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信楽焼の3代目が解説!うつわ初心者に覚えてほしい5つの語句

こんにちは、「道具へのカンシャ」が芽生える体験を届けるライフスタイルブランドlilo(リロ)を運営する古谷です。

今回は、信楽焼の陶器屋3代目である私が、うつわに興味を持ち始めたばかりの方に最初に覚えていただきたい5つの語句を解説させていただきます。

①釉薬(ゆうやく)

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陶器を焼成する際に素地の上にかける、いわばコーティング剤のようなもの。これをかけることにより、器の強度をあげたり、油が染みなくなったり、さまざまな質感や発色をしてくれます。数え切れない種類の釉薬がありますが、陶芸作家さんそれぞれに持ち釉薬(得意な釉薬)があり、作風を印象付ける大きな要素となっています。私個人的には海鼠釉(なまこゆう)に魅力を感じます。

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こちらは私のコレクションのひとつ、海鼠釉の小壺です。覗き込んでみると、まるで海のような景色が広がっていて、何度見ても見惚れてしまう不思議な魅力があるのです。

②貫入(かんにゅう)

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釉薬(ゆうやく)の表面が細かくひび割れになったような模様のこと。繊細で奥ゆかしい雰囲気で、水を入れるとキラキラと反射するのが特徴です。陶器を焼き上げる際に釉薬がガラス化し、それが冷えていく過程で収縮し、小さなヒビが入って貫入が生まれます。お客様から「ヒビが入っている!」とお問い合わせ頂くことが多いのですが、無論ヒビではありませんし、むしろ風情としてお楽しみいただきたいところです。

工房で器が焼き上がってきた時に窯の扉を開けると、貫入の入る音が ”キンキン” と工房の中に響き渡ります。特に夏場は外のセミの鳴き声やそよ風の音と貫入の音が調和し、このままずっと聴いていたいとい思う特別なひとときを提供してくれます。ぜひお聴きください。

③焼き締め

焼き締め

引用:https://shopmota.thebase.in/items/16696633

先ほど解説した釉薬(ゆうやく)をかけずに焼き上げることを指します。言い換えるとコーティングがないため、油や水などが染み込んでしまいます。しかし、そこがこの焼き締めの良いところ。使い込めば込むほど馴染んでいき、何とも言えない渋い風合いに育っていきます。私のお気に入り陶器ひとつに焼き締めのビールカップがあるのですが、本当によく育ってくれています。誰にも使わせたくない、自分だけの自慢のカップです。

④高台(こうだい)

高台

引用:https://www.weblio.jp/content/%E9%AB%98%E5%8F%B0

器の裏側の台状の部分。ここが陶芸作家の技術の見どころのひとつで、茶席で茶碗の裏を覗くのはこの部分を見ているため。食卓では高台の高いお椀はテーブルに並べると、いい意味で浮ついた見え方をしてくれるためテーブルに変化をもたらしてくれます。メインが大皿料理の時には高台が高いお椀を、小皿料理がたくさんの場合には高台なしのお椀をチョイスすると面白いコーディネートができますよ。

⑤手びねり

手びねり

引用:https://shige-yuri.net/2020/09/21/%E5%A3%BA%E9%80%A0%E3%82%8A-8/

陶器を作る際にろくろで作ることはご存知の方も多いかと思いますが、ろくろを使わず手のみを使って作る方法が手びねりです。大きな壺などを作ったり、複雑な造形の作品を作ったりする時にこの手法が取られます。ろくろで作った器と異なり、表面に味のある凹凸が生まれるため土本来の手触りが感じられます。信楽町では手びねりでの作陶体験ができるお店がたくさんあります。ひんやりとした土の感触を楽しんでくださいね。

本当の陶器の楽しみ方

以上、陶器屋3代目の古谷がうつわ初心者に覚えてほしい5つの語句を解説していきました。さあ!これであなたも陶器のプロ!陶器にどんどん詳しくなって、陶器を楽しみましょう!

なんて、一切思っていません。

陶器を楽しむのに、用語を覚えたり、見方を教えてもらったり、歴史を勉強したり。そんなことは一切必要ありません。自分が心を惹かれるデザインや色、手触りのものを素直に”いいなあ”と思う心こそが一番の陶器の楽しみ方だと私は思います。

大正時代、美術品だけでなく、日用品にこそ美しさがあるという”新しい美の定義”を提唱した民藝運動を主導した柳宗悦(やなぎ むねよし)はモノの楽しみ方として、”知る”だけでも、”見る”だけでもだめで、一番大事なのは”感じる”ことだと話しています。

まず手にとってみる、そして手触りや細かい景色を覗いて、作り手の想いを感じてみる。そうすると、必ず心が通いあう器に出会うことができます。その出会いには知識は要りません。心の通い合う器は、きっとあなたにとって愛着ある道具となってくれるのではないでしょうか。

liloでは陶磁器製のダッチオーブンを取り扱っております。多くの方に土の力が生み出すワンランク上の”食”を楽しんでいただきたいと思います。


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