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LILUA
2022年9月30日 23:43
―第7場―『天罰と逃竄の旅寓』 ―2006.9.16 21歳―「あっ、気が付いた?」ベッドの脇からジャージ姿の男性が、此方を覗きこんでいる。(誰?えっ……!また病院?)「あのー。私の持ち物とかって……」「ああ、これ」と床から拾い上げられたバッグを受け取ると、礼を言うが早いか、直ぐにケータイを確認した。(また機種が変わっとる……。) 4ヶ月も経過しており、例の産婦人科に支払
2022年9月28日 02:27
―第4場―『阿漕で繰返な酔いの街』 ―2004.10.26 19歳― 眠りから覚めた視線の先で、羽毛布団から胸元辺りまで素肌を晒した自分と見知らぬ青年の姿が、鏡張りの天井に映っていた。モゾモゾと布団の中を確認しようとする私を遮るように、「そろそろ出よか」と高い割に嗄れた声が耳に触れる。 自動精算機の前に立ち、財布を取り出した男性に、「半分出します」と申し出ると、彼は小さく笑った
2022年9月25日 17:52
―Prelude―『Memorie』 拙い手記を書き終える日が来れば、復讐の叙唱 を彼女に捧ぐ――。 然れど、目紛しく転調を繰り返す不安定な旋律に乗せ怨恨のアリアを歌い上げる前に、己の断末魔の叫びが轟かぬとも限らないのが甚だ恐ろしい。 最後の幕が下りた時、私ではなく彼女の為の葬送曲が完成している事を、今はただ、願ってやまない。 ―第1場―『寂滅と出顕の手術台』 ―2003