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日本で働くということ

昨日はクリスマス。

日本でのクリスマスは6年ぶりで、その間に日本の文化が変わってなければ、一緒に過ごす恋人がいないと寂しい日。

もちろん予定がない日になるはずだったが、ありがたいことにディナーのご招待を受けた。日本橋の老舗のお店だ。

誘ってくれたのは6年ほど前に技能実習生として来日して今はその日本橋の飲食店でアルバイトをしているミャンマー人のレイだ。

いわゆる「失踪した技能実習生」の一人であるレイだが、日本橋のお店で働いてもう4年になるという。

「日本で暮らしていてとっても幸せ。このお店の人はみーんないい人で、冗談とか言いあいながらここで働くのがすっごく楽しい。たまにミャンマーに帰れるならずっと日本で暮らしたい。」


聞けば技能実習生として来日したときは、広島の工場で仕事をしており、家賃等をひかれたあとの手取りは月13万円ほど。今は東京でミャンマー人の友だちとシェアしながらアパートを借り、日本橋のお店、スーパー、パン屋と3つのアルバイトをかけもちして、先月の収入は手取りで38万円になったという。

38万円・・・

額面の年収は500万円ほどになる。

日本で暮らしたくない、仕事がすっごくつまらない、と最近夜も眠れないほど悩む私には、考えさせられることがありすぎる。

大学を出て、必死に勉強して、他人に言えば、「すごいですね。」と言われるような仕事についたが、自分の仕事に全く魅力を感じられず、給料をもらうためだけに働いているような毎日。

その給料っていうのがボーナスを入れても、ミャンマー人の中卒の子が日本でアルバイトして稼ぐよりも少ない・・・

いや、レイは土日も休みなく頑張って働いてるし、決して日本語がうまいわけでもないのに、どこに行っても誰からも愛されるとても性格が良い子なのはわかってる。

私の仕事は初任給激安だったけど、続けて行けば能力あるなしに関わらず昇給して行って、中年になったときにはそれなりの給料がもらえるというのもわかってる。

でも仕事ってなんなんだろう。

就職するのにすっごい努力して、努力して、やりがいのない仕事を8年続けてもらえる給料ってアルバイトで稼げる給料より少ない。

そして、コロナ禍で仕事がない、収入がない、と困窮している人の話が巷であふれているのに、日本に働きにきている外国人はしっかり稼いでますよ。仕事ないわけないよね。

技能実習生が失踪し、そのまま難民申請をし続ければ暮らせる日本の制度も疑問。安い労働力としてあえて労働を許可してるなら、失踪から労働力にするんじゃなくて、もっとちゃんと受け入れるべき。

銀座周辺の飲食店の従業員は外国人ばかり。彼らがいないと飲食店自体が成り立たない状況だと思う。

難民申請をして暮らしているレイは、一度ミャンマーに帰れば日本にまた戻ってくるのは難しいという。

「次にビザが切れたときは延長できるかわからない。だから今しっかり働いてお金を貯めなくちゃ。」

単純労働の労働力は受け入れないという政府の方針にも関わらず、技能実習生というのは結局単純労働者と化しているし、そこから失踪した外国人も単純労働者だ。

近年、アルバイト目的で日本に来る「留学生」の査証審査も厳しくなっているという。

じゃあ何がしたいの、日本。

単純労働者は受けれない、でも単純労働者は必要。

だから「最低賃金で雇える労働力」というフレコミで最低なブローカーがアジアの労働者を集めて、地方の最低な会社に入れる。

最低な会社というのは賃金だけじゃなくて、外国人に対して本当にしょうもないイジメや差別をするような会社。

そしてアジアの労働者もそんなにバカじゃないから、より良い労働環境、賃金の場所を探して流れていく。

しかも合法で働ける。

そしてその流れてきた人を受け入れたい東京の飲食店はたくさんあって、温かく迎えられていく。

そして日本人はそういう人が働いて成り立っている飲食店で飲食をする。

そして仕事がない、とぼやく。

働くってなんなんだろう。



ってのは私の頭のなかでモヤモヤしたことで、実際はそんな話ばかりじゃなくてもっと恋愛の話とかをした。

レイがミャンマーに帰ってこなさ過ぎてミャンマーにいた彼氏とは終わってしまったらしい。

レイのお店の人たちは、クリスマスの夜にレイが彼氏を連れてくるんじゃないかって期待してたみたい。なんか、すいません、彼氏じゃなくてこんなん来てすみません。

でもお店の人たちがレイと接する様子、私にまで良くしてくださる様子を見て、本当にレイはここでいい人達と働いているんだなーと思って、嬉しかったし、うらやましい気持ちすらした。

レイは、レイが日本に来る前にミャンマーで会ったときから際立って感じの良い子で、ミャンマー語もあまりできない私を長距離バスに乗ってそこからさらにバイクで移動するような遠い遠い田舎の実家にも呼んでくれた。

そのときは恋愛の話ばっかりしているような普通の女の子だったけど、可愛らしさはそのままで、こんなにたくましく生きているレイに驚いた。


お店を出て「さむーい」と言いながらレイが腕を組んできた。

「日本人は友だちと腕組んだりしないんだよねー」と言うレイ。「そんなん別にいいよー」って言いながら、すぐ近くの地下鉄の駅まで2人で歩いた時間はとっても幸せな時間だった。


来月また会う約束をして駅でレイと別れた。



【番外編~ミャンマー人と仕事~】

働かざる者食うべからず。
日本では学校を卒業したら就職するというのがあまりにも当たり前のプロセスになっている。

しかし、6年前に初めて訪れたミャンマーには働いていない大人がたくさんいた。

家族や親戚の誰かに収入があって、それで日々の暮らしには困らないという生活。スマホも持ってて時には友達と飲んだり、遊んだりして、一向に困った様子はない。(そういうときはお金を持っている友だちがおごってくれる。)

困った様子がないというのは経済的な側面もそうだが、精神的な側面もそうである。家では肩身の狭い思いをしているとは言うものの、じゃあ働くか、とはならないみたいだ。

軍事政権下、長期間雇用が不足していたことも影響しているのかもしれない。働いても日本円にして月に1万円そこそこしか稼げないなら、働かない方がマシらしい。

人間働かなきゃいけない、というのは世界共通の価値観では無いようだ。

#はたらくってなんだろう

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