見出し画像

谷根千のしあわせな循環

通称「谷根千」と呼ばれるこの街に住んで、かれこれ十年が経った。
両親が東京の人なので東京育ち。国分寺、国立、そして練馬の家で幼稚園から育った。一人暮らしを始めたのは、世田谷区の用賀。実家から少し遠いくらいの田園都市線を選んだ。隣の桜新町でも数年。そして何の気なしに、谷根千にやってきた。
本当は桜新町周辺で新しい部屋を探していたけれど。条件に見合う物件はとんでもなく古いか狭い。そんな時、頭に年上の友人の顔が浮かんだ。(たしか谷根千に住んでいると言っていたような)そんな思い付きから物件を検索。最初にヒットした物件に、その日のうちに連絡を入れ、次の日に内見に行き、気づけば暮らすことになっていた。

それまでに行ったこともなかった街。谷根千は「やねせん」と読み、谷中、根津、千駄木をまとめた通称。地元育ちの作家の森まゆみさんが名付親。東京にいながら、昭和レトロや寺社仏閣を楽しめる場所として注目を集めている。ちょっとした旅行気分というか街歩きに訪れる人、海外から来る人もとても多い。そんなことは何も知らず、ふらっと引っ越してきたので、週末にあふれかえる人に驚くことになる。でも七時をすぎると、観光客は殆どいなくなり、静かな街になる。

この街にきて驚いたのは、ご近所や谷根千での人間関係。とくに知りあいではなくても、路地ですれ違えば、会釈は当たり前。名前は知らないけれど、よく会う人には挨拶をする。世田谷にはなかった旧き良き当たり前のご近所付き合いがある。
十年も暮らしていると、よく物を戴く。実家や友人から届いた農作物や、お裾分けのお菓子など。一人暮らしなので、お菓子を箱でもらった時や、段ボールで届いた果物、育ちすぎたハーブなどをお返しというか、お裾分けできるのもすごく助かる。

そして「ご自由にお待ちください」と道端にいらなくなったモノたちが、置かれていることが日常的にある。家で使わなくなった不用品なのに、やたらと質が高い。しかもこだわりのお店も多いので、店が閉店した時も道端に放出されることが多々ある。値段がついていたとしても激安。いまはモノを捨てるのにもお金のかかる時代。「誰かに使ってもらえたら」という気持ちの表れなのか、この街ならではの循環システムができている。
そのシステムで家にきたモノの例をあげてみると、バーベキューセット、直径32cmのフライパン(300円)、茶箱、植木鉢各種…。今週は近くの古道具屋さんの閉店で、アルミや銅のコンテナなど4つも古いけど、新たなモノが家にやってきた。

もう一つあるのは、友人同士で、顔見知り同士でモノを譲ること。さすがに大きすぎて道端に出せないものを貰うことも多い。引っ越しで置けなくなった植物は、うちのベランダの住人になることが非常に多い。イチジク、オリーブ、ゴムの木、ハーデンベルギアなど、元気に生長を見せている。先週からこの循環システムで、家にすてきなソファコーナーができて、なんとも幸せな気分に浸っている。

根津の友人がソファを二脚手放したいという話がやってきた。そのソファは、別の友人夫妻宅にもあるとても素敵なもので、千駄木の古着カフェでみんなが買った時も知っている。今では売っていない古道具ならではの良さを感じていて、友人夫妻宅ではカフェスペースになっている。
実は寝室にある2シーターのソファを替えたいなと、ずっと思っていた。二十代後半から使っていたので、そろそろ良いかなと思っていて…。大きいからついつい雑誌を積み、洗濯物を置き、デッドスペースと化す。だからといって、きれいだし、気軽に捨てたりできないタイプ。
土曜に話を聞き、日曜に譲り受ける事をきめ、夜に古着カフェで「誰か茶色のソファ、いる人いないかな?」と呟いたら、なんとそこにいた友人が貰ってくれる事に。ちょうど千葉のおばあさまの住んでいた家をリノベーションしているそうで、ソファがほしいと思っていたそう。そんなこんなで、月曜に隣町まで二往復してソファを二脚運びいれ、水曜に2シーターのソファが貰われていきました。
そして、デッドスペースがなんとも有効なカフェ兼読書、そして仕事スペースになりました。パソコン打ちながらスカイツリーを眺めたりもできちゃう。谷根千の循環か、古着カフェネットワークか、物を受け継ぐってすてきな事だな~と思った今週。みなさんへの感謝でいっぱいです。0円で手にしたこの居心地の良い空間。ちなみにこのnoteもそのソファで書いている。

#この街がすき #谷根千 #谷中 #根津 #千駄木 #寺町

この記事が参加している募集

この街がすき

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?