかっこいい音楽)とともに物語が始まります。

 部屋着姿で口を抑える佐藤さんと混沌とした映像。記憶なのか妄想なのかは不明ですが一目で分かる悪夢のビジュアルです。すごい悪夢。
 その後舞台が明るくなり、主人公コナーの日常がスタートします。散らばった制服を集めて着替えるコナー。そう、着替えるコナーです。舞台上でがっっっっっつり着替えます足が細い。なぜ服が散らばっているのかは後から分かります。一人で朝ご飯を用意し、お弁当をバックパックにしまうコナー。セットらしいセットがない分、描写されていることはすべて物語に必要な要素なので、出だしから情報量がすごい。 

 コナーは彼とお母さんの2人暮らしであること、お母さんが重い病気であること、学校でいじめられていること、そしてそのいじめの原因が母の病気と手が回ってない身なりのせいであること、仲のいい友達がいたけれど彼女とは距離を置いていること。これらが一気に流れ込んでくるんですが、も~心がしんどいよぉ。児童文学と聞いていたのですっかり油断していました。平たく言うとヤングケアラーの話なんですけどね、隙あらば自語りして申し訳ないのですが、わたしも親の介護がスタートしたの高校生くらいだったので色々と精神に食らいました。服が散らばっているのがつらいよ。

 テーマが現代的て、かつ身近な問題であるからこそ、椅子と役者さんのみの舞台でも情景が鮮明に浮かんできます。キャストさんもコナー以外は全員アンサンブル兼役で、場面によって誰を演じているのか変化しますが、衣装の変更があるので理解はスムーズです。言葉選びが適切かどうかは不安があるのですが、これぞ「純舞台」!!!! という雰囲気でわたしは大好きでした。

 キービジュアルやパンフレットの表紙、そして舞台上でも映像として映し出されるイチイの木の姿。その姿を何度も何度も目にする機会があったお陰か、舞台上にロープで出来たイチイの木が登場したときには「あの木だ~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!!!!!」と何とも言えない興奮がやってきます。すごい。木だ、あの木だ……って感想になりますよねあの場面?? 
 そんな圧倒的パワーを持った木から、12時7分に登場するモンスター。パンフレットでも言及がありましたが、緻密な日常描写の中に突然割り込んでくるファンタジーのバランスは、まさにジブリ作品の世界観です。

 このイチイの木のモンスター、怪物と訳されており、まあ怪物なんですけど、どちらかと言うと妖怪とか土着の神の方が印象は近いかなぁ。人の強い想いに呼び起こされた存在で、人であり森羅万象であり、善悪があいまいで、決まった時刻に3つの課題を投げかけてくる。完全に神話の体系です。そしてこのモンスターが話す3つの物語を聞き終えたコナーは、彼の秘密を第4の物語としてモンスターに話さなければなりません。儀式じゃん。神話のルールじゃん。そして今回も漏れず死の間際系男子を演じておられる佐藤勝利さん。やっぱりそういう境界線の儚い美しさみたいなものが溢れ出ているんですかね。

 モンスターの話を聞いているロープブランコ佐藤さんが激ヤバかわいいです。いやちょっと正直佐藤さんがかわいいシーンが多すぎて「佐藤さんかわいい!!」に引っ張られてしまうことが数回あり、集中力が足りんぞと反省しきりです。でもそのくらいかわいいから覚悟しておいてほしい。なんと! みんな大好きなもぐしょりもあります。
 パパとポテトの箱カラカラしてるとこ可愛すぎて呻き声出るかと思った。パパね、そうパパいるんですよ。アメリカに新しい嫁と幼い娘がいるパパがね。悪人じゃないんだけど中々残酷な存在だよパパ。

 前半は、いじめから守ってくれていた幼馴染とも決別し、病気が進行する母親、新しい家族を優先しアメリカに帰る父親、馬の合わない祖母に引き取られるという現実のすべてがコナーに襲いかかり、祖母が大切にしている時計を破壊する場面で終わります。実際に椅子がバッキバキに壊されます。ねえこれ本当に児童文学か????

2. 後半パート(約1時間)

 怒涛の後半が始まってしまいます。いやだってもう分かってんのよ、お母さん助からないことは明らかだし、コナーの悪夢やモンスターを呼んだ理由が解明されていくわけで、そんなのしんどいに決まってんのよ。

 モンスターの話す3つの物語には様々な要素が散りばめられていて、少し難解です。原作未読状態でのわたしの独自解釈になりますが、ここでは教訓と、モンスターの力を使うためのルールが提示されてるのかな? と感じました。全てコナーに何かを伝えるために用意された物語だということは、3番目の話を「まだお前は聞ける状態じゃない」と一度保留したことから推測できます。
 この辺は完全に原作読了後に向けた自分向けのメモなんですがすみませんね、失礼しますね。3つの物語を自分が納得出来る形に昇華しようという行動こそモンスターに叱られそうな気がする。コナーも「なんだよその話!」と煮え切らない結末にプリプリしているので(とてもかわいい)、意図的にそういう構成にしているんだと思います。物語とは、人間とはそう割り切れるものじゃないんだって言うことなのかもね~~~~!?!?
(わたしの理解力読解力が及ばないだけかもしれないけど)

□ モンスターが話す3つの物語

・魔女と疑われた若い義祖母王妃から王国を守るため身分違いの恋人を殺し、その罪を王妃に押し付け自らは国民に愛される王になった王子の話。
・昔ながらの治療法にこだわるあまり他人の家の木を切らせてほしいと願った薬種屋と、彼を否定しておきながら自分の娘が病に倒れた際は彼を頼った牧師の話。
・人に認識されないことが我慢できなくなった透明ではない透明人間の話。

□ モンスターが物語の中で起こした行動

・王子の恋人を殺したという冤罪で火あぶりにされた義祖母王妃を助けた。
・娘を病気で失った牧師の家を破壊。
・透明人間が周りに見てもらえるように代わりに暴れた。

□ イチイの木のルール

・事実とは違う罪で罰されそうになっている存在は助けること。
・信じる気持ちを失ってしまったら救済は得られないということ。
・存在を否定されたら死んでしまうということ。

□ コナーに伝えたかった教訓

・人間は良い人、悪い人と簡単に区別出来るような存在ではないこと。
・自分の生き方を変えようとしないことを否定するべきではないこと。
・怒りを覚えたら我慢しなくていいこと。

 2番目の牧師の話がさ~~難しくてさ~~~~!!!! 牧師って結婚とか子供OKなんだっけ?? となってしまった。教養が不足しています。

 そして本編、いじめっ子から無視されるようになり、まるで透明人間のようになってしまったコナー。モンスターの話す3番目の物語と完全にリンクし、モンスターの力でいじめっ子のカリスマ:ハリーくんをボッコボコにします。そりゃもうボッコボコのボッコボコ病院送りです。コナーがひとりであんなボコボコに出来るわけがないと周囲に疑われてしまうほどの。

 そしてここまでの問題行動を起こしても、教師はコナーを退学にしようとはしません。大切な時計を壊された祖母もコナーを叱りはしませんでした。他者から罰を与えられることが許されないコナー。最後の頼みの綱だったイチイの木の薬も母親の病気を治してはくれませんでした。

 とうとう母親本人から、もう長くないことを伝えらえてしまうコナー。今まで母親がコナーのためについていた「大丈夫。いつか治る」という嘘が崩れてしまいます。鎮痛剤を打ちながら朦朧とする意識の中、コナーに「我慢せず怒っていいのよ」と伝える母親。耐えきれなくて号泣するわたし。無理じゃないですかこんなの!?!? この舞台が2020年ではなく今上演されていることに運命めいたものを感じてしまうよ!?!?
 確実に近づいている別れの事実から目を逸らし、心の底では母が助からないことを分かっていながら、病気が治ることを信じ自分の生活を我慢してきた13歳のコナーに「怒っていいのよ」はさあ、もう、無理じゃないですか。色々重ねてしまってボロッボロですよ感情が。そんなときでも佐藤さんの横顔は本当に美しいです。涙を掴まえてキラキラ光る睫毛が美しいよ。

 いよいよコナーが第4の物語、彼の悪夢の秘密を話すときがやってきます。あのね、何で後半の感想が具体的になってしまったかと言うと、コナーが罰を受けたかった理由、悪夢の中でコナーが犯した罪があまりにも今の自分に重なってしまって、受け止めるのが大変なんですよ。多分だけどわたしだけじゃないと思う。結構同じ気持ちになる人多いんじゃないかな。

 彼の秘密とは、母親の病気が治ることを信じているのにも関わらず、今の生活が早く終わるように願ってしまったこと。まだ踏ん張れるのに、自分を犠牲にして母のために尽くすことがまだ出来るのに、苦しみから解放されたいと夢の中で母の手を離してしまったこと。母が助からないことを理解していながら今の生活の終わりを望んだことは、母の死を願ったことも同義であるのではないかと自分を責め、罰を求めていました。
 介護とか、子育てとかもそうかな。心当たりがある人いっぱいいるんじゃないでしょうか。相手を愛し大切に思っていることと、献身してお世話をすることは全く別の話なんだよね。もう痛いほど分かる辛いししんどいです。今回は13歳のコナーだったから子供は守られるべきという価値観が根底にあったけど、コナーが大人であってもイチイの木の癒しは必要だったと思うよ。 
 そんなコナーにモンスターは「お前はただ辛い現実が終わることを願っただけ」「母の病気が治ると信じていたこととは矛盾しない」「母の手を離したのはお前が考えただけだ、行動とは違う」「真実を話せ」と必死に語りかけます。このモンスターの言葉、まっすぐ客席の我々にも届きます。相反する自分の感情に雁字搦めになっていたコナーの人生を救うためにイチイの木のモンスターは歩き出したのでした。めっちゃいい話やんけ……心にドスドス刺さってくるけど……。

 モンスターに自分の物語を話し終え、疲れきったコナーは木の下で眠ってしまいます。このタイミングでわたし含め周囲の方何人かが双眼鏡構えててちょっとフフッてなりました。そりゃ見たいよね、寝顔……。

 コナーを迎えに来た祖母と、車の中でお互いの気が合わないことを改めて確認し合います。でも二人には共通点があるという祖母。「あなたのママよ」。ここの言い回しおしゃれだったな~! 定子の話と枕草子で繋がった藤原彰子と敦康親王みたいじゃん。

 そして舞台には12時4分を示すデジタル時計と病室の母親。もう美しいですよね物語の構成がね。コナーは母親に「行かないでほしい」と真実の想いを伝え、モンスターが優しく見守る中、彼女を抱きしめたところで舞台と母親の人生が幕を閉じます。時刻は12時7分。う、美し~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!! あまりにも物語として美しいヨォ!!!!!!!!!!!!

3. おわりに

 自分の感情が大変なことになり過ぎて、感想を書くのも大変だったな……。これを2024年1月ではなく2月に見ることの意味を、運命の力みたいなのを感じて勝手にしんどくなっちゃった。中島健人を失うSexy Zoneに対する自分の感情と重なり過ぎちゃった。
 すごいパワーとメッセージ性を持った物語で、おそらくほとんどの人がいつかコナーだったことがあるし、これからコナーになるだろうし、もしかしたら今コナーのような環境にあるかもしれない。モンスターが物語で彼の心を救ったように、観客もこの物語で救われるような気がしました。
 このお話を舞台で観られてよかったと心から思います。舞台ってキャラクターの感情とか言葉がこっちに直接飛んでくるんですよね。まあ物理的にこっち向いて喋ってるんだから当たり前なんですけど、客席が当事者になれることが一番の魅力だなと個人的には感じます。

 物語がブッ刺さり過ぎて舞台の感想というより『怪物はささやく』の感想だなコレ……。次回観劇の際はちゃんと原作を読んで、舞台表現にがっつり注目して楽しみたいと思います。

 あ、佐藤勝利さんがまた死の間際系男子を演じてることは言及したけど、それに追加してよく担がれてる系男子でもありますよね?? あまりにも美しく(地面と水平に)まっすぐ担がれてる姿、つい最近見ましたよネ~!!

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