湯気にのせて

今週もいつもと変わらない日が続いた。
変わったことといえば、気温がグッと下がってきたことだ。

テレビの天気予報に「先週まで20°とか余裕であったのに」と私がぶつぶつと文句を言っていると
旦那が「電気代もガス代も高くなる季節になるぞぉ」と言い変な踊りをしだした。
「あなたは冬嫌いなくせに楽しそうね」と言うと
「だってお風呂上がりの茹でダコみたいな君見れるの楽しみなんだもん」と

確かに私はお風呂という空間が好きで冬はよく長風呂をしてしまう。
湯船に浸かるとなぜだかウキウキする。
波打つ湯が私を歓迎しているようで、いや気持ちを汗とともに流していくようで。

「ただいまー!今日はカモミールの入浴剤でーす!」先程「疲れたぁ」と連絡してきた旦那はどこへやらと思いつつ、繁忙期の私の事を気遣って私の好きな香りの入浴剤を買ってきてくれる優しさに心が温まった。

晩御飯を食べて、お風呂の準備をする。
じゃばじゃばと飛沫を立て湯気がゆらゆらと揺れている。
「なんか湯気が旦那の変な踊りみたい」とつぶやく。

「お風呂が湧きました」その声に笑みがこぼれる。
数ヶ月前に我が家に導入された防水スピーカーと旦那が買ってきた入浴剤をもって浴室に行く。
入浴剤を湯に溶かすと辺りがカモミールの香りに包まれてまた笑みがこぼれる。

体を洗いスピーカーからお気に入りの曲を流す。
今日あったことを思い返しながら、汗を流す
45℃のお湯は肌を通り抜けて体の芯に温かさが伝わる。
「疲れたけど旦那のおかげでいい一日になったな」
湯気に感謝をのせ、疲れを排水溝に流し今日のバスタイムを終える。

お風呂を出ると旦那が入浴の準備をしていた。
「んーいい匂いだね。」と言ったあと、私の顔を見て笑った。
「やっぱり茹でダコみたいだ」
私はタコみたいに口をとがらせながらもこの男と結婚してよかったと、旦那の少し太ったお腹をつついて笑った。

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