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卒園式、一人だけ泣いていたエミちゃん

卒園式の1週間前のこと、息子が卒園式でのセリフを練習していた。
「ドキドキ、ワクワクしながら、僕たち、私たちは年長さんになりました!」
「へぇ。ケンは、年長さんになるとき、ドキドキワクワクしとったん?」
「え?別に。だって先生にそう言えっていわれたから」

まぁ、そうでしょうね。
本人としてはセリフとして言ってるだけで、そこに思いなんかないわな。
そんなこと聞いたもんだから、「卒園式ではお母さん、きっと泣いちゃう」なんて言っていた私もちょっと白けてしまったのだった。


卒園式当日は、小雨の少し寒い日だった。
ホールに入ると、椅子がずらっとならんでいて、壇の上には大きな花が飾られていた。
「いよいよなんだ」と思った。
息子は1歳の頃から保育園に通っているので、まる5年間お世話になった。
卒園式後もしばらく園生活は続くのだが、「卒園式」が最後の行事となるので、胸に込み上げるものがあった。(とはいえ、泣かないけど)

子どもたちの準備が整い、卒園式が始まった。
入場の際も、どことなくぎこちないこどもたち。
お友達と手をつないで1組ずつ入ってくる。

ふと見ると、斜め前に座っていたエミちゃんのお母さんがハンカチで涙をぬぐっていた。
えっ、もう?ここで泣いちゃうの!早いなぁなんて思いながら、私はまだまだ余裕で、ニコニコしながら子どもたちを眺めていた。

入場が終わると、卒園証書授与。
一人ずつ名前を呼ばれて、園長先生から証書を受け取る。
エミちゃんのお母さんは相変わらずハンカチを持ったままだったし、他のお母さんたちもちらほらハンカチを取り出していた。

私はまだまだ大丈夫。と思っていたら、一番前の列に座っているエミちゃんが泣いているのが目に入った。

エミちゃんと言うのは、私の記事にも登場してもらっているのだが、こんな女の子。
・2歳の息子が初めて名前を口にした女の子の友だち
・感情表現が豊か(気に入らないことがあるとすぐ叩く笑)
・4歳の息子が「お友達の中で一番好き」と答えた女の子

溢れてくる涙を一生懸命腕で拭いながら、エミちゃんはひとり泣いていた。

他の子は、と見ると、みんな緊張しているのか下を向いている子や一点をじっと見つめている子が多い。
そんな中で、エミちゃんは泣いていた。

あぁ、やっぱり感情表現が豊かな子なんだなぁと思った。
嬉しい時には思いっきり喜び、悲しい時には思いっきり泣き、怒った時には思いっきり怒る。それが、エミちゃんなんだ。
そして、それがエミちゃんの素敵なところなんだと思う。

息子も、感情をあらわにしてくるエミちゃんに対して戸惑っていた時期もあったようだが、最終的には「エミちゃんはこんな子なんだ」と受け入れることができたようだった。

エミちゃんと息子は、別々の小学校に上がる。
中学校でまた一緒になるのだが、しばらくのお別れ。
そう思ったら、悲しさと寂しさが溢れてきた。
エミちゃん、5年間息子と仲良くしてくれてありがとう。

気づいたら、私も泣いていた。
やっぱり、卒園式で泣かないなんて無理だった。


一方の息子は、といえば。
証書受け取りの際には返事を忘れそうになったり、お辞儀をし忘れたり、別れの歌の時にはあくびをする始末。
男の子だからだろうか、まったくしんみりする雰囲気もなく、いつもの息子だった。
息子だけを見てたら、泣かなかったかもしれない。

たったひとり、腕でなんどもごしごしと涙をぬぐっていたエミちゃん。
どんな女の子に成長するんだろう。
中学校でまた会えるのを、楽しみにしている。

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