僕じゃない誰かを想う君と。
昔、恋人を作るのに苦労なんてしなかった。
手頃な、手軽な恋人ばかりを選んでいたからだと思う。
自分が相手を好きかどうかはあまり関係なくて、相手が好きだと言ってくれるからそれでよかった。
でもそんな僕にも春は来て、本当の恋を初めて知った。
それは38度の熱より苦しくて、クリスマスの朝みたいにワクワクするものだった。
空が澄んで、星がきれいに見え始めた頃、僕らは初めて2人で街に出た。
映画を見て、ご飯を食べる。たった5時間のことだったけど、恋に落ちるには十分だった。
君が好きだって言った映画、
本当はどのシリーズも見たことなかったけど
あんまり楽しそうに話してくるもんだから
内容もよく知らないのに見に行った。
案の定ストーリーは理解できなかったけど
ポップコーンつかんだまま釘付けになってる君の横顔や、ドリンクホルダー探してる君をみるのが楽しかった。
君ともっと話ができればいいなと思って、デートの後、全シリーズ購入したのは僕だけの秘密。
君が想う人は、僕じゃないことは知っていた。
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