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夢は見ずに 夢で聞く

「もしもし〜 久しぶりっどうした?!」

別れて五年たつ奴から 電話がきた。電話をしてくるなんて、なんだどうした?と思いつつ、付き合っていたよしみの勘が働いてしまって
「なにー、結婚でも報告しようとおもった?」と、とりあえずの言葉をかけてみたら、大当たりした。
「子供…できたからさ。」
「よかったじゃんー、それもきっかけだよ!」
「でもさ、いろいろ大変で…お金とかさ。」
「なんとかなるって! 大丈夫っ大丈夫。」
律儀に 別れた事を悪いと思ってるのか、よそから結婚話を聞かされるのは嫌だろうと思ったのか、細かく話をしてくれる彼に 何度も大丈夫だよーっと声かけして 電話を切った。

その夜、夢で彼が出てきた。
別れてから会う事はないから 容姿は五年前のままだったが、話は現在とリンクしていた。

「おれさー、お前に電話するのは、訳があるんだ。」
そんなことを夢の中の彼が言いだしていた。
「もう俺、別れられない相手と付き合ってるから…お前との電話で確かめさせて、もう今のコとうまくやっていくしかないって事を。そんで、お前が俺に気持ちがない事を 電話で確かめさせて。」
そこで、目が覚めた。

「なぁんだ、そういう事だったのか。」

五年ぶりの電話では聞けなかったその電話の訳を、夢で聞いた。
「夢でとか…最新の伝達手段だな これ。」
そんな事を思ったら なんだか笑えてきた。

また彼から電話かかってきたら、私はまた
「大丈夫っ大丈夫!」
って 言ってやろう。それが彼の望みなら。

#短編小説 #夢 #正夢 #ショートストーリー

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