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日系カナダ人が思う難しい日本語、便利な日本語

時が経つのは早いもので、日英翻訳を始めてから今年で十年になりました。

現在は一社とだけ契約していて、条件に合う案件がある時だけ不定期で紹介していただいているのですが、以前は知り合いの紹介で不動産、ECサイト、B to Bの契約書、食べ歩きレポ、レストランのメニューなどいろいろな分野の翻訳をさせていただいていました。

そんなことはさておき。そんな翻訳をする中や日常生活で頭を抱えた難しい日本語をいくつかご紹介します。もし良いアドバイスなどあればご教授いただけると、とっても助かります。

難しい日本語その1

食べ歩きレポの英日翻訳をさせていただいていた時の「安心してお召し上がりください」「安心してお越しください」この「安心」ってみなさんどういう意味合いで使っているんでしょうか。身体への悪影響がないよって意味ですか?それとも気持ち的なもの?たとえば「安心してお召し上がりください」は英語にすると、 "You can enjoy these worry-free" となるのですが、主語がないので「なんのWorry?食べ物がSafeじゃないことがあるの?」と絶対に疑問が出て来てしまうんですね。販売されている商品に安心できない時代背景があったのだとしても、それが分からない外国人向けに説明するのは難しいので、私はここを丸っと省いてしまっています。

難しい日本語その2

同じく食レポで。料理系の番組が好きでよく視聴するのですが、よく聞く「やさしい味」「女性が好きそうな味」「男性が好きそうな味」というのはどうやって翻訳したら良いものか、とても迷います。日本はもちろんフランス、中国なども美食家の多い国ですから食べ物の味を表現する言葉が多々あるのだろうと思うのですが、食の好みが性別で違うという思考は欧米人には無いため、直訳してしまうと性差別と捉えられかねません。女性が好きそう=薄味男性が好きそう=味が濃い、なのかな?と思っているのですが、合っていますでしょうか?「やさしい味」はとりあえずSubtle(繊細)を使っていますが、あまりしっくり来ないです・・・。同様に「食べやすい」もよく聞きますが、わからないです。咀嚼しやすい、飲み込みやすい、とか?カニやロブスターなど殻つきのものが「食べにくい」のはわかるんだけど。

難しい日本語その3

略された言葉が多い事。その昔読んでいた日本語の本で「バッシュ」という言葉が出てきて、日本語学校の先生に聞いても親に聞いても分からなくて、辞書(家に唯一あった日英辞典は1970年代のもの)を引いても載っていなくて、とても悩んだ記憶があります。今なら「バスケットボールシューズ」のことだと分かるのですが、なにをどうやって略したらその言葉になったの!?また、化学系や医療系の案件を翻訳していると、その業界では当たり前なのでしょうか、薬品や物質の略語が多く出てきて、検索しても出てこないので、それを書いた教授の発表した関連論文をしらみつぶしに調べたこともあります。どうでもいいけどサイエンス系の研究者って文章書くの下手な人、多くない?(偏見です)

英語でも勿論長い言葉は略します。たとえばVersus はV.S.と略しますが、発音するときはVersusと言います。Fall Out BoyというバンドはFOBと略して表記されたりしますが、これをそのまま「エフ・オー・ビー」と呼ぶ人はいません。ですが、日本だと略語をそのまま使うようで、テレビ番組の「VS嵐」は「バーサス嵐」ではなく「ブイエス嵐」が正しい表記です。これが慣れなくて、けっこう難しいです。

でもケンタッキーフライドチキンは日本では「ケンタッキー」と呼ぶのに対して英語圏だとKFC(ケイ・エフ・シー)と呼びます。ケンタッキーは地名だからかな。「トウキョウオイシイラーメン」という店があったとして日本人が「トウキョウに行こう!」とはならないのと同じですね。

ここからは私が思う便利な日本語集をご紹介します。

便利な日本語その1

面倒臭い 似た言葉でTroublesomeという英語がありますが、直訳すると大変、手間がかかる、などの意味を含む言葉で、ちょっとニュアンスが違うんですよね。「面倒臭い」は「やりたくないわけではないけどしんどい」という場面で使うことができるので、会話で重宝します。会社でもよく外国人の同僚が使っていました。

便利な日本語その2

外人「外人」の直訳はForeignerになりますが、移民大国カナダではどこからがForeigner?とややこしくなってしまうので、少なくとも会話ではあまり使いません。逆に日本のような単一民族の国では外人として外から来た人を区別しますが、一方の外人もこれを利用してGaijin communityを作っています。Gaijin Potというサイトは日本に住んだことがある外国人なら誰もが知っていると思います。何かあればI'm a gaijin, He/She is a gaijinの一言で察してくれるのが便利です。

便利な日本語その3

大丈夫 拒否する場合でも受け入れる場合でも、「大丈夫」と言っておけば大丈夫。無問題。

便利な日本語その4

どうも お客様は神様、の日本と違いカナダでは店員と客の立場はイコール。客はサービスを提供してもらったお礼に、Thank you を必ず言います。でも、忙しい日本のコンビニで「らっしゃっせー」に対していちいち「どうもありがとうございます」と言うのはちょっと丁寧過ぎて気が引ける。何より「ありがとうございます」って長いんですよね。かといって「ありがとう」は友達みたいでなんか違う。そんな時に使えるのが「どうも」、短いけどちゃんとお礼の意図は示せる便利な言葉です。

おまけ 会話中の言語の使い分け

日本語と英語どっちも喋れる方と会話する時は一番楽だから、という理由でまぜこぜで喋ってしまうのですが、どうやって使い分けているのかというと、音節(Syllable)の数です。

例えば、「あなたの車に傘を忘れて来ちゃった」”I forgot my umbrella in your car"と言いたいとします。

すると、無意識に一番早く口にできる言葉だけを選ぶと、

「I forgot my 傘 in your car」になります。

それぞれ、音節の数は I = 1, forgot = 2, my = 1, 傘 = 1, in = 1, your = 1, car = 1  で、合計8つの音節で、短く文章が言い切れるのです。他に、前後の言葉が発音しづらい(たとえば、母音続き)場合やどちらかの言語にしかない表現をしたい場合は、更に言葉を変えたりしながら喋っています。

これは1ヶ国語以上喋る人ならみんな似たような感じかな〜と踏んでいるのですが、どうでしょうか。



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