日本は高齢者虐待国か?

最近また「日本の高齢者が国に虐待されてる!」みたいな暴言を目にして、鬱陶しくなる。

暑いのに冷房つけないとか、70代なのに(年金未加入者)毎日働かないないといけないとか、そういったごく稀なケースだけで、「日本政府が高齢者をいじめてる!」という認識になるとは、あまりにも浅ましすぎて笑えない。

私ははっきり断言できる。日本は先進国の中に恐らく最も高齢者を優遇している国だと。社会保障給付費の金額や対GDP比率、並びにほかの先進国との比較に基づいて説明したい。

厚生労働省2020年のデータによると、日本の年金給付額と医療費給付額の対GDP比率はそれぞれ10.0%と9.6%で、他国とはさほど大差はない。

医療費のうち、65歳以上の被保険者に給付された金額は全体の61.5%を占める。少子高齢化が進んでいる日本だから、この額になるのは当然とは言えるが、そのうちの大部分が末期医療に使われている。とある学者(申し訳ないけど名前忘れてしまった)の調査データによると、その数字は75%を超えている。即ち、医療費は6割以上が高齢者に使われており、さらにそのうちの大部分が治癒の可能性がほぼない瀕死者の姑息治療で飛んでいる。

そして、社会保障の3つ目の部分、社会福祉についてはさらに恐ろしいことになっている。社会福祉は主に若年世代向けの公的サービスと考えられており、特に欧州では、社会福祉若年層への職業支援や子育て支援を指すことが多い。

同厚生労働省のデータによると、日本の社会福祉関連給付額は338,682億円で、対GDP比率は3.5%。それに対し、韓国は4.9、イギリスは5.6、フランスは8.7、ドイツは7.9、オランダ7.9、スウェーデンは11.2、社会福祉がほぼ皆無のアメリカすら2.2%はある。

データ出典:厚生労働省ホームページ

日本の社会福祉給付額の対GDP比率は米国より高いじゃねえか!と反論したい人もいるだろう。残念ながらそうはいかないのだ。なぜなら日本の社会福祉給付費に介護保険が含まれているからだ。

社会福祉給付額の30%近くは介護対策費で、数字と書けば114,169億円。つまり、若年世代へと給付された社会福祉金は224,513億円くらいで、社会保障給付費全体の1.7%にとどまっており、アメリカよりも低い計算になる。

ちなみに介護保険という社会保険は世界的に見ても稀で、私の記憶が間違っていなければ、この制度がある国はドイツ、オランダと日本3つのみ。

確かに、日本は社会福祉が充実している国ではある。しかしそれはある程度高齢者限定の話だ。社会を支える若年世代への公的サービスはあれだけ少ないのに対し、高齢者への支援は先進国の中でもトップクラス。歳出の中で最も割合が大きい社会保障関連費。その中に高齢者へ行っている金は少なく見積もっても85%を超えている。

これを見ても、日本は高齢者虐待国だ!と言えるのだろうか?

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