春風

「ただいま~」とのんきに言いながらリビングの扉を開けると
そこには先日受けた検査結果の用紙と今にも泣きそうな顔をした彼氏が立っていた。

内心「しまった…」と思ったが、何食わぬ顔で今日の晩御飯はなにかと問う
彼は何も言わない。

「ごめんね、あなたと悲しい気持ちでお別れしたく無かったから」

私のその返答で”悪い夢”や”ドッキリ”という可能性が絶たれてしまい、私より顔色が悪くなっている。

「いつから?」
彼が寂しそうな声で聞いてきた
「2ヶ月前とか?検査したのは最近だけどね!」
「なんでそんな、何も無かったみたいに話せるの」
だってこういう”運命”だって受け止めるしかないから
そう言おうとしたけど私はやめた。
「ごめん、いちばん辛いのは君なのにこんな事いって」
「あなたが謝ることじゃないよ」

彼はとても優しいから、多分気付けなかった自分を責めるだろうと、伝えずに別れようと思ってたのに。

「別れよう。いつかはお別れする運命だったからさ、それが早まっただけだよ!」
「やっぱり、君の突拍子のない提案にはかなわないよ」
「これから少しの間旅に出てくるからさ、また会えたらね」
そう言うと、お互いポロポロと涙を流した。

運命ってのは残酷だ。
けどそれを受け止めて生きれる力を持ってるから、私たちは出会ったんだと思いたい。

私が遠くに行って3年、彼は毎年私のところに花束を置いていってくれる。
「こういう運命だったって、受け止められる日が来るのかな」
そう言って彼は春風にさらわれるみたいに私の墓をあとにした。

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眠れない夜に

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