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リンデン
2019年2月16日 11:05
ロサさんは、私を家に上げると居間に連れて行く。居間には古い木の机と椅子が置いてあるだけだったが、窓から庭の薔薇がよく見えた。机の上には小さな硝子の花瓶があり、いつも季節ごとに庭に咲く花が生けられていた。今日は、かわいらしいアプリコット色の小さな薔薇が一輪。飾り気のない素朴な居間に映えている。席に座っていると、ロサさんはレモングラスのハーブティーを出してくれた。透明なグラスに注がれた、美し
2019年2月15日 21:50
「あのう…こんにちは」私はロサさんがいつもいる部屋の窓をノックした。しばらく経ってから、ガチャン、という音がして、扉が開かれた。「こんにちは。上がって」ロサさんはそう言って、私を出迎えてくれる。特別に笑顔を作ることのない、ごく自然な振る舞いが、緊張した私の心を穏やかにさせてゆく。ロサさんは、村から少し離れた林の傍のこの家屋で暮らしていた。軍人さんと共同生活をしているようだが、私がお邪魔
2019年2月14日 22:38
穏やかな日の光が降り注ぐ、午前の刻。庭の入口の花壇には、ピンクとアプリコットの薔薇が優雅に咲いていた。ロサさんは、いつもこの時間に刺繍をしているはずだった。煉瓦造りの古い家屋。窓から日が差し込む小さな部屋で、ロサさんはか細い指で繊細なレース編みのように針を動かしている。彼女のことを、魔女のようだと思ったのはいつ頃だろう。少しウェーブのかかった白に近い明るい金色の髪。深緑を森を閉じ込めたよ