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シンギュラリティ信仰はいかにして生まれるか〜序章
序章 カーツワイルの描くシンギュラリティ像
シンギュラリティとは何か。シンギュラリティは日本語で「技術的特異点」あるいは「特異点」と訳される。特異点とは何かについて、マレー・シャナハン(Murray Shanahan)は次のように述べている。
物理学において特異点というのは、ブラックホールの中心もしくはビッグバンの瞬間のような空間か時間の一点であり、そこでは数学の常識とわれわれの理解力が共に
シンギュラリティ信仰はいかにして生まれるか〜終章
終章 シンギュラリティ信仰の確立
第1節 シンギュラリティ信仰の拡大
第1項 シンギュラリティ大学
カーツワイルの楽観的な未来観は、シンギュラリタリアンと呼ばれる人々の支持を集め、信仰されるようになった。シンギュラリタリアンたちは、シンギュラリティが2045年ごろに到来すると信じ、シンギュラリティ大学と呼ばれる学校を設立し、シンギュラリティの到来に向けて、テクノロジーの発展を進めようとしている
シンギュラリティ信仰はいかにして生まれるか〜第3章
第3章 サイバネティクス――シンギュラリティ思想の源流
本章では、20世紀にノーバート・ウィーナーによって提唱され、ジョン・フォン・ノイマンらによって発展したサイバネティクスについて説明し、サイバネティクスがシンギュラリティ思想の源流であることを結論として述べていきたい。第1節では、「サイバネティクス」という言葉が誕生した背景について説明する。続く第2節から第5節にかけては、サイバネティクスの理
シンギュラリティ信仰はいかにして生まれるか〜第2章
第2章 トランスヒューマニズムにおけるシンギュラリティ
本章では、シンギュラリティの思想がトランスヒューマニズムに位置づけられることを示すことが目的である。第1節では、トランスヒューマニズムとは何かを説明するともに、シンギュラリティの思想がトランスヒューマニズムの特徴をふまえていることを示す。また、第2節では、カーツワイルの思想がトランスヒューマニストの一人であるハンス・モラヴェックから影響を受
シンギュラリティ信仰はいかにして生まれるか〜第1章
第1章 シンギュラリティのアイディアの歴史
本章では、カーツワイルの前に、「シンギュラリティ」という言葉を用いた人物であるジョン・フォン・ノイマンとヴァーナー・ヴィンジのシンギュラリティ像を紹介し、その系譜を説明する。これにより、シンギュラリティのアイディアがどのように発展していったのかを示すことが本章の目的である。第1節では、「シンギュラリティ」という言葉が、フォン・ノイマンによって初めて用い
シンギュラリティ信仰はいかにして生まれるか〜はじめに
はじめに
レイ・カーツワイルは、「シンギュラリティ」という概念を用いることによって、ある未来図を描いた。シンギュラリティとは、われわれが今日理解しているような人類のあり方が終わりを告げるほどの劇的変化が、技術の指数関数的進歩によってもたらされる地点のことを指す。その未来では、強いAIが登場したり、人間が非生物的な知能と融合して知性を獲得したり、脳をコンピュータにアップロードすることによって、人は