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乳がん備忘録#5 がん告知は突然に…
1年前の出来事なのに、遠い過去のように思えていて、告知の時の記憶を思い出すのに時間がかかりました。
10年前でも、昨日の事のように覚えていることもあるから、たぶん無意識で脳が忘れようとしているんだと感じました。
生検から結果が出るまでの2週間は、何をするにも検査結果のことが頭から離れず…
今思い返すとやめれば良いのに、時間があると目的もなく乳がんについて検索して、ネガティブな情報を見つけては、さらに不安になって、また検索して、完全に負のループの沼にハマっていました。
頭の中で良性腫瘍かもしれないという希望の光と、がんかもしれないという、先行き不明の不安が入り乱れていて、できるだけ自分が好きな事を考えて過ごしていました。
乳がんに限らず、他の方のがん体験談を読んでいると、がんの告知よりも、結果待ちの期間が辛いと書かれていることがあり、この期間を経て私も共感します。
告知を受けた当日は、仕事を午前休にしたけれど、今思えば気を遣わずに、丸一日休みにしても良かったと思っています。
ドキドキしながら診察室に入室、結果の用紙が目に入り、一瞬目を通しても、自分ではよくわからなかったので、主治医の話をききました。
「英語でDICSです。何のことかわからないと思うので、日本語でいうと非浸潤性乳管癌です。最終的なステージは手術後の病理検査で決まりますが、つまりステージ0の乳がんです」
これもたくさんのがん経験者の方が言っていることだけれど、がんの告知ってドラマで見るようなイメージと違って、めちゃくちゃアッサリしていました。
「非浸潤性乳管癌(ステージ0)とは、がんが乳管内にとどまっている状況で、手術で取り切れば完治を目指すことができます」
「今後の治療の流れについて説明すると…」
『誰に話しているんだろう?……』
結果を聞いてすぐは実感がなさすぎて、自分でない誰かの話を聞いているような、他人事の感覚がありました。
『いつも通りなんとなく乳がん検診を受けただけなのに、一体なんの話をされているんだろう…』
心積りができていなかったこともあって、全摘の説明は無感情でした。他人事感が幸いして、ある意味冷静に聞いていました。
「ステージ0と早期発見でも全摘の理由は、がんが乳管内にとどまっていても、乳房に張り巡らされている乳腺への広がりが大きい場合になります。どこまで広がっているかは、MRIを撮影して確認することになります…」
「MRIを撮影して、広がりが大きくなければ、放射線治療とセットになりますが、部分切除が適用になります…」
『放射線!?』
それまで、冷静でいることができたのに、突然怖くなって涙が頬をつたいました。
東北原発事故の報道で、放射線のイメージが、人体に影響がある悪いものという印象があり、それを身体に当てなければいけないということに衝撃を受けて、
放射線治療について何も知らず、勝手に将来の妊娠に影響がでると誤解して、悲しい気持ちになって、涙がたくさん溢れてきました。
それまで、将来子供が欲しいかどうか、自分でもよくわからなかったけれど、乳がんの告知がきっかけで、子供が欲しいと思っていることにきづきました。
「放射線は胸に当てるので、妊娠に影響はありませんよ。影響が出てくるとしたら、術後ホルモン療法が必要になる場合です。」
「ここから先の検査や手術はもっと大きな病院に移る必要があります。すぐに紹介できる病院がありますが、紹介状は今書きますか?家の近くの病院を調べますか?」
「一旦調べます…」
「わかりました。後日クリニックからそちらに連絡するので、それまでに決めておいてください。検診で早く見つかって良かったですね。」
診察室から出ると、ちょうど風の谷のナウシカの「ラン、ランララ、ランラン…」のBGMがオルゴール調で流れていて、いつもなら何も思わないのに、ますます悲しみが深くなったことを覚えています。
生検になってから、何となく嫌な予感がしていたけれど、今すぐに泣き出したい気分を抑えて、どんよりした気分でクリニックを後にして仕事に向かいました。
『今日休みにすればよかった…』
クリニックを出てすぐ、やり場のない悲しみをこらえきれず、家族に電話したけれど応答なし。告知されて初めて結果を伝えたのは上司になりました…
次回、家族に結果報告と手術する病院選びについてです。
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