誰も教えてくれなかったおしゃれのルール(アーカイブ)おしゃれに見えるスタイリングは変わっていく
数学のように、どんなも問いに対しても答えが1つなら、頭を悩ませることは、それほど多くはないでしょう。
しかし、芸術、音楽、文学のたぐいは、答えが1つというわけにはいきません。ファッションもまた、数学ではありませんから、グレーに似合う色は?何にでも合う靴はどんな靴か?トレンチコートは1年じゅう着られるか?などの問いに対して、答えは1つではないのです。
そして、その最たるものがスタイリングです。
たとえば、自分が子どものころのおしゃれな女の人の格好を思いだしてみてください。あるいは、80年代のおしゃれに見えた雑誌のスタイルを思いだしてみてください。残念ながら、そのスタイルをそのまま現在に持ってきたところで、決しておしゃれには見えません。
80年代のスタイルを今そのまましたのなら、それは単なる80年代のコスプレです。
ですから、スタイリングの教科書があったとしても、それはそのときだけ使えるものであり、何年もたってから使おうと思っても、使えるものではありません。
シャツの裾ををパンツに入れるのか、入れないのかひとつとってみても、どちらがよりおしゃれに見えるかは、時代によって変わります。
ファッションには流行というものがあり、時代とともに、衣服のシルエットやデザインが変わるということは、誰でもわかると思います。しかし、変わっていくのはシルエットやデザインだけではありません。スタイリングもまた、変化します。しかもそれはいつでも進化しています。
基本的な西洋の女性用衣服の流れは、男性服の取り入れと、より自由になるためのスポーツウエア、作業着、下着の格上げです。それはスタイリングにおいても同様です。時代ごとに流行るシルエットとデザインがあり、その上により進化したスタイリングがのります。
タイトスカートにハイヒールを合わせるのがおしゃれに見えたのが、時代が進むと、タイトスカートにスニーカーがおしゃれに見える、となります。
そうなったとき、以前のタイトスカートにハイヒールは一番おしゃれではなく、タイトスカートにスニーカーと同位置になるか、少し後退します。
その提案はほとんどの場合、スタイリストではなく、デザイナーによって行われます。テイラードジャケットのインナーにランジェリー、スカートの下にパンツ、ドレスにスニーカーなど、そのオリジナルはストリート・ファッションであることもありますが、認定を与えるのはデザイナーです。
ごく一般の人がやったら奇異に見られるだけの、男性の着用するジャケットを女性が着ることをココ・シャネルが提案したならば、それはそこからモードになります。そしてその慣習は今でも続いています。
デザイナーによるお墨付きがされた、新しい着こなしは、その後、安心とともに、多くの人に認められ、広がるのです。
「色」を除いては、絶対にこうでなくてはいけないという、スタイリングの法則はありません。
チュニックの下にタイトなパンツをあわせるのがおしゃれに見えるときもあれば、ワイドパンツをあわせたほうがおしゃれに見えるときもあります。どちらがおしゃれに見えるかは、その「時代」によって決まります。
そして、その時代感覚を取り入れないことには、おしゃれには見えません。逆に、かたくなに時代感覚を無視するのならば、その人はもうおしゃれな人ではないのです。
好奇心、柔軟性、行動力は、おしゃれな人にとって必須の要素です。それは年齢の問題ではありません。
どんなに年をとっても、そのときの新しい感覚を取り入れて、スニーカーをはいてみたり、ダウンジャケットを着てみたりするならば、その人はおしゃれになります。
おしゃれに見せたいならば、「色」には厳格に、スタイリングには柔軟になりましょう。
それは新しいものを買うか、買わないかの問題ではありません。それは感覚の問題です。
どんなに古いものを着ていても、新しい感覚を取り入れることは可能です。
ジャケットの下にはジーンズだったものをスウェットパンツに変える、フレアスカートにスニーカーをあわせる、そんなほんのちょっとしたことでも、その時代の空気を表現することはできます。
その時代の空気を知るためには、常に好奇心を持って、ファッションに触れること。電車に乗るときも、街を歩くときも、インターネットでサイトを見るときも、いつでも、どんなところでも、見ようとすれば、知ろうとすれば、時代の空気を感じることができます。あとはそれを取り入れる行動力があればいいだけのこと。
読んでいるだけ、知っているだけ、考えただけ、お祈りしただけでは、現実は変わりません。
実際に行動に移さないことには、おしゃれは始まりません。
おしゃれと人生は、その意味において、似ています。ドレスにスニーカーをあわせて歩き出したかどうか、それが一番重要なのです。
2014・10・06
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