穴の向こうに見えるもの
ドーナツをすごく食べた冬だった。
炭水化物と揚げ物が大好きなので、ドーナツはそりゃもう魅惑の食べ物。
この冬は大雨でも風が強く極寒であっても、食べたいと思えばてくてく出かけていた。
(時間がたくさんあるって素晴らしかったなぁ)
ドーナツにはあれこれ思い出もある。
寡黙な父は職人で忙しく、休みは週1で徹夜もけっこうあった。それなのに貴重な休みにも早くから起きて、今日はどこ行こか?という人だった。(健在です)
よく覚えている頻度が高かった目的地は、母が好きな京都でのお寺めぐり、梅田でランチやお茶にキディランド(大きなおもちゃ屋さん)、あとは近所の喫茶店でプリンアラモード。
隣の駅にあったミスタードーナツにもよく行った。その当時、ドリンク用のお砂糖はハチミツの容器みたいなやつ(透明のプラスチックボトルにオレンジのキャップでツノみたいな注ぎ口がついたやつ)にたっぷり入ってそれぞれテーブルにセットされていた。一丁前に紅茶か何かをオーダーしたものの苦くて飲めなくてお砂糖を入れようとして、オレンジ部分が外れてテーブルにお砂糖の山を創造してしまったことがある。お店の方もわたしたち家族もみなへらへら笑いながら片付けた、さらさらと白い山の思い出。(笑い事じゃないけど)
生まれて初めてのデートもミスタードーナツだった。中学生になったころ、徒歩数分の距離にミスタードーナツができて喜んでいたら、クラスの男の子に行こうと誘われた。一口食べて正面に座る彼を見た時に、これデート…?え、なんか恥ずかしい!と気づいてしまった。恥ずかしくて食べられなくなってうつむいていたら、もうごちそうさまなん?もしかしてお腹とか痛いん?と心配された思い出。ひゃー。
そんな懐かしさも込みで、今もミスタードーナツ好きです。ただ、もう2個は食べられない。かと言って1個では足りない。1個半がベストだなぁ。
たくさんのドーナツを前にどれにしようかと選ぶ楽しさったら。ココナツチョコレートは外せない。ずっとずっとあれが1番好きだ。
大阪から横浜に引越してきてまだ浅い頃、クリスピークリームドーナツがやってきた。
すんごい並ぶけど、その間にまるまる1個を試食で配ってるらしいよ!まじで!と興奮して渋谷だったか、新しい友達と並びに行った。そしてまさかの揚げたて出来たてのオリジナルグレーズドが1人ひとつ配られて、熱々を味わいながらすごいね!すごいね!とテンション高く1時間くらい並んだのも、愉快なドーナツの思い出。
家にいた贅沢な2か月ちょっとの間、いろいろ思い出しつつドーナツをたくさん食べた。
噂の生ドーナツも。
生とは?まさか液体?と本気で思って調べたりして、ほうほうそういうことね、うまそうやんと納得したけれど、電車乗っていって長時間並ぶのはなぁ…と興味は持ちつつ数か月。そしたらなんとお散歩中に発見、近所にできてる!ほな食べてみよか!あ、完売してる…。翌日朝からいそいそ出かけて、10分ほど並んで、プレーンとティラミスとベリーを入手。プレーンがとても好きだった。気に入って3回くらい買いに行った。午前中に行かねば売り切れる。すごい人気だなぁ。
パン屋さんのドーナツも好き。
しっかりと食べ応えがあるのがとてもいい。
食べ応えといえば、スタバのシュガードーナツ。
タリーズだと炭なのか?な見た目のチョコのやつ。
仕事中、夕方のおやつ休憩にコンビニのドーナツを食べる。ツイストドーナツが好き。3個入り、3個とも食べちゃったりする。やっちまったな、と毎回思うのにほぼ毎回食べ切ってしまう。なんであれは3個も食べられちゃうんだろう。
ドーナツを食べる時、家で1人だととりあえず穴を覗く。当たり前だけど、爽やかな草原とか、近未来都市とか、恐竜とか、明るい未来とかが見えるわけじゃない。
ドーナツに縁取られたリビングの景色がちょっとハッピーになるだけ。それだけなのになんだか楽しくて。そう思うと生ドーナツに穴がないのはほんの少し残念なのかもしれない。
ドーナツじゃないけど、最近食べて目をかっぴらいた品々。
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