学校のマリオネット

小学生の頃、学校の屋上にある給水タンクに想いを馳せていたワシ。

教室の窓から給水タンクをときどき眺めながら授業を受けていたワシ。

あれは給水タンク、、あれにはたっぷり水が詰まっておるのかいな?

したらば、あれにぷつっと大きな穴を開けたらば、水が屋上へ、屋上から校舎全体へとドクドクドクドク溢れ出していくのかしらんと想像しておったワシぃ。

だがよ、それを実行に移すことなんざありゃせんでした。

なぜならわかっていたから。

ワシにはアレに穴を開ける力がないこと。

高々小学生のパゥワーでは、あの大きなタンクにぶちかましてやるこたぁ敵わんですけ。

屋上に出ることが禁止されていなかった頃、ちょくちょく屋上に出て休み時間を過ごしたが、その時見たのだ。

近づいて見れば、奴は予想以上に大きく感じ、見上げるワシを嘲笑うておった。

ワシは萎縮しその場から動けぬだったよ。

それどころかとてつもなぁい恐怖を感じ、ワシの給水タンクの方が決壊させられてしまいました。

完全な敗北。

ワシはそのとき、

「うわぁ!ぼくのタンクが!!」

と叫んだものですから、それからアダ名が「お漏らしタンクマン」になり、省略されて「お漏らし」に相成りいたしました。

そんな因縁も、ワシとあの給水タンクにはあるんです。

月日は流れ申して、今や肉体は大人のそれ。

あのタンクに、勝てる。

ワシは思い立ったが吉日と、ホームセンターの農具コーナーで、大きなトンカチを購入。

それを抱えて学校へいざ向かうと、途中でお巡りさんに話しかけられました。

「ちょっといいです?それ持って何しにどこへ?」

「ワシ、スーペルマリオネットだもんで。人さらいのクッパァ大魔王から市民守ろう、守ったろう、そういうもんですもんで。」

「でもそんなもの持って街歩いてたらあなたね?皆さん怖がってしまいますからやめてくださるか?」

「おお!そりゃいかんね!謙虚にいかねば謙虚にいかねば。こんなもん持って胸張って歩きようもんなら、みんな怖がってだめだよね。人混みをすみませんすみませんと通り過ぎるように、縮こまって行きますわい。」

「おー、その辺ちゃんと気をつけてよねー。」

そんなこんながありまして、ワシは小学校のタンクへと向かいました。

学校へつき、校舎を上っていくと、生徒に見つかってやいのやいの言われました。

「うわー、不審者!なにやってんの?ねーねー!」

「ワシはスーペルマリオネットだもんで。好きだろう?赤帽の親父のことがよ。」

「えっ!マリオか!みんな!マリオ!マリオだって!」

「そうそう、マリオマリオ。マリオは屋上に用があるんだのよ。そうそう、屋上は、どちらかな?」

「えっとね!えっとね!屋上はね!渡り廊下を渡ってから階段を登るんだよ!頑張れー!」

「そうかそうか、君はいい子だね。渡り廊下を渡って階段ね、よしよし。」

「あっマリオ!でもね!」

「ん?なんだガキよ?」

「屋上はね、危ないから行っちゃダメっていう決まりになってるんだよー!」

屈した。

ワシは膝から崩れ落ち、その場でワンワン泣いた。

さっきのガッキがワッシの背中をさする。

情けないったらありゃしねえ。

大人になってようやく力つけた思ったら、辿り着くこともできず、こどもに慰められるだなんてよ。

しばらく泣いた。

涙も枯れた頃、ワシはまたトンケチを背負ってとぼとぼと家路に着いた。

その時、スマートホォンがピロリと鳴った。

見ると、小学校の同級生からメッセージが来ていた。

「うっす!久しぶり笑 今小学校の頃の友達で飲んでんだけど、お漏らしも10分くらいでいいから来てくんねえ?笑 皆がお前いじりたくて仕方ねーんだとよ笑」

ワシはワンワン泣いた。

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ワシのことを超一流であり続けさせてくださる読者の皆様に、いつも心からありがとうと言いたいです。