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ファクトチェッキング団体ってそもそも何?って人にとりあえずアメリカのを紹介してみる

日本にもようやくファクトチェッキングの団体ができたようで、そのこと自体は悪いことではないとは思うものの、早速ツイートに「2022年の大統領選挙では〜」みたいなまつがいがあったみたいで、どうなることやら。

アメリカでも、テレビや新聞などの大手メディアの偏向報道が激しく、保守とリベラルじゃ異次元か?ってくらい伝えられている情報世界が違うし、SNSではQアノンやロシア発の陰謀論が渦巻いている状態なので、果たしてファクトチェックをやってる団体があったからって何かが良くなっているという気はしないが、とりあえずそういうところで情報が照査されているのはわかる。

例えば、ジャーナリズム関連の学位でハクをつけたい日本のマスコミ界隈の人がこぞって留学するので知られている(ほんとは他のことでも知られてるんだけどね)コロンビア・ジャーナリズム・スクールは既にThe Fact Check Industryという記事で、こういったファクトチェッキング団体ができたことで、なんか効果はあったんかい?って書いてるし。

ファクトチェッキングってどうやるの?って人にはこの本がおすすめ。

そもそもファクトチェッキングの団体なんていくらでもあるしさー、日本で今までなかったのがおかしいくらいだろ、というのが正直な印象。欧米ではそのファクトチェッキング団体がどんだけ増えてきているか、という記事がこちら。「新しくできたところ」であって、総数じゃないからね。まぁ個人的な印象だと最近はヨーロッパでも多くなってきているよね。これはファシスト政権/政党の台頭と一致するんじゃなかろうか? とりあえずパッと浮かぶところで、ファクトチェッキングがどのように行われ、アメリカではどんな団体がどんなことをしているのかざっくり紹介しておく。

Snopes  主にオンラインメディアやSNSでバズって拡散された写真のキャプションが正しいか、とか、アーバンレジェンドと呼ばれる「まことしやかに流布されているもの」をチェック。最新の事件や事故現場のニュースとして紹介されていたのが何年も前の別の場所の写真でした〜とか、そういう系。最近のエントリーが2ちゃん発の「八尺様」でワロタ。
Factcheck.org コロナに関して流布したことや、政治家がこんな暴言を!みたいなニュース記事の中身をチェックした記事が読める。割と硬派。アネンバーグ財団が始めた非営利団体で、一般から寄付金を募ってやっている。
Politifact 選挙運動の一環で、候補者のスピーチや政治広告での発言が本当かどうかを主にチェック。ここも非営利団体だが、元々はフロリダ州の新聞の社内部署だった。「嘘かどうか」を「パンツにどのぐらい火がついているか」度で測るんだが、これはアメリカの子どもがLiar, Liar, Pants of Fire!とウソをついた人を揶揄ったりする言葉からきている。見た目よりは硬派。
NPR FactCheck これはファクトチェックの団体というよりNPR(アメリカの公共メディアで、テレビ番組やラジオ、ポッドキャストなど色々やってるけど、声高に何も主張しないぶん、国内のメディアとしては、とにかく地味な扱いw)の一部だけど、大統領の一般教書演説とか、国連でのスピーチなど、長めのものを総チェックする。
他にもジャンルで細かく分かれていて、医学的・科学的なトピックだけ読みたいならここのSciCheckってところも信用度が高い。
そういえば、ワシントン・ポスト紙でも、グレン・ケスラー記者のコラムはFact Checkerって呼ばれてて、個人のコラムという体裁でファクトチェックしてるのがあるな。
TruthBeTold  「最近の若い人は本を読まなくなった」みたいな、ボンヤリとなんかみんながそう思っていることが本当にそうなのかを統計的観点から徹底検証してるサイト。読み物として普通に面白いのが多い。
Quote Investigator   「孔子曰く〜」じゃないけど、よく「有名な人がああいった」とか「誰それの有名な言葉に〜」みたいなのを本当に本人がそんなことをいった記録があるのか、文言が間違ってないか、どんな背景で言ったのかを検証する。
とりあえず文章に有名人の言葉を取り入れたいときに利用できる。
そういえば時々読んでいたHoaxSlayerってサイトも結構おもしろかったのに、いつの間にかなくなっちゃったなぁ。

いやぁ、色々ありますなぁ。元々ファクトチェッキングというのは、各メディアが社内で部署を置いて、専門家を雇って自社の情報に間違いがないかを精査する社内のバックオフィスみたいなもので、地味だし、ニュースになったりしない。メディアの中でも裏方の仕事なので、表立って知られている団体も元々は新聞や雑誌の
ファクトチェッキングの部署でした、ってところが多い。

マスコミ業界で、ファクトチェッキングのすごいプロがいて、徹底的に調べつくされているので有名なのが「ニューヨーカー誌」だったりする。ここのノンフィクションのロングジャーナリズム(調査報道)記事では、もう1回最初から調査するのと同じぐらい時間と手間をかけて端から端までチェックする。ニューヨーカー出身のファクトチェッカーですよ、といえば他のメディアに鳴りもの入りで転職できる感じ。だからレポーターの方も記事を入稿する際に、ここのファクトチェッキング部に、取材相手の連絡先から、出典資料のリストを全部手渡さないといけない。

たまに大手のメディアでもこの部分の手を抜くと、剽窃が後バレしたり、名誉毀損の訴訟になったりして、コツコツと積み上げてきたメディアとしての信用度をなくすことになる。だから社内でやるわけ。

日本ファクトチェックセンターとやらが何をやろうとしているのかは知らないが、編集長がいて大学生がスタッフで、グーグルが出資してるんですよ、みたいな面ばかり取り上げられてて気の毒な感じ。スコープは?といえば上記のSnopesぐらいのものらしい。とりあえずこういうのは信用度が命だからね。大手メディアに
照らし合わせて一致してたから真実!とか言うようじゃまだまだ。まぁコツコツとやってください。そして本当に必要とされているのはPolitifactとかNPRみたいな団体ではなかろうか。壺とは関係ないって嘘ついた政治家や、黒塗りされてた書類に何が書かれていたか調べられて、調べた結果をみんなが信用できる団体がない、という今の状態がいちばん恐ろしい気がする。





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