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前提を疑え!ラテラルシンキングで新たな発想と創造的解決を

以前、勤めていた学校に、前提を疑い、新たな解決方法を生み出すのに長けている先生がいた。会議の場では、いつも「はっ」と気づかされることが多く、「どんな思考回路をしているのだろう」と、陰ながら手本にしていた。


印象に残っているのは、会議で部活動についてのあり方について議論をしている時であった。

 現在、教育界では働き方改革の観点から部活動のあり方が見直されつつある。  教員の長時間労働の問題が注目され始めたのは、2014年、OECDが公表した調査結果で、日本の中学校教員の勤務時間が1週間で53.9時間と参加国中ワースト1だったことがきっかけだった。

その後、文部科学省が実施した「自宅残業も含めた時間外労働が月80時間(過労死ライン)を超えた教員」の調査で、小学校で57.8%、中学校で74.1%だったことを受け、教員の心身の健康を守るため、国が動き出したのだ。 

 会議では、教員の長時間労働を是正するため、部活動のあり方をどのようにしていくかという議論がなされた。他の先生が、部活動日数の削減や時間帯の短縮、業務の分散など具体的な案を出される中、その先生は、「そもそも部活動の指導は必ずしも教員がしなければいけないものなのか」という根本的な疑問とともにご自身の意見を述べられた。 

先生のご意見は、「教員の本業は学習指導であり、部活動の指導は、教育課程には明記されていない。時間外に及ぶ部活動の指導のため、教材研究する時間すら確保できないのが現状。外部委託をすることも検討すべきだ」というものであった。


教育界には、生徒のためと言われれば断りづらい風潮がある。生徒のためにどれだけ熱心であるかがどれだけいい先生かというバロメータになっている。よって、部活動に関しても、教育の一環として、時間外であろうと本業でなかろうと教員が担うものという考えが根付いているのだ。
ゆえに、私は、会議での先生の発言に正直、驚いた。


前提を疑う「ラテラルシンキング」とは

さて、前書きが長くなったが、この「前提を疑う」という思考は、ラテラルシンキングと言って、既成概念や固定観念にとらわれず、様々な角度から物事をみたり、物事の新しい組み合わせを考えることで、自由なアイディアを生み出すための思考法である。

 論理的に道筋を立てて物事を考えていく思考法であるロジカルシンキングや、物事を鵜呑みにせず「本当に正しいのか」という視点で考察していくクリティカルシンキングと合わせて三大思考法の一つである。


ラテラルシンキングの特徴は「前例のない結論を導き出せる」ということである。前述の部活動の件では「部活動を教員が担わない部活のあり方」という視点から問題を捉えることで、前例のない抜本的な問題の解決に向けて舵を取ることも可能になるのだ。 

では、ラテラルシンキングを効果的に活かすためには、どのような点に着目して問題を捉えればよいのか。


ラテラルシンキングの鍛え方

ブレインストーミングをする際、アイディアを生み出すための補完的資料として、オズボーンのチェックリストがよく使われるが、ラテラルシンキングで新たな発想を生み出す際にも活用できるので紹介する。

〜オズボーンのチェックリスト〜

①転用・・・そのままの形で他に転用できないか

 ②応用・・・他からアイディアが借りられないか

 ③修正・・・様式、型などを変えられないか 

 ④拡大・・・大きくしてみたらどうか 

 ⑤縮小・・・小さくしてみたらどうか 

 ⑥代用・・・他のもので代用できないか 

 ⑦置換・・・入れ替えてみたらどうか 

 ⑧逆転・・・逆にしてみたらどうか 

 ⑨結合・・・組み合わせてみたらどうか


最後に

前提を疑ったり、ユニークな発想というのは時に、議論から逸脱した突拍子もないことだと相手にされないこともある。

実際部活に関しては、「部活動は本当に教員がする必要があるのか」と疑問に感じていた教員も少なくなかったであろうが、これまでそういった声はかき消され、部活動に否定的な教員はやる気のない教員だとさえ思われていたのではないだろうか。

だが、そうした声に気づかぬふりをしてきた結果、問題が大きくなり国もようやく重い腰を上げ、動かざるを得なくなった。文科省は、部活動は「必ずしも教員がになう必要のない業務」とし、休日は「指導に携わる必要がない環境を構築する」という方向性を示した。拠点校で実践しながら、2023年度から段階的に実施するという。

前提を疑うという視点は、時に、抜本的な改革のためには。とても重要な視点である。


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