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思い出の味_万頭 失われたレシピの再現に挑む!

私の母は第二次世界大戦の開戦を中国の青島で迎えている。最後の日本への引き上げ船で日本に帰ってきた。
母の父は戦前、青島で紡績工場を運営していた実業家で、母は幼いころは青島の日本人街でかなり裕福な暮らしをしていたらしい。中国人のアマがいて、コックがいる。朝はアマが何か甘いもの(甘栗とか金平糖とか)を持ってきて口に入れてくれて、それをしゃぶりながら起きて着替えをするのだと言っていた(母は歯が悪かった)。中国人のコックに習ったとのことで、祖母の作る万頭は玄人はだしだった。中に何も入っていない豚まんの皮のようなものだが、油を練りこんだ花巻とは違い、小麦の味がダイレクトに伝わる素朴な味である。中国ではご飯がわりに食べるそうだ。

私は祖母の作る蒸したての万頭が大好物だった。大学から帰省するたび、祖母は1次発酵を終えた万頭を蒸し器に並べて持ってきてくれて、そのままうちで蒸して、蒸したてを食べさせてくれた。蒸したての万頭にバターを塗り、グラニュー糖を付けて食べると、甘くて、フワフワで、最高においしかった。お鍋いっぱい食べてしまうくらいだった。

この万頭のレシピは祖母の死とともに失われてしまった。本当に悔やまれる。味は覚えているので、よし!再現しよう!と、ネットでみつけたレシピで試してみることにした。

まず粉とミルクと水、砂糖、ドライイースト、小麦粉を混ぜて室温で15分おき、その後、冷蔵庫で24時間寝かせる。これがドウになる。

イーストだね 24時間前に仕込む

さて翌日、このタネは倍以上になっている。これと粉を混ぜて一つに固め、練る練る練る。7分練って5分休め、また7分練る。
出来上がったのはこんな感じ。

粉を加えて練ったたね

これに水で濡らしたふきんをかけ、3時間。(ヨガレッスン1本受けてきた)
戻ると、倍の大きさに膨れている。

3時間寝かせて倍にふくれた生地

触るとふわふわ。プシュッと空気を抜き、2つに分けて細長く伸ばし、適当に切る。

成型して切った生地

ペーパータオルの上に載せ、さらに30分寝かし、生地がお互いくっつくくらい膨れたら、蒸し器に入れて強火で8分。
くっついちゃったけど、出来上がり!

蒸しあがった万頭

チンジャオロース―を作り、早速お昼にいただきます!
びっくり!味は祖母の万頭とよく似ている。形にもう一工夫必要だが、ほぼ同じ味。
勝因はたねを一晩寝かせたこと、練る時間を2回に分け、じっくり練ったことか。

参考にしたのは、このレシピ。
作ってみて思ったのは、各工程のタイミングを守るために結構な工夫が必要だということ。祖母が蒸し器をもって我が家にきてくれたのは二次発酵にちょうどいい時間だったということだろう。

もう少し工夫したい点もあるので、これからも作っていくつもり。
でも少しだけ、少しだけ、おばあちゃんの味に近づけた実感あり。

家庭の失われた味を取り戻すことは、ほぼ不可能に近い。うちもすでに多くの味をなくしてしまった。
母が得意で毎年親戚に配っていた「たくあん」もその一つ。

誰もがそんな味を持っているはずであり、その味を覚えている方がいるうちに是非、継承されることをお勧めする。それは新しい世代との対話を生み、若い世代が受け継いでくれるかもしれない。

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