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【マーダーミステリーは調理実習。】それと演劇

マーダーミステリーをしに行くことと、演劇を観に行くことについて、似ている点とその私見を書きます。良かったら読んでください。

1.金がかかる

マーダーミステリーをやるには少なくない額がかかります。特に、ボードゲームカフェなどを借りて行われる ”公演型” は、2000~6000円ぐらいと幅が広いですが、決して安くはないお金がかかります。
演劇も同様にお金がかかります。ワンコインで観られるものから5桁に行くものまで幅広くありますが、安いものは少ないです。

2.時間がかかる

どちらも長い。1時間で終わるマーダーミステリーや、コントなど特に短いものもありますが、その時間は確実に拘束されます。

3.同じものにならない

「ライブ」は同じものになりません。出演者や観客、その日の気分体調天気……同じものになることはありません。

マーダーミステリーも同じものにはなりません。ランダムな要素が多くあります。シナリオやGM(ゲームマスター)、参加者、配役、手に入る情報、キャラクターの行動……色々なものが常にランダムです。

なにより、ネタバレが禁止されているので、同じ内容のものを2度とやることはできません。

4.”刺さる/刺さらない”の落差が大きい

少し演劇の話をします。
演劇を観に行ったとき、私はよく感情移入したり激しく情緒が乱され行動として跳ね上がったりします。心に作品が刺さるのです。残念ながらその逆も当然あり、「(これを面白いと言う人はどこかにいるだろうけど) これは私向きの作品では無かった(Not for me)」刺さらなかったと感じることもしばしばあります。

この ”刺さる/刺さらない” という言葉は、要は個人が "面白い/面白くない" と感じることです。誰かと映画に行った感想で感じたことがある人も多いと思います。私はこの傾向が、演劇に関しては強く出ると感じています。いつ刺さるのか、刺さらなかったときの虚無感が大きいのが何故なのかは正直わかりません。それはお話の内容だけでは無く、目の前にいる役者の呼吸や会場に漂う緊張感を感じたり、果ては大きい音が鳴った時に刺さるのかもしれません。私がどうしようもなくつまらない作品を見ても、尚見続けるのはそういう理由です。

で、私はこの傾向がマーダーミステリーでも強く出ると感じています。
それもまたいくつも要因があるでしょうが、ネタバレを禁じられていることから来る「全員が物語に挑みに行く」そのシチュエーションから起きるものであったり、演劇のような「今、目の前で起こすライブ感」や、詩的な表現に心奪われている時間があるからかもしれません。

この落差について、次の項で挙げることが大きな要因だと思います。

5.フォーカスを選べる

人が心を動かされるとき、人は何かに影響したりされたりしています。その”何か”を自分で選べる点において、演劇とマーダーミステリーは共通していると思います。

映画を例としてまた出しますが、映画は映しだされたものを皆で見ます。今その場で起こっている現象から、製作者が一番見て欲しいものを皆で見ます。
一方演劇では、舞台上で起こっていることに関して、自分の興味が向いたものに好きなだけ注目する(フォーカスを向ける)ことができます。今、殴られた主人公でも殴った友人でもなく、そこを通りがかった通行人の反応を見ることもできます。それが誘導されたものか意識的なものかはともかく、選んでいるのです。
マーダーミステリーでも、プレイヤーが興味を向けるものはそれぞれです。キャラクターやほかの人を含めた環境にはそれぞれ設定があり、必ずプレイヤーは変化する(知った知らないも含めて)それを意識することになります。そこに自分の意思や感情が入り、そのせめぎあいの中初めて選択するのです。選択肢がある中で選んだ行動と、最初からそうしようと決めた行動では意味も重さも違います。その決断は行動の質量を決め、キャラクター/プレイヤーによって射出された行動は速度を得てエネルギーとなって対象にぶつかります。
なんだか仰々しい表現でしたが、このフォーカスがどこにも行かずに彷徨ったり、何も受け取れず見ることもできなかった時こそ、刺さらない作品が生み出されるときだと思います。


まとめられるだけまとめます。

ミュージックの「ライブ映像」など DVD/Blu-ray に記録された映像はカメラワークが凝っていたり、良い画を使って、多くの人に刺さりやすい、調理された形態で提供されます。
一方で、完成品さえ分からない調理実習を、材料を持ち寄って調理器具を探してなんとか完成させていくその姿こそ、マーダーミステリーの魅力であると感じています。

〇追記

誰かに刺さらなかったからって過度に自分の責任にしないようにしましょう。心の思うままに、良識の範囲内で健康的にプレイしましょう!

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