『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』演出と主題歌『Gradation』とのシンクロニシティ

『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』を観て、演出面で心に留まった点と、主題歌であるJO1の『Gradation』との親和性について書いていこうと思います。


①黄色の現れるタイミング


この映画の所々に、黄色のものが登場するシーンが度々あります。少し挙げると、
①茜の使うバス停の椅子やその奥の店舗
②茜がうずくまる公園の滑り台
③遊園地で2人で水筒の飲み物を飲むシーン
④メリーゴーランドを歩いていて、立ち止まった瞬   間に二人の間にある車(ある日ね、の前)


なんで黄色なんだろう……?と疑問に思って考えてみたものの、特に確信に近づく結果は出ませんでした。

でも、色相環で考えると、茜色を赤、青磁色を青(もしくは緑)と仮定した場合、
そのふたつの色の間にあるのは紫(もしくは青紫)になります。
そして、その紫(青紫)の補色にあたる色が、黄色です。

このことから、茜と青磁が心を通わせる、茜色と青磁色が混ざり合うシーンに、黄色は多く登場しているのでは?という結論に至りました。
さすがに無理矢理すぎますね。


②2人の制服

途中で気づいたのですが、この2人の制服にも、色の変化がありました。


最初の屋上のシーン(どうだ、世界は広いだろ!)では、
茜はグレーのセーター、グレーのスカート、黒のストッキングで、
青磁はグレーのシャツ、黒のネクタイ、グレーのつなぎです。
しかし、青磁が屋上で茜に見られながら絵を描くシーンでは、茜は紺色のブレザー、青磁は紺色の半袖パーカーを足しています。

グレーは「無彩色」、そこに色が加わったということになります。

『無彩色の世界 この景色が 今色づいていく』

主題歌JO1の『Gradation』と完全にリンクします。




主題歌『Gradation』の歌詞




私は映画より先に曲を知ったので、曲のみを知っている段階での感想は、この曲は
「茜目線で、青磁によって自分の世界が変えられた」ことを歌ったものだというイメージが強かったです。

しかし、映画を見たあと聞くと、前述のように捉えられると同時に、
「青磁目線で、茜によって自分の世界が変えられた」ことを歌ったものだとも捉えることができます。

些細な思い出を抱えて君の笑顔を探していたのは青磁だし、
青磁によって無彩色の世界が色づけられたのは茜だし、
苦しい心を騙して素直になれず、1人で灰色の世界に閉じ込められていたのは2人ともです。

あの曲は、2人のための曲なのだと、改めて実感しました。


思わず唸った演出


意図的はどうかは分かりませんが、

留学のことを知ったあと、茜が屋上へ向かい、青磁に問うシーンで、
『青磁って、描くの好きでしょ』の部分では、青磁と茜の間に、柱の壁があり、縦に1本線が入った状態になります。
そして、茜が移動し、青磁の『お前、何が言いたいんだ』からは、二人の間の足元にパイプがあり、横に1本線が入った状態になります。

茜が青磁に言い寄るも、青磁は『勝手に歩み寄るな』と茜を突き放します。
茜は入って行けない、青磁の心の中。
青磁が茜に張った規制線が、心の隔たりが、しっかりと視覚的に表現されていました。
映画ではよくある手法ではありますが、ここはあまりにも顕著で、なんだか「おぉ……」と感動してしまいました。





とにかく気づいたことを殴り書きした雑な文ではありましたが、何が言いたいかというと
とにかく制作陣のこだわりを感じた、繊細な作品だったということです。
この映画に出会えてよかった。

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