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女子校教育の賜物とは何か◇その3◇

私には、親に褒められた記憶というものがほとんどありません。

成績は常に学年トップでしたが、親はそれを当たり前のようにさらりと流していたし、ややもすれば「勉強しかできない」と言われる始末でした。


さて、今回も「女子校教育の賜物とは何か」について書いていこうと思うのですが、今回は “心の教育・礼儀作法” についてのお話をしたいと思います。

前回、厳しい学力競争に晒されながらも、教室内はなぜかいつものほほんとしていた、と書きました。

そして、その原因のひとつに “カトリックの精神に基づく心の教育” があるのでは、というところまで書いていました。

では、その “カトリックの精神に基づく心の教育” とは具体的に何なのでしょうか。


カトリック校の特徴として、毎日のお祈りや聖歌、週1回の“宗教”という授業、折に触れて開かれるミサ等が挙げられますが、それにもまして重要なのは、女学院内で脈々と息づくカトリック的価値観でしょう。

6年間の女学院生活の中で、毎日のように繰り返し教わることがあります。

それは、

一人ひとりが、神様から愛されている、かけがえのない存在である
神様からの愛は、無条件かつ無償である
隣人を自分のように愛しなさい

などといったことです。


親に褒められた記憶がほとんどない人間にとって、“あなたはあなたのままで、十分にかけがえのない存在だ” と繰り返し言われ続けることが、どれほど新鮮で、かつ精神的な救いとなるかは、火を見るより明らかです。

特に、多感な時期である中学・高校時代に、このような絶対的愛情の中で過ごすことは、後の人生観にも影響を与え得る、極めて重要なことだと思います。

最近、自己肯定感という言葉をよく見聞きするようになりましたが、私の中に存在する、小さな自己肯定感は、女学院時代の教えに由来するものでしょう。

(とはいえ、幼い頃から家庭内で褒められて育った子には勝てません。たった6年という短い間で育つ自己肯定感は、風前の灯火程度です。子はできる限り褒めて育てたいものです……。)

“あなたはあなたのままで十分に価値がある” と認めてもらえる環境下にいると、次第に精神が安定し、心にゆとりが生まれます。

更に、“あなたがかけがえのない存在であるのと同様に、隣にいる友人もまた、かけがえのない存在だ” と日頃から教えられることで、他者を肯定・尊重するまなざしが養われていきます。

自己の肯定→心のゆとり→他者の肯定→自己の肯定→……

教室内がいつものほほんとしていた理由のひとつは、この無限ループの中にあったのだろうと考えています。


ところで、カトリックの女子校というと、いかにも厳しい礼儀作法の指導があるように思われがちですが、実は、特段何か時間を割いて教わったという記憶はないのです。

その代わり、常日頃から、「女学院生としての自覚と誇りを持ちなさい」と繰り返し繰り返し言われ続けます。

それは例えば、「バスや電車を降りる時には、運転手さんや改札の駅員さんにきちんとお礼を言いなさい」であるとか、

「教室内は整理整頓を心がけなさい」であるとか、

「身だしなみはきちんとしなさい」であるとか……

そういった類いのことと併せて言われ続けるわけですが、結局はそれが、ある程度の自律心に繋がっていくのだろうと思います。

「女学院生として恥ずかしくないように行動しなさい」と言われ続けると、それなりの行動を取るようになるものです。

そして、もしそれが不適切な行動であれば、すぐに注意という名のフィードバックが飛んできます。もちろん、適切な行動であれば、お褒めのフィードバックも飛んできます。(ココ大事!)

こうして、日々の地道な指導の下、女学院生らしさというものが作られていくのだなと感じていました。


ちなみに、カトリック校に限らず、私学出身者には、愛校心の強い人が多く見受けられますが、これもおそらく、建学の精神を学び、「自覚と誇りを」と言われ続けて育ったからだろうと推察します。

愛校心とは、結局のところ、自尊心に繋がるため、アイデンティティー確立にも一役買っているように感じます。

私学というと、どうしても学力面にばかり注目が集まりがちですが、私学教育の真髄というのは、こうした心の教育や価値観の形成にあると考えています。


加えて、愛校心とは、同胞意識(身内意識)の強化にも繋がるため、先生方や友人、卒業生も含めた先輩、在校生も含めた後輩といった人達との人脈形成の際にも役立ちます。

次回は、そうした “人との出会い” についてのお話を書いていきたいと思います。

◇つづく◇

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