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【読書記録】小関 隆著「イギリス1960年代ービートルズからサッチャーへー」

1960年代のイギリスの社会をざっくり把握するには最適な一冊だと思う。

 私がこの本を読んだ動機は「ビートルズ」なのだが、「ビートルズ論」を読みたかったわけではない。知りたかったのは、当時の政治がどうとか、社会がどうとか、文化がどうとか、社会学的な内容である。
読み始めてすぐ、この本を選んで正解だと思った。

主題の通り本書は1960年代のイギリスに焦点を当てている。しかし副題には1980年代を象徴する英国第71代首相マーガレットサッチャーの名前が登場する。なぜか。それは1980年代サッチャー政権の政治的施策は、1960年代に端を発すると著者が考えるからだ。

サッチャリズムとは混沌の1970年代の解決手段だ というのが通説のようだが、そもそも1970年代の危機の背景は、一見華やかな1960年代にある。というのが本書の主張である。(おそらく)つまり1960年代の社会を紐解くことは、1980年代サッチャー政権における英国(ひょっとすると現代にいたるまで)を理解する糸口になる。

(サッチャリズムが何かはググるか、この本を読んでください。)

ここまで読んでわかる通りだが、わたしはイギリスの政治にはあまり明るくない。イギリスの主な政党を言えといわれても「労働党…?」くらいしか言えない程度である。そんな私でも1960年代~1980年代の社会動向を(大まかではあるが)把握することができた。

1960年代と言えば「スゥインギング・ロンドン」「マリークヮント」やら若者がハツラツとしていて、おしゃれでとにかくたのしい!という印象がつよい。ファッション・アート的側面でそれらを深めていくのはそれはそれで楽しいのだが、そうした文化が生まれる背景にはやはり「戦争」があり、戦争による「豊かさ」があるのだということを、本書を読み再認識した。階級社会の英国においては、豊かさにより「階級」認識が薄れたり(薄れたと思ったけど勘違いだったり)とにかく、あらゆる意味で1960年代は既存概念を揺るがす激動の時代であったといえる。

また今回私が求めたのは「ビートルズ論」ではないが、著名な社会学者のビートルズ論はとても興味深かった。言うなれば、京大の先生が書く超高次元のビートルズ論だ。まえがきにおいて「ビートルズは60年代の象徴として持ち出したにすぎない」と言いながら、丸々一章をビートルズの解説についやしている。「ビートルズ」とはだれか、なぜ彼らは社会現象になったのから始まり、彼らの音楽性に時系列で触れている。持ち出したに過ぎないどころの騒ぎではない。バリバリビートルズ本である。特に中期のアルバム「ラバー・ソウル」「リヴォルヴァー」「サージェント・ペパーズ・ロンリーハーツ・クラブ・バンド」についてはそれぞれ項目を設けているほどである。彼らの社会的・音楽的偉業を客観的に述べる端々に、著者のビートルズ愛をひしひしと感じる。ビートルズ好きが読んでも面白いのが本書だろうと思う。(私はすごく面白かった)

英国の現代史を紐解くにあたり、本書を選んでよかったとあらためて思う。1960年代に生まれた「消費者」の概念、「個人主義」「自分らしさ」の概念は今日まで続いている。

1960年代。はるか60年も昔のことではあるが、当時を知ることはいまわたしたちが生きる社会を紐解く足がかりになるのではないか。と私は思う。

ので良かったら本買ってください(全力推奨)



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