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命をかけて伝えた あの日【ヒプノセラピー体験談】

実は私には、ずっと気になっていたことがあります。
それは、実の父との関係性。

幼い頃、私は父のことが好きで、可愛がってもらっていたと思います。
しかし父は同時に暴君の部分もあって、母が裸足で家を追い出されたこともありました。私たち子どもも何度ゲンコツされたことでしょう。

とあることがきっかけで深い亀裂が入った父との関係。
子どもが生まれてから、徐々に近づけるようになったような感じではありますが、それは長年のあいだ私を悩ませ、深く考えさせたものでもありました。
むしろそれがきっかけとなって、「私はどう在るべきか」「どう生きるべきか」を本気で考えはじめたのかもしれません。

そんな父との関係性を、ヒプノセラピーでいつかは見てみなければと、思ってはいたのです。
……ちょこちょこ出ては来ていたものの、実はしっかりと向き合ったことはありませんでした。不安が強かったからです。

父とのことに触れるのは、私の中では怖いものでした。
ある意味タブーに触れるような、そんな怖さがありました。
でも、ヒプノセラピーはあくまでイメージ。
勇気を出してみることにしました。

※「私」は今の私のこと。
 「」のない私は、この時代の自分のことです。

★地中海?あたたかい地方のどこか、古い時代

石組の壁。遠くに青い海。深いのが分かる色。
庭の向こうに続く階段を上がり切り、木の扉を開けると、そこには……。

石をくみ上げて造られた巨大な建物。
まるでコロッセオのよう。
私はサンダルのようなものを履いています。細かな砂利でその足がすべるのです。乾いた暖かい土地なのだと分かりました。

なぜか「父」(※今世の父親)は、ここにいるのだと分かります。
でも、私は何をしに来たんだっけ?
しっかりと筋肉のついた太く逞しい足。
鍛え上げた体には鎧のようなものを身に着けています。
ウェーブのかかったような黒い髪に、彫の深い顔立ち。
体格のいい背の高い青年……それが私。

なにか重要なことが、ここである気がします。
でも、まずは滑りを良くするために、幸せなシーンを目指すことにしました。

この画像、まるでその景色の成れの果てのよう


★育ててくれたのは召使い

「幸せ」のはずのシーン。
私は(当時の)実の父と母に抱かれていましたが、すぐに乳母?召使い?へと渡されました。
父は「なんとしっかりした体つき!立派な体格!顔立ちもよい!これは王も喜ぶ戦士となるに違いない!」と喜んでいました。
でも「私(今世の)」は、ちゃんと聞いていました。
召使いに私を渡すときに「これで私も気に入られ、良い立場(役職)をもらえるはず……」と父が言っていたのを。

私は召使いの女性「バオブー」に育てられました。
おばさんに見えましたが、おそらく当時40歳くらいだったのではないかと思います。

私はわんぱくで元気で、力が有り余っている子どもでした。
木や高い壁によじ登ったり、言いつけもあって剣技を習ったり、とにかくそこらじゅう走り回っていました。
素直だったせいか出自が貴族だったせいか、とにかく周りに可愛がられました。とりわけ育ての親であるバオブーが大好きでした。
実の父母は一切姿を見せませんでしたが。

ある日のこと。
私はバオブーに「夕食を一緒に食べよう」と持ち掛けます。
でも「できない」の一点張り。
何故かと問うと「召使いだから」と言われます。

「召使いでも、僕を育ててくれてるじゃないか!」
「なりません。こればかりは、なりません。そんなことをすれば私は旦那様からお叱りを受けます。辞めさせられるかもしれません」
「そんな……!」

納得がいきませんでした。
世話の一切を任せられているバオブーが、自分と食事もともにできないこと。
顔すら見に来ない父が、そのバオブーを辞めさせるかもしれないこと。
私は徐々に親に不信感を募らせていきました。

★強くなるということ


ある日。
剣が強くなった、と喜ぶ私を、
バオブーは辛そうな瞳で見つめます。

「僕が強くなるのがイヤなの?」
「そうではありません。坊ちゃまが体を強くされること、元気でおられることは、私の幸せです。ただ……戦いとは傷つくものです。坊ちゃんが怪我をしたら、私は哀しみます」
「大丈夫! 僕は強いし丈夫だから、怪我なんてしないよ!」
「でも、お相手はどうでしょうか?」
「……え?」
「戦う、ということは、必ず相手がいるものです。必ず、勝ちと負けがあるのです。坊ちゃんが負けて傷つけばバオブーが悲しむように、お相手の家族だって、お相手が傷つけば悲しむでしょう」
「……。父はなぜ、僕に戦わせようとするのだろう」
「……難しいことはバオブーには分かりません。ただ、旦那様も、この国や王様のことを考えてのことなのでしょう」
「……」

私は、父だけでなく、王や「戦い」という在り方に疑問を持つようになりました。
なぜ、わざわざ戦わねばならないのか。
戦いで勝つことを「良し」とするのか。

そんな私の態度の変化に、父は不信感を持ったのでしょう。

ある日のこと。
剣の演習を終えて部屋へ戻ると、そこに待っていたのは見知らぬ若い召使い。

「お前は……? バオブーはどこへ行ったのだ?」
「私は旦那様に言われて、今日からこちらに参りました。前任者のことは存じません。今、どこでどうしているのかも」

私は慌てて父の住居へ行き、あらんかぎり抗議しました。
しかし、何をどれだけ言っても無駄でした。
それきり、バオブーと会うことは、二度となかったのです。

★決意の優勝


それから数年が経過しました。

思うことあれど、
私はその後もずっと体を鍛え続けました。
体を強くすること自体は悪いことではないと思ったし、そうするより他に道もなかったからです。
めげそうになるときはいつも、バオブーの言葉を思い出しました。
「体を強くされること、元気でおられることは、バオブーの幸せです」と。

もちろん、昔からの思いはずっと持ち続けていました。
人を傷つけたくはありませんでした。
そして数年の間に、私は戦争の理由を様々考え続けました。
「当然」と言うけれど、本当にそうだろうか?と。

「おい、次の大会はお前の優勝で決まりだな!」

戦士仲間からそんなことを言われるほどに、私は強くなっていました。
背高く体格よく、容姿もよいせいか、町の娘たちからの憧れの視線を無数に感じました。
そんなことを仲間にからかわれもしましたが、私は逆に残念に思っていました。
戦争に勝てる男。そういう「外見」だけで好いてくる者が多い、ということに。

その日は闘技大会でした。
国中から腕に覚えのある者が集められ、優勝者を決める、実に下らない(と私は思っていた)大会です。
しかし、私には勝たねばならない理由がありました。


私は見事、優勝しました。
優勝者には国王(当時は宗教同一だったようで法王でもあったようです)から直接お言葉が下され、なんでものぞむ褒美をもらえるのです。
会場すべての、羨ましさと憧れが混ざった視線の前で、私は王に直接声をかけられました。

「何か、ほしいものはあるか?
 言いたいことはあるか?」

私はそれに対し、周囲によく聞こえるように、はっきりと大きな声で返答しました。

★望むもの

「戦争というものを、お辞めになりますよう」

会場は水を打ったように静まりかえりました。
それはそうでしょう。
この国一番の強者が、戦争に勝てる男が、戦争をやめろと言ったのですから。

「戦いとは、必ず敵味方に分かれるもの。味方が勝てば敵が傷つきます。しかし、敵もひとつの命であり、それぞれに帰りを待つ大切な家族がいるのです。戦争ほど無駄なものはありません」

会場、特に観覧席にいる貴族どもが騒ぎ出しました。数々の怒りと蔑みの暴言が降ってきます。
そして国王も、怒りに満ちた顔で言いました。

「国が栄えるために行っていることを、やめろと申すか?
 そなたは我が国が滅びてもいいというのか」

国王をまじまじと見て、「私」は気づきました。
この人こそが、今の私の父だ、と。

「戦にいくのはあなた方ではありません。我々、兵士です。兵士全員が、喜んで死んでいってると思いますか? 思うなら、なぜあなた方が先頭に立って戦わない? なぜ、犠牲の上に立って、笑っていられるのです?」

王は真っ赤になっている。
そのとき、貴族の観覧席から悲鳴のような罵声が飛んだ。

「シャンジャー! 貴様、国王に対し何たる無礼を! 父の私に恥をかかせる気か! 謝れ! 謝れ!」

実の父でした。私はそれを見つめ、冷えた心で応えました。(このとき初めて名前を知りました)

「父上。私はあなたに一度たりとも育ててもらったことはありません。私を育てたのは召使いです。私を出世のための「道具」としてしか見ていなかったあなたを、私は父とは思いません」

大騒ぎになり、私は捕まりました。
元より覚悟のこと。
私が逆らえば無駄な血が流れます。それは嫌でした。

★刑場で見た空

牢に捕らわれ判決を待つ私を、兵士仲間がかわるがわる見舞いに来ました。

「お前、なぜあんなことを……。早く謝れ。謝って許してもらえ。今ならまだ間に合う」
「隊長、どうして……。お願いです。今からでも助けを請うてください」

多くは同情と、私を助けたいという思い。
ありがたかったけれど、私は最初からこうなることを見越して決めていたのです。
私の意思が固いと知ると、皆は一様に顔を伏せ、何も言えず立ち去るのでした。

死刑が決まりました。
私が優勝したあの場所で、私は死ぬのです。


棒の上に括りつけられ、私は一番天に近いところで皆を見下ろしました。

「もう一度聞く。発言を撤回し、王に謝罪する気はないか。さすれば命だけは失わずに済むのだ」

戦力になる私を失いたくないのでしょう、上官が聞くのに、私は首を振ります。

「私は間違っていない。謝罪などあろうはずがない。それより、そちらこそ私の望みを叶えてはくれないのか?」

これを聞いていた王の顔が赤黒く染まりました。

「貴様! 兵士の分際で私に意見するとは! 何を思いあがっているのだ! まつりごとの何たるかも分からぬ奴が、口をはさむな!」
「戦うのは我々です。命をどう使うも、我々の自由でしょう」
「国のために戦う気がないと申すか!」
「なぜ、戦うことでしか、国を維持できないのですか? なぜ他国から奪わねばいけないのですか?」
「……」
「ほしいものがあるなら、物々交換でもいいでしょう。交流により、話し合いにより、共存していけばいいでしょう。なぜ傷つけあう必要があるのです」
「……黙れ黙れ!この非国民が!お前は敵国の人間だろう!黙れ!」

顔を赤くして叫ぶその顔には、怒りではなく恐怖が張り付いて見えました。

大衆の面前で、まともに答えられないこと。
自分には理解できないことを、目の前の兵士に説明されること。
それが信じられず、そして自分の立場を脅かす存在が恐ろしかったのでしょう。

それが見て取れ、私の心はすっと冷めた気持ちになりました。

「王に対し意見を述べたこと、その非礼については、死をもって償いましょう。しかし、戦いの中で命を落とす者、そして敵国の兵士にも、一人一人帰りを待つ者がいること、それを忘れないでください」

私は民衆を見回しました。
高い所にいたので、よく見えたのです。
王同様に、憤っている者が多い。
自分の考えは、ここまでも理解されないのかと、悲しい気持ちになりました。

しかし、よく見ると、私と同じ表情の者たちもいたのです。
切ないような、つらいような、でも言い出すことが出来ないような。
それでも何か心にせまるような表情の者たちがいて、私はふっと強張りがとけました。

私のしたことは、無駄ではない。
少なくとも「声の届いた」者たちはいたのだ。
それでいい。
そういう者たちが、自分で、これからを考えていけばいいのだ。

私の胸に、何本もの槍が突き刺さりました。
不思議と痛みはありません。
私は、満足していました。
青すぎるほど晴れた空の下、私は満足して命を終えました。

★「私」はあなたに伝えたかった


大きくて青い空が迫ってくるように見えて、気づけば不思議な庭園にいました。

まるで高山にいるように、白い雲が足元をときおり流れていきます。
緑の上に白い雲が流れる、遠くに空が見える美しい景色です。

「私」はまだ、シャンジャさんの中にいました。
ふと、前に白髪で白髭をたくわえた男性と、私のガイドさん?が現れます。

ちなみに白髪のほうはフィロソフィというガイドさんで、ふだんは髭なんてありません。何か変装みたいで、「私」はこっそり愉快に思いました。

私であるシャンジャさんは「あなた方は神さまですか」と尋ね、いかにもという応えを受けてひざを折りました。
そこでようやく「私」は彼と分かれ、挨拶をしました。
自分が未来から来たということ、ずっと生き様を見守らせてもらったということを伝えます。
そして、どうしても伝えたかったことも。

「立派でした。
あなたは勇気を出し、皆のために信念を貫きました。私はあなたを誇りに思います。
……あなたの時代では、賛同者は少なかったかもしれない。でも、私の時代は違う。私のいる時代なら、もっとたくさんの人があなたに賛同したでしょう。英雄と思われ、殺されることもなかったでしょう。
……あなたは素晴らしい、勇気ある人です」

私が彼の手を握り、心からそれを伝えると、シャンジャさんは涙を流しました。

「そうか……そうなのだな。
未来には、そういう時代が待っているのだな。
私は、間違っていなかったのだな……」

そう言って涙を流すシャンジャさんの姿が、するすると縮みはじめました。
筋骨隆々だった体はほっそりと、勇ましい表情だった顔立ちも、すっきりと優しげに。

そうか、と私はその時ようやく気づきました。

彼は今まで、自分を奮い立たせていたのだと。
そして今、その必要がなくなったのだと。
自分の心を鎧う必要がなくなって、肩の荷も下りたのです。

そこにバオブーさんが現れました。
シャンジャさんは涙ながらに駆け寄り、抱きつきました。

「バオブー!……私は、こんなことになってしまった。お前を、悲しませてしまっただろうか。それだけが、ずっと、ずっと気がかりだった」

バオブーさんは微笑んで首を振ります。

「いいえ、坊ちゃん。なんとたくましく、立派になられたことか。
そして、なんと立派に生きられたことか。頑張りましたね。私は、とてもとても嬉しいです」

それを聞き、シャンジャさんは再び泣きました。
今度は癒しと浄化の涙だと分かりました。

彼は私に片方だけの耳飾りをくれました。

こういう、月のような形の金色のもの

三日月に星がついているような金色の耳飾り。
「お前に必要なもの」と言われます。
なんだか、以前に別な過去世さんからもらったものに、とてもよく似ています。

これ↓

「お前も、お前の時代で、平和のために頑張っているのだな。頑張ってくれ。誇らしく思うぞ。……応援している」

そう言って、二人は消えました。
どこかの時代で、二人は親子になるのだろう、となぜか分かりました。

★そして知る、父とのこと

いつの間にか白髭が消えたガイドさんに
「ワザとでしょう?」と聞くと
「そうそう、そのほうが【らしい】でしょ」
とおどけられます(笑)

でも、続けて教えてくれたのは、とてもまじめなことでした。

お前は、この頃から「父親」の気づきを促す存在なんだ。
逆に、「父親」はお前にプレッシャーを与える。
どちらも互いの学びのためだ。

お前は智恵をつけ、自ら考え、プレッシャーを乗り越えようとするだろう。
そして「父」はお前に揺さぶりをかけられ、自らの思い込みを疑い、省み、考えるきっかけとなる。

ただし、「父」は自ら気づくことが大事なのだ。
それはお前が為すことではなく、別のところ。
お前はただ、自分の学びをしていくだけなのだ。

現在の「父」と共有している過去世は、いくつか見ています。
確かに、そのどれも……どの人物だったときも、「父」は私にとってのような存在でした。
強い圧迫感と、自分の人生を生きると決めるタイミングで、大きな選択を迫る存在でした。
きっと、自覚できないほどの深層意識、ハイヤーセルフ同士で、そういう約束をお互いに交わしているのでしょう。

父は今世、戦争を嫌っています。
敵味方という観念は抜けてはいないかもしれませんが、少なくとも平和を望んでいる人です。
だから、今回見てきた国王のような考え方ではありません。
すべての人は、成長しているのです。

まだ10歳にも満たない頃に、父に聞かれたことがあります。

「人間にとって、一番大切なものって、なんだと思う?」

私はそのとき、「命」と答えました。
父は「うん、命も大事だな。でも、もっと大事なものがあるんだよ」と笑いました。

「心だよ。心はね、命よりももっと大事なんだよ」

私たちはそうやって、心を学ぶために生まれ、心を鍛え、そして輝かせているのかもしれません。そしてそれが、命の輝きに繋がっているのかもしれません。

私は、まだ父のすべてを許せてはいないし、丸ごとを受け入れられてはいません。
でも少しずつ少しずつお互いが成長しているのなら、いつかの時代でしっかり受け入れられる日が来るのかもな、と思います。

【※もう許せました笑 意外に早かった笑(2022年12月追記)】
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