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セブ島で出会ったオーガニックな時間

「セブで無添加系の化粧水は買えますか?」

セブの語学学校のインターンシップに申し込んだ時、面接の一番最後で、面接官の男性マネージャーから「他に何か聞きたいことはありますか?どんな質問でもいいですよ。」と聞かれた時に私が聞いた質問だ。

私は肌が弱くアレルギー体質なところがあり、日本にいるときは15年くらい手湿疹に悩まされていた。皮膚科に通ったり、煎じて飲むタイプの漢方を飲んだり、ドイツからデトックスティーを取り寄せたり、ありとあらゆる方法でこの手湿疹に対処してきた。そのため、使う化粧品やシャンプー、洗剤などは全て無添加やオーガニック製品だった。

セブ移住を決心したものの、唯一心配だったことは、セブで無添加化粧品が手に入るのか、だった。

面接官の男性マネージャーは返答に困り、近くにいた女性マネージャーに聞いていた。そして「セブのスーパーでも日本製の化粧品は売っていますよ。」と答えてくれた。「日本製」と聞いて少し安心は感じたものの、やはりそれだけでは不安は拭えない。とりあえず、インターンシップ期間中の半年は困らないように、その当時使っていた無添加の化粧水を買い溜めしてスーツケースに入れた。それで私はその時点での安心を得たのだ。

セブ島に到着し、初めて語学学校に足を踏み入れると、玄関入ってすぐにとてもキレイでおしゃれなカフェ(食堂)があった。新しい環境に少し緊張を感じながらカフェの中をゆっくり見回していると、ライトアップされたショーケースが目に入った。

私は引き寄せられるようにそのショーケースに近づき、中に置かれている物を見て目を見張った。そこには、フィリピンのオーガニックブランドHuman Natureの製品がずらっと並んでいた。ボディオイル、石鹸、リップクリーム、そしてもちろん化粧水も。女子ウケするかわいいパッケージデザインで、いかにもオーガニック製品というオーラが出ていた。

セブ移住における一番の不安が、セブに到着したその日に吹っ飛んでしまった。しかもスーパーに行かなくても、学校内で買うことができる。心は踊った。安心した。そしてあのかわいいパッケージの化粧品たちがどんな使用感なのか、楽しみでワクワクした。

このHuman Natureとの出会いがきっかけで、セブで「オーガニック」と名のつくものを探し求めた。オーガニックレストラン、オーガニックショップ、オーガニック食品、オーガニックアロマオイル、オーガニックに特化したホテル、などなど。一つ見つけてはテンションが上がり、大喜びしていた。

ラッキーなことに、同期のインターン生に私と同じくオーガニック大好きな女性がいて、彼女と情報シェアしたり気持ちを共有したりと、自分だけの楽しみが、それを共感できる人にシェアすることで嬉しさが倍増するのだ。

そんな「オーガニック」に目がない私が、先日とびきりの体験をした。

2週間に一度の完全オフ日。3日前から行きたいショッピングモールは決めていた。そのモールの館内図をネットで見ては、どのお店に行きたいのか自分の内側を探っていた。なぜなら、そのモールはセブ島で一番大きい上、私は行き慣れていないため、どこに何があるのかあまり知らなかった。せっかくのオフ日。私のWantを無駄なく満喫したい思いで胸はいっぱいだった。

オフ日の朝になっても、どのカフェでブランチをするのか迷っていた。そして最終的には、グランドフロアーにあるSeattle's Best Coffeeという、ずっと気になっていたけど行ったことがなかったカフェに行くことに決めた。館内マップでは一番分かりやすいところにあった。

タクシーの運転手にも、そのカフェが近いエントランスで降ろして欲しいと伝えた。私はSeattle's Best Coffeeに真っ直ぐに焦点を定めていた。

ところが実際は、タクシー運転手は私が依頼したエントランスがどこかなのか分からず、別のエントランスで降りることになった。それでも次の手段を使い、写メしたマップを見ながら目的のカフェを探した。

私は地図に対してそんなに弱い方ではないので、館内マップがあれば行きたいところに行けるはずなのに、今回はダメだった。ここをずっと行けばカーブがあって、とマップで見るけれど、私の目の前には壁が立ちはだかり、これ以上前に進めなかった。

どうしようもなく、近くのエスカレーターで一つ上の階に上がった。エスカレーターが真ん中まで上った時に、私の目に飛び込んできたのは「蜂」のキャラクターがついた丸い看板。

どこかで見たことがある。。。

残り半分をエスカレーターが上がっている間に、頭の中でその蜂のキャラクターが何だったかを思い巡らした。

「オーガニックカフェ!!」と思い出した。

オーガニックアイスクリームが有名で、自家製の蜂蜜も人気のThe Buzzz Cafeだった。まさかこのカフェがこのモールに入っているなんて。。。

エスカレーターが上まで私を運んでくれた時には、私の足はこのカフェに向かっていた。ショッピングモールのきらきらした館内の中で、ウッド調の店内は独特の世界観を出していた。オーガニックに特化しているオーラが出ているのだ。

平日の上に、開店したばかりの時間帯のため客は一組だけ。それも私にとっては安心を感じる要素の一つだった。それでも、思いがけず出会ったオーガニックカフェにワクワクしつつ、初めて入る空間に少しだけ緊張も感じていた。

自家製ハムとオーガニック野菜のサンドイッチ、そして大好きなカフェラテをオーダー。メニューをじっくり見てオーガニックの世界を感じたかったので、ウエイターにお願いして、メニューはテーブルに置いたままにしてもらった。そしてメニューを食い入るように見た。あの有名なオーガニックハロハロ("ウベ"というセブの紫芋を使ったアイスクリームのパフェ&かき氷)もあった。テンションは上がる。

サンドイッチとカフェラテが私のところに運ばれ、そしてなんと、フォークとナイフが、お店の雰囲気にちゃんとマッチしたクロスに包まれ、クロス留めまでついて、私の目の前に置かれたのだ。このおもてなしには驚いた。高級ホテルや高級レストランは別として、セブのカフェでは滅多にないことだからだ。

まずはサンドイッチの横に添えてあった、ハニーマスタードソースがかかっているチップスを食べた。

「おいしい〜!!」

味わったことのないソース。少し甘めだけど濃厚で自家製だなというのが分かる。そしてサンドイッチをフォークとナイフで食べやすい大きさに切り、頬張る。

「おいしい。。。何ておいしいんだろう。。。」

パンの中のキャベツ、人参、きゅうりの千切りにあのハニーマスタードソースが混ぜてあり、ハムとの相性がバッチリ。そしてハムは自家製のもの。臭みがなく、肉系が得意でない私でもおいしく食べられた。パンも含め全てオーガニック食材。一気に私の体が健康になっていくような気分になった。

その次はカフェラテ。ラテアートが施されていて、カップも私の手のひらにハマるちょうどいいサイズ。飲んでみると、想像していたよりもミルクが多めですごくマイルドな味。温度がちょうど良く、心も体もジワ〜っとあったまっていくのを感じた。

「おいしい〜。。。」

温かいものを体に取り入れた時の、あの幸せ感は半端ない。温かい味噌汁やホットレモン、温タオルを首に当ててもらったり、温泉に浸かった時もそう。温かいものはとろけるような幸せ感をくれる。

カフェにいる間中、私は心の中で「おいしい〜しあわせ〜」を連呼していた。完全オフ日のスタートがこんなにもサプライズで幸せだったため、この後も次々に私は自分のWantに出会っていった。私が何に心惹かれるのかアンテナを張りながら焦点を定め、瞬間的にピンときたものだけに手を伸ばし購入した。

最高のオフ日だった。


寝る前ヨガと瞑想をしながら一日を振り返り、私が感じた気持ちや感覚をもう一度味わった。そして今の自分をありのまま受け止め、ハグをしベッドに入った。

意図せずに最高のカフェで最高の時間を過ごせたことは、日々の営みが引き寄せたご褒美だったのだろう。

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