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煙に巻かれる 3

好きになったきっかけはよく分からないが

1つだけ絶対的な『理由』はある。

私は年上への憧れを捨て切れなかったのだ。


私は当時、年上の方と半年ほどお付き合いをしていた。会える時間も少なく、連絡もどんどん遅くなり、自然消滅。(詳しくは別記事を参照)
まあこんなに年離れた人を好きになる人なんてロクでもないんだよなあ、と思いつつ、
一度味わってしまったものを、人は簡単には捨てられない。

同級生にはない大人の余裕や、包容力、そういったものへの憧れを捨てきれない、
私も大概『年頃の女の子』だったのだ。


そうして私は、性懲りも無く年上の人に恋心を抱いてしまった。


だが今回は違う。

先生には絶対手を出させない。


私としては先生に手を出してもらえるなんて本望だが(おい)、『年上の魅力』とともに『教師と付き合うリスク』をよく知っている。

そんなリスクを負ってまで付き合いたいなんて贅沢は言えない。


私は絶対に先生には手を出させない。
『仲のいい生徒』なだけで充分だ。

恋心を自覚した瞬間、失恋を覚悟した。


こんな風に書くと、とても苦しい恋のようだが、実際は楽しかった。

というより楽しむようにしていた、が正解だ。


私は自分でも思うほど顔や仕草に出やすい。

犬のようにぶんぶんと振る尻尾が見えるわけじゃないのに、
友達に好きなひとを打ち明ける時は『△△くんでしょ」と当てられるのがお決まりだった。

隠したとしてもバレるし、変に茶化されて先生に気を遣われるのは嫌だ。結局迷惑がかかってしまう。

そうして考案したのが

『え?推しだけど??』作戦。

これなら好きだのなんだの言われても「え?先生は推しだよ?」と返せるのである。
幸い、高校ではいじられ愛され(?)キャラで通っていたので、
この作戦は面白いほど上手く行った。

「〇〇〜!Y先生こっちいるよ〜!」

「〇〇!Y先生の修学旅行の写真あるよ!
送ってあげるね」

「さっきY先生と会って〇〇のこと話したんだけど、『あいつはいいやつだった』って言ってたよ笑」

友達やら先輩やら、時には別の先生まで話を聞いてくれたり、色んな情報をくれた。
そのおかげで、思っていた以上に楽しく生活が続いた。

バレンタインのお菓子を渡すのもこの理由で難なく渡せたし、イベントごとに写真を撮ることもできた。内心はドキドキだったけれど。

反面、苦しくなる瞬間はあった。


Y先生は元々モテる人だ。

私とは違って素直に愛情表現している子たちは、私から見ても可愛かった。
それに少し顔を赤くして対応してる先生を見て、つい目を逸らしてしまう。

七夕の日、生徒会が用意した笹の葉に『Y先生と結婚できますように♡』と書いた短冊を見つけてしまった時も、私は目を逸らした。

え、あの短冊〇〇が書いたやつじゃないの?って聞かれた時は心がギュッとした。

「ええ違うよ〜。私は推しを懲戒免職にすることはできんよ〜」

私が1番書きたくて、それでも我慢したことを平気でやってのける子がいる。
やり場のない怒りや、嫉妬、悔しさでぐちゃぐちゃになりながら冗談ぽく返した。


しかし、これが私の選んだ道だ。捻くれたってしょうがない。
私は勉強や部活に力を入れた。
誰かが言っていた、キャリアは突然自分を裏切ったりしないという言葉を心に秘め、3年生には部活では副部長に、志望校の特待生にもなった。


私の思惑通り、Y先生とは何も起こらず卒業した。

卒業後に在校生への講演会があって、それに呼ばれてY先生と話すことがあっても、連絡先を聞くことはしなかった。
繋がりができてしまったら、私からアクションを仕掛けてしまう。ぎりぎりまで迷った末の結果だった。


専門学校に入学した私は、それなりに恋をしたり、恋人ができることもあった。

それでもY先生のことを何かの拍子で思い出してしまう。

高校時代の話をした時、Y先生が好きだと言ってたお菓子を見つけた時、写真フォルダの中、記憶の端々でY先生を思い出してしまう。

こんなとこにいるはずもないのに、ってか。


私はこの先もあの人をずっと憧れ続けるんだと思った。


専門学校を卒業し、私は社会人になった。


つづく

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