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抗加齢治療は加齢を遅らせない

加齢プロセスを遅らせると広く信じられている3つの治療法をマウスで検証したところ、加齢に対してほとんど効果がないことが証明された、という独ドイツ神経変性疾患センターなどからの研究報告。

「簡単なスイッチで調節できる加齢の体内時計はありません。少なくとも、ここで検討されている治療の形ではありません」と研究者は結論付けている。

この研究の結果は、『Nature Communications』誌に掲載された。

研究チームは、3つの治療法を選択した。1つ目は間欠的断食で、摂取カロリーを減らす。2つ目は、細胞代謝のセントラルノード(mTOR)を標的とするもので、これは「抗加齢薬」ラパマイシンの標的でもある。3つ目は成長ホルモンの分泌阻害である。

同様の治療法はヒトでも用いられているが、加齢に対する効果は十分に証明されていないという。

マウスでの評価のために、研究チームは加齢をどのように測定するかという問題に対する新しい答えを開発した。「ここ数十年、多くの研究者は、加齢の間接的な尺度として寿命を使用してきました」と主任研究者のダン・エーニンガー博士は言う。たとえば、マウスは何歳まで生き、その寿命はどのくらい延ばせるのだろうか?

「マウスが長生きするだけで、加齢が遅くなったと考えられることがよくあります。しかし、問題は、他の多くの生物と同様に、マウスは一般的な老齢ではなく、非常に特定の病気で死亡することです」とエーニンガー博士は述べている。たとえば、マウスの最大 90% までが、高齢になって体内に形成された腫瘍が原因で死亡する。「ですから、マウスを長生きさせる要因をゲノム全体で見ると、腫瘍の発達を抑える多くの遺伝子を発見するでしょう。でもそれはかならずしも加齢に一般的な役割を果たしている遺伝子ではないのです。」

そこで今回、研究チームは、寿命を強調するのではなく、幅広い身体機能の加齢に伴う変化の包括的な調査に焦点を当てたアプローチを選択した。

「これは完全な健康状態調査と考えることができます」と共著者のマーチン・ハラビェ・デ・アンジェリス博士は述べている。「健康チェックは、多くの生理学分野をカバーする数百の因子が一緒になった結果です。」

マウスに 3 つの治療法のいずれかを与えた場合、パラメータの変化はより遅くなるだろうか? この研究デザインにより、自然な加齢プロセスを遅らせることができるかどうか、またそれに伴う重要な生理学的機能の低下を正確に判断することが可能になるのである。

結果は明白だったという。研究者らは、年老いたマウスが実際よりも若く見える個々のケースを特定することはできたが、「この効果は加齢を遅らせるためではなく、年齢に依存しない要因によるものであることは明らかだった」とエーニンガー博士は述べている。「年齢に応じた健康指標の変化が現れる前に、治療が若いマウスですでに効果を発揮しているという事実は、これらが代償的で一般的な健康増進効果であり、加齢メカニズムを標的にしたものではないことを証明しています。」

出典は『Nature Communications


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