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日韓の文法の違い~時制とアスペクト「サランヘヨ」は「愛します」?

日韓の漢字語の違いの前書きで、日本人は韓国語の単語の半分は最初から知っているというやや乱暴な私見を述べたが、こと文法に至っては更に日韓両語の類似性が著しく、日本人は韓国語の文法の8割ぐらいは最初から知っている(=日本語と韓国語の文法の8割は同じ)と言っても過言ではないと感じている。

例えば
①とても ②腹 ③が ④減った ⑤ので ⑥ラーメン ⑦を ⑧食べた。
は韓国語で
①너무  ②배 ③가 ④고파  ⑤서  ⑥라면   ⑦을 ⑧먹었다.
と、①から⑧まで単語をそのまま並べるだけで正しい文章ができる。
これに対して英語は
⓪I ⑧ate ⑥ramen ⑤because ⓪I ⓪was ①very ②④hungry.
と、並び方はめちゃくちゃだし、日本語にはない単語(⓪)を入れないといけなかったり、日本語にあった単語(③⑦)が消えていたりと、一から文法を覚えて文章を作らないといけない。

これほど日本語と韓国語の文法が似通っているのであれば、残りの2割の違いさえマスターすれば、韓国語の文法は完璧ということになる。

そこで、これからしばらくはそうした「日韓の文法の違い」について書いていきたい。ただ、これまた漢字語の違い同様、項目が多岐にわたるので、違いの種類ごとに具体例を挙げながら少しずつまとめていこうと思う。

まずは「時制(tense)」と「アスペクト(aspect)」の違いについて。
簡単に言えば「時制」は「現在・過去・未来」のことで、「アスペクト」は「(今から)~する・~している(進行・継続)・(すでに)~し終えた(完了)」等という状態のことである。

基本的に日本語と韓国語の「時制」と「アスペクト」は同じで、日本語が過去形(時制)なら韓国語も過去形に、進行形(アスペクト)なら韓国語も進行形にすれば良いのだが、たまにこれがズレることがあり、日本人も韓国人もお互いに変な文章を作ってしまうことがある。

全てを挙げるのは無理なので、以下、よく使いよく間違う具体例を紹介していきたい。

■(日)現在進行形 vs(韓)現在形

まずは誰でも知っているこの言葉から。

愛しています。
사랑해요サランヘヨ.

一見、何もおかしくないように見えるが、日本語の「愛しています」は現在進行形、韓国語の사랑해요サランヘヨ」は現在形である。「愛しています」の現在形は「愛します」なので、日本語と韓国語とでは「アスペクト」が違っている。日本語では通常、「あなたを愛します」(現在形)とは言わないし、韓国語でも「사랑하고 있어요サランハゴ イッソヨ」(現在進行形)とは言わない。

■(日)過去形/現在進行形 vs(韓)現在形

疲れました。
疲れています。
피곤해요ピゴンヘヨ.

「疲れる」は日本語では動詞だが、韓国語の「피곤하다ピゴンハダ」は形容詞で、日本語では通常「疲れた」(過去形)か「疲れている」(現在進行形)という形で使うが、韓国語は通常「피곤하다ピゴンハダ」と現在形を取る。
このため日本人は「*피곤했어요ピゴンヘッソヨ(過去形)」「*피곤하고 있어요ピゴンハゴ イッソヨ(現在進行形)」と言ってしまったり、韓国人は「朝早くから働いて*疲れます」と言ってしまう(正しくは「疲れました」「疲れています」)。
「腹が減る」「喉が渇く」もこれと同様に日本語は「腹が減った」「腹が減っている」「喉が渇いた」「喉が渇いている」という形で使うが、韓国語は「배가 고프다ペガ コップダ」「목이 마르다モギ マルダ」と現在形を取る。「고프다コップダ」は形容詞、「마르다マルダ」は動詞なので、品詞に関わらずこうした現象が起きる。

同様に、ずっと待っていたバスがようやく見えて「来た!」と言う時や、探し物を見つけて「あった!」と言う時など、日本語はいずれも過去形だが、韓国語はそれぞれ「온다オンダ」「있다!イッタ」と現在形を取る。「왔다!ワッタ」は可能だが「*있었다!イッソッタ」とは絶対に言わない(「見つけた!」は韓国語でも「찾았다!チャジャッタ」と過去形を取る)。
この「찾다チャッタ」には「見つける」の他に「探す」という意味もあり、「何を探していますか?」(現在進行形)は「뭘 찾으세요?ムォル チャジュセヨ」と現在形を取る。

雨が降っています。
비가 와요ピガ ワヨ.
   

これは「愛しています」同様、日韓どちらも動詞で、日本語は現在進行形、韓国語は現在形を取る。(오다オダの代わりに내리다ネリダを使って「비가 내리고 있어요ピガ ネリゴ イッソヨ.」なら現在進行形も可能)
これも韓国人はよく「今、雨が*降ります」と言ってしまいがちである(正しくは「降っています」)。

■(日)現在進行形 vs(韓)過去形

父に似ています。
아버지를 닮았어요アボジルル タルマッソヨ.

これも日韓どちらも動詞だが、日本語は現在進行形、韓国語は過去形を取る。日本語は「父に似ました」と過去形が可能な場合もあるが、韓国語は「아버지를 *닮아요.アボジルル タルマヨ」と現在形になったり「아버지를 *닮고 있어요.アボジルル タムコ イッソヨ」と現在進行形になることはない。
「結婚する」もこれと同様に日本語は通常、既婚であることを言うのに「結婚しています」と現在進行形で使うが、韓国語は「결혼했어요キョロンヘッソヨ」と過去形を取る。「去年、結婚しました」の場合は過去形だが、この場合も韓国語では「작년에 결혼했어요チャンニョネ キョロンヘッソヨ」と同じ過去形で表し、既婚である状態を表すアスペクトと過去の事実を表す時勢が同一の形を取る。このため、韓国人からはよく「*結婚しましたか?」と聞かれる(正しくは「結婚していますか?」)。
「残る」も同様に日本語は「残っています」と現在進行形、韓国語は「남았어요ナマッソヨ」と過去形を取る。

■(日)現在形 vs(韓)過去形

ハンサムですね。
잘 생겼네요チャル センギョンネヨ.

上の「似た」「結婚した」「残った」は過去形でもまだ何とか理解できるが、「ハンサムだ」が「ハンサムだった」になることは絶対にない(というか、昔ハンサムだった人が今はハンサムではなくなったという違う意味になる(笑))。しかし不思議なことに韓国語は常に「잘 생겼다チャル センギョッタ」と過去形を取る。決して昔のことを指しているのではなく、今、イケメンでもこう言うのだ(笑)

こうした時制やアスペクトの違いは単語ごとに覚えるしかないが、上のようにまとめると、一定の規則がなさそうでありそうに見えてくるので(笑)参考にしてもらえればうれしい。

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