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エリザベスと英国王室のちょっとしたおさらい 映画「エリザベス 女王陛下の微笑み」を見て

エリザベスは今年で即位70周年になるプラチナジュービリーを迎えた。
今日は即位70周年を記念した映画「エリザベス 女王陛下の微笑み」を見に行ったので、映画の感想を交えつつ、エリザベス女王と近代の英国王室についておさらいしてみようと思う。

英連邦の象徴「エリザベス」

エリザベス女王はイギリスの女王である。

というのはだれしもが知っていることだが、正しくは英連邦王国の君主である。ニュージーランドやオーストラリア、カナダ、そしてアフリカのジャマイカなど、歴史的に英国とかかわりの深い土地(開拓地だったり植民地だったり)も英連邦王国である。英連邦王国にどんな国があるのかは、wikipediaの英連邦王国 の項を参照してほしい。というわけで、エリザベス女王の治める範囲はめちゃくちゃ広い

映画でも、エリザベス女王が英連邦国々を旅する様子が紹介された。どこへ行っても歓迎の嵐、荒れ狂ったビートルマニアもびっくりのアイドルっぷりである。人種も文化も異なる国の人々を「英連邦」たらしめるのは「エリザベス女王」の存在 なのだ。まさに彼女は「英連邦」の象徴である。

エリザベス女王とドイツ

エリザベス女王はとてもおおらかで優しく、チャーミングでアイドルの素質が満載なのである。しかし、そんな愛すべき彼女は やはり女王、国家元首であるから政治の文脈からは切り離せない。1992年にエリザベス女王がドイツ、ドレスデンに訪問した際は生卵を投げつけられる有様であった。第二次世界大戦中、ドレスデンは英国空軍の空襲により4万人が死亡し、壊滅状態に追い込まれた。町をめちゃくちゃに壊した憎き英国のトップである。ドレスデン市民が怒るのも当然だ。

エリザベス女王がドイツ系であるから、なおさらドレスデン市民の怒りを買ったのかしら?とも思うのだ。

エリザベス女王、正しくはElizabeth Alexandra Mary of Windsorであるが、ウィンザー家は元の名をザクセン=コーブルク=ゴータ家という。ゴリゴリのドイツ系である。

ここで少しのイギリス王室のおさらいをしたい。(英国の歴史は日本に比べると複雑なので、ここではグレートブリテン王国に限定したい)

ざっくり書くと変遷は以下の通りだ。

1707年~1714年 スチュアート朝(スコットランド系)
1714年~1917年 ハノーヴァー朝(ドイツ系)
1917年~現在 ウィンザー朝(ハノーヴァー家、改名)

ドイツ系のハノーヴァー家が、グレートブリテンの王位についたのは婚姻によりスチュワート家の血筋の人間がいたからである。(ヨーロッパの王室は婚姻によりみんな親戚みたいな感じなので、日本人の私からすると「いったい何人と言えばいいんだ…」と思うことが多い。)そういうわけでエリザベス女王はまごうことなくドイツ貴族の血を引いている。ということはきっとドイツ国民ならびに英国民からしてみれば常識なのだろう。戦争は国と国がするものであって、個人でするものではない。だから当然、女王個人がドイツ国民に直接何かをしたわけではない。しかし、ドイツ人にとってエリザベスやウィンザー家の人間は、同胞殺しの憎むべき対象なのかもしれない。

ドイツへの攻撃について王室には少なからず葛藤があったようだ。というのを以前NHKのドキュメンタリーで見た気がするが、思い出せないのでまた今度。

エリザベス女王の魅力

エリザベス女王はとてもチャーミングで、親近感がある。同時に、エリザベスには女王としての威厳がある。彼女のスピーチにはいつも、「国民のために」という強い意志がある。無き父ジョージ6世に代わり、25歳の若さで王位に就いたエリザベスの凛とした姿に、きっと全英国民が胸打たれたことだろう。エリザベスの国家元首としての威厳、力強さは国民に「安心感」を与えるのだと思う。国民にとって「王」は頼れる、そして導いてくれる存在でなくてはならないのだ。

「親しみやすいかわいらしさ」と「力強さ」が、エリザベス女王が長年に渡り国民に支持される理由なのだと、映画を見て思った。

メディアと女王

日本人的に驚きなのは、女王がしばしばコメディや映画のネタになっていることである。日本で天皇をネタになんかしたら、一瞬で存在を消される気がする。というかとてもじゃないがだれも公共の電波でそんなことしようと思わない。国内メディアならまだしも、海外メディアで天皇陛下(ぽい)ものをジョークにしようものなら国際問題に発展しかねない気概がある。

(これについては、調べが足りないのあとで追記することにする)


映画の感想

この映画はお堅いドキュメンタリー映画というよりも、気軽に楽しめるエンタメだと思う。エリザベス女王の歴史をさらいつつ、エリザベス女王の魅力と英国の雰囲気を堪能できる。エリザベスの人生は、何も明るいことだけではない。先に述べたドイツ訪問での生卵投げつけ事件や、ダイアナ妃の死、ウィンザー城の火事、皇太子たちの相次ぐお粗相など、さらっとだが、暗い側面にも触れている。女王も苦労するなあ…という気持ちになる。
まあ正直これを見たからと言って英国のなんたるかを知ることはできないし、そこそこ英国に精通している人にとっては特に目新しい情報もないと思われるが、新旧様々な映像を通じてエリザベス女王の魅力にどっぷり浸かれる楽しい1時間半だった。

宣伝でポールマッカートニーがしゃべっていたので、ポール出るんだ!とおもっていたら、宣伝でしゃべっていたのがすべてだったのと、ドキュメンタリー用に撮った映像じゃなくて、叙勲の時に撮ったものだった…OH NO....。ジョンは勲章を返上しているにもかかわらず、なぜか職員がジョン叙勲ファイルを突然見せてくれる。なんでやねん!どうせだったらそこはサー・ポールのか、サー・リチャードを見せてくれよ! と心の中でツッコミをいれてしまった。なぜかビートルズ叙勲(MBE)のくだりで流れたのが NORWEGIAN WOODだったので(ノルウェーじゃん!!!!)とここでも心の中でツッコミをしてしまった。

エンドロールでは、ビートルズの Her Majestyが流れた。ベタかよ!!!と思いながら映画は終了した。楽しかった。


                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                           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