多汗症で治すAmazon爆買い
昔から、時間が足りないと思うにはそれなりの正当事由が必要だと思っていた。
仕事が忙しくて、勉学に勤しんでいて、家族のために動いて、とか。
で、それに値する営みからは離隔していた私が、ついに胸を張って「最近忙しくて」「時間がなくて」と思える生活を前にしている。
それで、Amazonで爆買いしてしまうのである。
は?とお思いだろうが、私も全くの同意見である。
私のこうした行動は理路整然の対極にある。
余裕のない日々が私に衝動的な購買欲をもたらした、とでもいえば少し誤魔化しが効いているが、つまりはECサイト中毒のお馬鹿さんなのである。
時々こうして冷静になれば、無駄遣いという認識を私のおめでたい脳みそに植え付けられるのだが、カート内のほとんどが本で、だからまとめて買っても1万円くらいだし読書という行為が持つ高尚なイメージにやられてしまうしで、止まらないのである。
本棚がない転居先の自室で机の上に平積みされた大量の文庫本を見とめて、我に返る瞬間が訪れたのは一週間ほど前の話だ。
当然、本棚を買おうとするわけで、刹那的に開かれていた(本当に怖い)Amazonで探していた。
その時、本棚って結構いい値段するな、と思えたことはその後の浪費を著しく食い止めるであろう、一つの転換点であった気がする。
(朧げに浮かぶ預金残高と本棚の値段とを天秤にかけて、Macbookをそっ閉じした私の情けなさったら!)
で、実家の本棚から好きな本と積読たちとを連れてくることにしたのである。
とりあえず10冊くらい。
そうそう。
私はひどい多汗症を患っていて、気温や湿度、緊張や激しい感情の起伏などですぐに手の上に洪水が発生する。
そうでなくとも、常にやや湿った手をしている。
本を読んでいるときも例に漏れず……。
だから実家の本棚を一瞥した瞬間、私が連れて行くべき本たちがすぐにわかった。
面白かった本は私の汗を大量に吸い込んで、表紙やページがたわんでしまい、大体がくしゃくしゃのよれよれだからだ(全ての本は新品で購入して、それらは大体1、2回しか読まれていないのに)。
殊に新潮文庫はそれが顕著で、表紙カバーが紙のために、ひどいものは背表紙にすら劣化が見られるのである。
自らの記憶ではなく視覚的な情報のみに頼って本を選んだので、予定していた10冊はスムーズに集まった。
とりあえず今年いっぱいは、自分へのご褒美として以外は、手汗の染み込んだきったない本たちに、また囲まれることにする。
(破れた装丁に愛着を感じないでもない笑)
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