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ふるさとワーキングホリデー@奈良県川上村

こんにちは!鈴木梨里です。
早いもので、学生最後の夏休みも2ヶ月目に突入しております。
今回は自分が8月10日から17日まで1週間体験した、ふるさとワーキングホリデーについて綴ってみました。

はじめに

就職活動を終え、学生最後の夏休みをどう過ごそうか迷っていた時に友人に紹介され、飛び込んでみたふるさとワーキングホリデー。そこには自分の想像をはるかに超えた出会いがたくさんあったので、今回はふるさとワーキングホリデーの概要から現地での生活、そして1週間という短くて濃い日々を通じて感じたことを書き留めたいと思います。ふるさとワーキングホリデーに興味がある方や旅がしたいな〜と思っている方にぜひ読んでいただきたい内容です。

ふるさとワーキングホリデーについて

ふるさとワーキングホリデーとは、

都市に暮らす若い人たちが、一定の期間、地域に滞在し、働きながら、地域の人たちとの交流の場や学びの場などを通して、通常の旅行では味わえない、地方をまるごと体感してもらい、地域とのかかわりを深めてもらおうというもの

総務省 ふるさとワーキングホリデーポータルサイト

です。都市部の若者が抱く「地域づくりへの参加がしたい」「地域との交流を深めたい」といった社会・地域貢献への想いや、移住などを考える社会人の想いと、地域の人々の「地域の魅力を伝えたい」「交流人口を増やして地域経済を活性化したい」「多くの人に定住してほしい」というふたつの想いを結ぶ制度として注目を浴びています。

バケーションステイとは異なり、お金を稼ぎながら1週間から2週間という期間一つの地域に滞在し、現地の衣食住を経験しながら地域の方々と深く繋がれるところに大きな魅力があります。

奈良県川上村って?

自分の知らないところに行ってみたいと思い、ワーホリ生の募集人数が5名と多くたくさんの学生と交流できそうだと感じて選んだのが奈良県の川上村でした。

奈良県川上村の地図

川上村は奈良県南東部に位置する村で、吉野杉等を育てる吉野林業の中心地です。昭和40年には7000を超えた人口も現在は1500名程度、そして19歳未満の若者は85名と、過疎が進んだ地域です。「水源地の村」として知られ、村内には大迫ダムと大滝ダムの2つのダムがあります。源流の役割を果たしながら豊かな暮らしを築くべく、1996年に全国に向けて川上宣言を発信し、早くから自然と人が共生するための取り組みに力を入れてきました。

滞在中の日々

滞在場所

おおずみ舎
奈良県川上村の中奥川周辺で活動する、一般社団法人おおずみ舎が運営する住宅に住まわせてもらいました。窓を開けると目の前に清流があり、1日中川のせせらぎが聞こえる、なんとも趣のある場所でした。この家は、普段は移住体験住宅として川上村への移住を検討している方に貸し出しており、お試し移住で村に来られた方に現地の生活を体験してもらったり、村を案内するツアーを行ったりと、新しく来た方と村の住民を繋げる役割を果たしています。

おおずみ舎の窓から見える景色

勤務先

・TOCOTOCOの森
ふるさとワーキングホリデーは4日間働き3日間観光するというスケジュールで、私の勤務先は今年の8月8日にオープンしたばかりのカフェ、TOCOTOCOの森でした。驚いたのは、オープン祝いに村中から店内に飾りきれないほどの百合や蘭などの花が届いたこと。聞くと、TOCOTOCOの森は土木会社を運営し村の道路や橋を作った方の奥さまがオープンしたカフェであったため、村中の人がこれまでの感謝を込めて贈り物をしてくれたそう。
業務内容としては接客や配膳だけでなく、調理や新メニューの考案、それから試食という名のおやつタイムやオーナーのお孫さんと遊ぶことなど、多岐に渡りました。朝の9時から働き始め夕方の4時には終わるので、勤務時間後は従業員の方々と談笑したり他のワーホリ生と車で観光しに行ったりと、とても自由な環境で楽しく働くことができました。

店内の様子

ダムについて

奈良県川上村には大迫ダムと大滝ダムという二つのダムが、共に伊勢湾台風で大きな被害をもたらした紀の川の治水と、奈良市や和歌山市などへの利水、および出力1万500キロワットの水力発電を目的として作られました。ダム建設に伴って151世帯が水没することとなり、激しい反対闘争が長期間に渡って展開されたり、完成直前に貯水池斜面が地すべりを起こしたりしたことで、完成までに実に50年の歳月を費やしました。

大迫ダム

人にも環境にも大きな影響を与えたダムの存在について、村長や村の住民に話を聞く機会があったので、少し共有させてください。

<村長の話>

ダムが造られたことを知った当時は、死刑宣告を受けた思いであった。自分が生まれ育ち、そして頭として守り育てていくと決意した村が国の政策によって壊されてしまう。どうすればいいかわからなかった。抵抗しても無駄であることはすぐに分かったし、受け入れる他道はなかった。しかし、時間はかかったけれども、今はダムが二つも村にあることを逆手にとり、「水源地の村」として誇りを持っている。だからこそ川上宣言というものを出し村としての想いと決意を表明したり、一人でも多くの人にその自然を体感してもらうためにこのプラグラムを含め多くの人に村に来てもらう工夫をしている。

<住民の話>

昔は河原にあぜがたくさん生えていて、蛍がたくさん見えたものだった。しかしダムができたことで水の流れは止まり、砂利がなくなり、あぜは生えなくなって蛍も姿を消してしまった。川で取れるあゆの数や大きさも随分と小さくなってしまった。水は、流れを止めたら死ぬ。自然の水瓶と人工の水瓶は、思った以上に違うものだった。

彼ら彼女らの話を聞き、私は自分の地元について深く考えさせられました。もし、自分の地元である東京の杉並が、政府の意向によって大きく姿を変えることになったら。
自分は悲しむだろうか?居ても立っても居られないほど怒りが湧き、抵抗運動を起こすだろうか?

正直、自信はありません。
川上村の住民にとって、そこには確かな「守るべきもの」があったのでしょう。自然、景観、空気、人と人との繋がり。それら全てが唯一無二の、かけがえのないものだったからこそ、彼らはそれを守ろうとしたのでしょう。
日本国内どこへ行っても、駅前にはスーパーがありコンビニがあり薬局があり同じような形のマンションが立ち並び、大きな違いはありません。
便利に整えられた同質な街づくりが進むことによって、私たちは地域の「守るべきもの」を見失ってしまったのかもしれない。
そんなことを考えさられました。

感じたこと

時間の流れ方

仕事を終えたら、「今日何する?」から始まる時間。
川上村での生活で一番好きだったのは、そんなゆったりとした時間の過ごし方です。大体のお店が4時には終わるので、勤務日であっても夕方の時間の使い方は自由。すぐに帰って家族との時間を大切にする人もいれば、残って談笑を楽しむ人もいれば、ドライブに出かける人もいます。前もって決められた予定に合わせたり、無理やり満員電車に乗ることはなく、今の自分の気持ちに合わせて、その場で時間の過ごし方を決める。生活のリズムを自ら作り出す快感や心地よさは、東京ではなかなか味わえないものでした。

子育てについて

私たちの受け入れを担当してくださったご夫婦のお子さんは川上村で第一子を授かったそうなのですが、その子は村で25年ぶりに生まれた赤ちゃんだったので村中の人から喜ばれ、普段あまり関わりのないおばあちゃんもわざわざ杖をついてご自宅までお祝いの品を持って訪ねてきてくれたそうです。
村で生活している時には、このエピソードのような、子供に対する大人たちの温かい関わりにたくさん触れることができました。子供達に対して「村の子」という言葉が使われ、自分の子供ではないけれど知り合いの子を家で預かったり面倒を見たり。もちろん、特別扱いはせず、悪いことをしたらちゃんと怒り、いいことをしたらちゃんと褒める。当たり前のはずだけれど、ご近所さんのお子さんの名前も知らなかった自分にとっては、その関わり方はすごく新鮮で、自分が子育てに対して抱いていた夫婦二人きりで子育てというかけがえなくも大変な試練に臨むというイメージが大きく変わったのを感じました。

最後に

村にいても都会にいても、やることはそんなに変わらない。
朝起きて、歯を磨いて、ごはんを作り、食べて、片づけをして、
仕事をして、お風呂に入って、部屋の掃除をして、寝る、の繰り返し。
でも、環境が変わることで違ってくるものはなんだろう。
朝起きた時に目に入る景色をみて日々の違いに気づいたり、とれた野菜でみんなでご飯を食べたり、いろんな思いを担いだかっこいい大人たちに出会ったり、1日頑張った後に入ったお風呂の水が柔らかかったり。
同じ生活でも取り巻く環境を変えるとどんな発見があるだろうか。
2週間この村で、暮らし・働き・遊んで、
心動かされることやものを感じてみませんか?

これは、川上村ふるさとワーキングホリデーのボディコピーです。
この言葉に私は何かを感じ、今回川上村のふるさとワーキングホリデーに応募しました。

私が最も心を動かされたこと。
それは誰かのふつうは誰かの特別なのだということです。
自分が引け目に感じていた、東京以外住んだことがなく日本を知らないことは、村の人から見たら「すごいこと」だし、村の人が当たり前だと思っている風景や人と人との深いつながりは私にとって「憧れ」の対象。そこに優劣はなく、豊かな違いがありました。

是非みなさんも、自分の日常を抜け出した先に広がる「誰かの日常」を体験しに、日本全国のふるさとに出かけてみてください!


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