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【映画】ルックバック

ゲームクリエイターの小島さんが絶賛していたので、めっちゃ気になっていた作品です。X上でもやたらと評判が高かったので、これは観ておかないとなぁ、と思っておりまして、本日やっと鑑賞してまいりました。

原作は「チェンソーマン」の藤本タツキ氏。「チェンソーマン」の11巻が終わって、続きに入るまでの間に描かれた作品です。

今回はいつもよりちょっと深堀りしますよー。

登場人物

クラスメートと教師と漫画の編集者と「事件の犯人」は出ますが、本編中基本的には「主人公と相棒の2人のみ」で物語が進みます。

藤野
小学校で「学年新聞」に漫画を描く少女。絵がうまいと周囲から褒められて有頂天だったのに、自分を上回る画力の「引きこもり」の京本の出現でプライドをへし折られてしまいます。

京本
引きこもりなのですが、学年新聞の藤野の漫画が大好きで、憧憬の念を抱いている少女。彼女に憧れて絵を描いて描いて描きまくって絵が物凄く上手くなってしまう。

これ、2人の苗字を分解しますと「藤本」になるという。原作者の藤本タツキ氏の「自身」が投影されている面があるのかもですね。

物語

学年新聞で4コマ漫画を連載している小学4年生の藤野が主人公。クラスメートからその画力を絶賛されて自信を持っていたのですが、ある日の学年新聞に掲載された不登校の京本の4コマ漫画を目にし、その画力の高さに愕然とします。「自分より上手い小学4年がいるなんて許せない」と、藤野はひたすら漫画を描き続けますが、京本は京本でやはり画力が上がっていきます。そうしているうちに、いつしか漫画を諦めかけて…。が、小学校卒業の日、藤野は担任に頼まれて京本に卒業証書を届けに行く羽目になり、そこで初めて対面した京本から「ずっとファンだった」と告げられます。

藤野は、自分のプライドをへし折り漫画を諦めかける要因の京本と、今度は一緒に漫画を描き始めます。中学生でジャンプの佳作に入選し、読み切りも幾度か掲載され、高校卒業後は漫画家の道に進もうとする2名に分岐点が訪れます。そして、更なるショッキングな出来事が…

対比

藤野は比較的「漫画も描けるし、友達もいるし、スポーツも出来る」という人気者の女の子。京本は「引きこもり」で、藤野の才能に憧れを持っている訳です。関係性としては藤野が上、京本が追従する立場。だからこそ、高校卒業時の京本の選択は「今までの関係性のままではいられない」になるし、藤野は大きく動揺します。

二人の絵柄、漫画も対照的です。藤野は「キャラクターと物語」が描けるけど、京本は「風景」しか描けない。この2人は補完関係です。お互いの足りないところを補い合って漫画を描いています。だからこそ、藤野は京本を引き留めようとします。少し強い言葉で…。

そして「引き留めることが出来ていたなら」あの事件は起きなかった。藤野の無力感はかなり大きいものだったでしょう。禍福は糾える縄の如しという言葉がありますが、幸福と不幸は繋がっている、そんな対比。

京本の部屋のポスター

これもちょっと象徴的なので、ピックアップしておきますね。京本の部屋で2人で漫画を描くシーンが結構あるんですが、物語を少し象徴するようなポスターが貼られています。特に気になるのは「タイムリープもの」ですね…歴史は映画のようにタイムリープして過去改変する事は出来ませんから、物凄くアイロニカルな装置として配置されています。

【京本の部屋に貼られていたポスター】
ダイマグラばあちゃん
SMOKE
バットマンビギンズ
おくりびと
千と千尋の神隠し
バタフライエフェクト
時をかける少女
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド

バタフライエフェクトは「世界一悲しいハッピーエンド」です。この映画はバッドエンドではないけど、ハッピーエンドでもない。それがまたリアルなんだろうなぁ、と。

Don't Look Back In Anger

少しっ真面目な文面が続いたので、閑話休題、面白小ネタも書いておきますね。コミックの方に仕込まれていたネタ。

物語の「一番最初のコマ」がこちら。

Don’t

タイトルがこちら。

Look Back

物語の「一番最後のコマ」がこちら。

In Anger

繋げると「Don't Look Back In Anger」です。言わずと知れたoasisの大ヒット曲。 

感想

たった1時間足らずの映画なのに「人生が凝縮」されているかのような作品でした。優越感と劣等感、努力と諦観、希望と絶望、成功と挫折、そして出会いと別れ。人生と同じで「ハッピーエンド」や「バッドエンド」ではなく、とにもかくにもその命を終えるまでは人生は続いていく。そんな余韻のエンディングでした。

でも、京本の人生に光を当てたのは、やっぱ藤野だよね。


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