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高齢者の疾患と生活習慣・環境

肺外結核

コロナ禍で先の見えない不安な毎日が続き、大変な思いをされている方もおられると思います。早く穏やかな日常に戻るといいですね。

昔流行った感染症に「結核」があります。昨今では予防法も治療薬もあり、あまり流行しているイメージはないと思われがちですが、日本は「中まん延国」で途上国並みの感染国となっています。結核予防協会のパンフレットにも「東京オリンピックまでに低まん延国になって、世界のみなさまをお迎えしよう!」と書かれていましたが、今となっては…。

結核とは

日本の結核は60歳以上の高齢者が約7割、残りは若者と言われています。明治から昭和20年代まで国民病と恐れられていた期間があり、高齢者の多くはその時保菌して免疫力や体力の低下したときに発症することがほとんどだと言われています。多くはカゼ症状から診断されますが、7%は肺外結核という肺以外の臓器に病巣ができることもあることを、担当した利用者さんから知りました。

脳梗塞の後遺症で左側半側空間無視があり、左上下肢は不全麻痺で同居の妻の介護で生活されていた80代の男性は、生殖器に発症しました。デイケアにリハビリと入浴目的で長年通っておられたのですが、たまに「行きたくない。」と言われると、妻は無理強いさせずに休ませていました。デイケアを休んだ時は妻が銭湯に連れていき、洗身していた(!)ことで異変に気が付かれました。最初は泌尿器科を受診されますが皮膚科受診を勧められます。皮膚科診察後に大学病院を紹介され、肺外結核と診断されました。妻も保菌していないか検査を受け、排菌(結核を発病している人が、呼吸などで体の外に菌を出すこと)していないか確認するまで、院内では隔離状態だったそうです。幸い排菌はなく、通常の生活を過ごせたのですが、約1年ほど厳格な服薬管理が必要となりました。結核は薬を飲み続けることで完治するのですが服薬期間が長く、途中で止めてしまうことが多かったそうです。途中で服薬を止めると薬にたいして抵抗力を持った耐性菌になってしまい治癒が難しくなるので、医療従事者などの第三者が服薬したことを確認することで完治を目指します。「DOTS」と呼ばれる直接服薬確認療法で、治療政策として定められています。

在宅で服薬管理というと訪問看護かと思いきや、感染症なので保健所の管轄でした。ケアマネとして自宅を訪問した時に、「飲み終えた薬の袋を毎月保健所に見せに行くことが負担。」と妻が話されました。役所にはよく行くので代わりに持っていくと、保健所からは「本人の体調確認もあるので、妻と本人以外はダメなんです。」高齢夫婦が車いすを押して遠距離を通うことの負担を考えないのかと思い、本人の体調確認を兼ねるなら自宅を訪問したらいいのにと強く思いました。本人は大きな身体機能の低下もなかったのですが、デイケアでは他利用者への影響を懸念し受け入れに難色を示されたり、薬の影響で便が赤くなったのを見た職員が慌てるようなことがありました。

結核疑いになった別の利用者さんは、結核病院への入院を勧められても拒否されました。「疑い」だったからなのか、入院は強制できないそうです。幸いこの方は疑いのまま治療薬を飲むこともありませんでしたが、検査結果がでるまではすべての介護サービスの利用は中止しなければならず、ご家族のみの介護で乗り切られました。

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