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【シンガポール国立大学留学②】  ー内省編ー

2022年の1月よりシンガポール国立大学(NUS)に派遣交換留学に来ている鈴木梨里(りり)です!
1月から 5月までの派遣交換留学生活を、1ヶ月に一回の頻度でnoteに書き記していこうという試みをしております。
1ヶ月分の日々を1つの記事にぎゅっと詰め込むととても長くなってしまいそうなので、異国の地で何をみて何を経験したかを綴る「出来事」パートと、その日々の中で自分自身が思考したことを書き連ねる「内省」パートの2つに分けて書いています。今回は2月の「内省」編です。

National Service(NS)

シンガポールでは16歳以上のシンガポール国民、及び永住権を持っている男性に対して1年10ヶ月もしくは2年の兵役(NS)の義務が課されます。私が話を聞いた友達は主に建物の警備、警察犬の世話、トレーニング、デスクワーク(エクセルに経費を打ち込む)の業務を担っていたと教えてくれました。中でも警備の仕事は午前2時から6時が勤務時間にあたるため、1時間半の仮眠を1日に3回繰り返すというタフな生活を送っていたそうです。

シンガポールのNSはイスラエルやノルウェーなどの国家とは異なり男性だけが対象となるため多くの場合同じ学年にいるシンガポール人の男性は女性より2歳年上になり、この年齢差はふとした瞬間に意識させられます。男女で課される義務が違うことに関してどのように思うのかそれぞれに聞いてみると

<男性>
・武器を持つのは男性だから、兵役を男性のみがこなすのは筋が通っている
・戦うことのみが国防ではない。自分の任務の中でも、実際に武器を扱ったり身体を鍛えるものは3割程度であった。ノルウェーの例を見習って男女両方に兵役を課すべきだ

<女性>
・友達から兵役の時の経験談を聞いて自分がやりたいとは全く思わない。
・個人的には、入学した時点で男性の方が2歳年上の構造や、それによって生まれる「あなたはまだ若いから」「あなたは兵役を経験しないから」という扱いがなくなるのであれば私は2年間の義務を引き受ける。

と様々な角度からそれぞれの考えを話してくれました。
一般の意見がどうなっているのか気になったため文献を見てみると、

女性が国防に貢献すべきかどうかという問題については男女ともに同じように支持しており(80%)、女性がボランティアとして国防に貢献するにはどうしたらよいかという質問に対しては2年間のフルタイム国家公務員のオプションを推奨している人が4分の1以下であるのに対し、より短い兵役を支持する人は半数以上である。一方2年間の兵役の義務が現実的な選択肢であることに同意する女性のうち、自ら進んでその選択肢を取ろうとする人は10%未満という数字になっている。

Singaporeans’ Attitudes to National Service

ということです。
確かに私が話を聞いた中でもNSそのものに反対する学生はいませんでした。

しかしNSの話題からジェンダーギャップの話に展開するとは予想していなかったので、非常に興味深かったです。このテーマは今後是非深めてみたいと思います。

教育制度

「シンガポールにおける熾烈な競争を勝ち抜いてNUSに進学したシンガポールにおけるトップ大学生は自国の教育制度についてどう思うのか。」

これは留学に来る前から私の中にあった、是非とも現地で探求したい問いでした。

シンガポールの公教育は国際的に非常に高く評価されており2015年に15歳を対象に行われた学習到達度調査(PISA)では、科学的リテラシー、読解力、数学的リテラシーの三分野で世界第一位を獲得しました。(日本は科学的リテラシー2位、読解力8位、数学的リテラシー5位)

そんなシンガポールの教育制度についてわかりやすく説明している図があったのでお借りします。

出典:https://spring-js.com/singapore/7261/

この表からもわかる通り、シンガポールの教育制度は日本の制度よりもずっと複雑で、その分多くのセレクションの機会があることがわかります。シンガポールにおいて国立大学に入学することはその後の社会人人生に大きな影響を及ぼすと考えられており(就職率や初任給において大きな差)多くの親が教育に力を入れています。一方でその競争の熾烈さから若年層の自殺率の高さが社会問題となり(https://www.straitstimes.com/singapore/record-19-teenage-boys-committed-suicide-last-year)  教育省は2019年に教育制度の変革を発表するなど、シンガポールにおいて「教育」は非常によく議論されるテーマとなっています。

冒頭の問いに戻ると、「シンガポールにおける熾烈な競争を勝ち抜いてNUSに進学したシンガポールにおけるトップ大学生は自国の教育制度についてどう思うのか。」という質問に対する学生の反応はぱっくり二つに分かれます。

一方は、是非ともこの素晴らしい教育制度を受けさせて活躍できる人材になって欲しいというもの。
もう一方は、自国の教育の大きすぎるプレッシャーに子供を晒したくないから他国で受けさせたいというものです。
しかし一人の学生が、「シンガポールは小さな国で資源も人口も少ないからこそ、国民である私たちは世界最高レベルの教育を受ける権利と義務がある」と話してくれた時には、シンガポールに対する誇りや愛国心、そしてこの国を我々が担っていくのだという静かな覚悟を感じました。

私の口から出てきた日本の教育を表現する言葉は「集団教育」「一方通行」「無個性」とどれもマイナスの要素を持ったものばかりだったのでなんだか悲しいなと思っていると

「君が尖った人材を輩出しにくいと批判する日本の教育制度は君みたいな人間を形作ったじゃないか!国の制度を活用はしても、国の制度に食われたくはないよね。」

という言葉をかけられました。

なるほど。。
“完璧な”教育制度などこの世に存在しないからこそ、自国の教育制度は自分を磨くための一つの手段と見なし、素晴らしい部分はその恩恵に預かりながらも、至らない部分は自分でそれを埋めるために行動する。この留学だってその一部ではないかと思い直させられた言葉でした。

まとめ

書いていて思ったのは、問いを持って日々を過ごすことの大切さです。今回は「NUSに進学したトップ大学生は自国の教育制度についてどう思うのか。」という問いを持っていたことをきっかけに、ここで紹介したような学びや素敵な言葉に出会うことができました。なんとなく興味があることを言語化し、問いに落とし込んでみる。そうすると自分の中に明確なテーマを持つことができ、見える世界がより鮮やかになったり、友人の話す言葉が何倍も面白く聞こえたりします。3月もいい問いに出会えますように:)

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