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お母さんはちょっと抜け作がちょうどいい

6歳の息子にとって、保育園最後の遠足があった。

「お菓子、何を持っていこう~?」と息子が聞いてきた。
なんかあるやろ、とバントリーを覗くと、あった。
たべっこどうぶつ。
「これ、持って行ったらいいよ」
「え~…クッキーがいい」
「いやいや。クッキーやったら2枚でなくなるやん。これやったら何枚も入っとるし、友達とも分け合いっこできるよ!」
「そっか。なら、それ持ってく!」

他のお菓子に紛れないように、棚の隅においておいた。


遠足当日。

園に迎えに行くと、「遠足めっちゃ楽しかったよ!」と笑顔の息子。
「いろんな遊具があってね~。めっちゃ遊んでん。お弁当も全部食べたよ!」
「そっか、良かったね~。」
ところがふと、楽しそうに話していた息子の顔が曇った。

「でも、お菓子持ってないのケンだけやった」
「えっ!?」
朝の私の行動を思い出してみる。
お弁当は確かにリュックサックにいれたが、おやつは…。

「しまった!お菓子お母さん入れ忘れたんやわ!ごめん、ごめんよ、ケン~。」
「みんなのお菓子も分けてもらえんかった」

そりゃそうだろう。"自分の分と交換"ならまだしも、お菓子を忘れた友達に自分のお菓子をくれるなんて、6歳の子どもには無理だ。
「ごめん、ごめんよ~。」
「うん・・・」
落ち込む息子の顔を見て、本当に申し訳なかったと猛反省した。

いや、でもちょっと待てよ。ちょっと考えて私は息子にこう伝えた。
「ごめん、本当にごめん。お母さんが悪かった。でも、これでわかったやろ!お母さんに全部任せたらこんなことになるって。これからは、お母さんに全部任せるんじゃなくて、自分で準備したり、ちゃんとチェックしたりせんなんよ!」
「え?うん・・・そうやね。」

息子はちょっと驚いた顔をしたが、「そうかもしれないなぁ」と思ってくれたようだ。
お母さんが完璧なわけでは決してないし、自分のことは自分でやらないとダメなんだってちょっとわかってくれたかしら。

”そりゃ単なるあんたの開き直りだ”と言われるかもしれないけど、いやいや。これは結構大事なことだと思うのだ。

人間だれしもうっかりや失敗はある。
それは母親だって同じ。
"お母さんに任せっきりにしたら、ダメかも"と思わせておくこともまた、子どもにとっては必要なことではないかな、と思う。
特に息子はまだまだ甘えたがりのところがあるので、ちょっとでも「自分がしっかりしなきゃ」と思ってもらえるきっかけになるかな、と思ってそんな風に話してみたのだ。


今回の「おやつ入れ忘れ」事件に関して、嬉しかったことがひとつある。
それは、おやつが入っていなかったことを伝えるときに息子が、「お母さんのせいだ!お母さんが悪い!」とは言わなかったことだ。

息子は「お菓子がなくて悲しかった」といういわゆる「Iメッセージ」(「私」を主語にして伝える方法)を自然と使っていた。

「自分だけがお菓子持ってきてなかった、だから悲しかった」という状況と、自分の気持ちだけをぽつりと話してくれた息子が、純粋で愛しいと思った。(だから、すぐに謝ったのだが)

こんな風に、日々いろんなことを通して、学んでいくのは親も子も一緒だな、と思ったのだった。

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